第七話
恐れ多くもレヴィアン様・ななさんたちと同じ食卓にまで御呼ばれして夕食を済ませると私はお風呂を済ませて客室へと戻った。
広くて清潔でシンプル。
居心地の良い部屋だと思う。
明日からどうしたものかと一息ついたところで訪問者があった。ななさんだ。
ななさんは優しい笑顔で、少し話をといってくれた。もちろん断る理由はないから私は彼女を招きいれ、部屋に据え置きしてもらっていたティーセットでお茶を淹れた。
お茶だけは、ルイさんも褒めてくれたから自信がある。
窓辺の小さなティーテーブルに腰掛けて座ると、のんびりとした調子で紅茶に口を付けてくれた。一口飲んで、一瞬時間が止まったけれどそのあとにっこりと微笑んで話を始めてくれた。美味しかったんだよ、ね?
「ここは良いですね。みんな優しくて親切だしなによりななさんはこの世界に望まれている」
ぼんやりしているとつい愚痴が出てしまった。
「夕菜さんも望まれているでしょう?」
「はい? まさかっ! 私はただのお荷物ですよ」
つい自虐的な言葉が出てしまったのにななさんは「あらあら」と特に嫌な顔一つしない。
出来た人なのだなと実感してしまう。私もこんな風にルイさんの愚痴を流せたらもっと上手に付き合えたのかもしれない。
しゅんっとしてしまった私にななさんは「やはりご存じないのですね」と口火を切った。
「レヴィアン様は夕菜さんには伝えないほうが良いというご判断だったので、私もそうしようと思っていたのですが」
「え? なんですか?」
食いついた私にななさんは調子を崩すことなく続ける。
「貴方方がこられた直ぐあと、ルイさんからお手紙と小切手が届きました」
「え?」
「先日話した件はなかったことにして欲しいと。レヴィアン様が貴方の滞在を拒んだわけではなく、ルイさんが貴方をどこへもやろうとしなかったんですよ」
きっと他の世界でも同じことをなさったんじゃないかしら? と続けたななさんの言葉はにわかには信じがたい。信じがたいけれど……もし、もしも、そうだったら、嬉しい。
「でも……」
そんなはずないよな。私はただのお荷物だから……
「お金は受け取らなかったんですけどね? ルイさんも受け取っては下さらなくて、結局寄付金のほうへと回したのだけれど……」
「でも……」
ルイさんがそんなことをする理由がない。だからきっとそれは価値の無い私を他所にやったりしたら自分たちの評判に傷がつき、きっと、そのあとの仕事がし辛くなるとかそんな想いがあったに違いない。
―― ……きっと、そうだ……。
ななさんの声はもう良く届かなくてわけも分からず泣けてきた私の頭をななさんは優しくふわふわと撫でてくれた。
私はここ数日泣いてばかりだ――。