夏休み
さて、タイトルに書いたとおり夏休みです。え?なんの前フリも無い展開で少々混乱気味ですか?でも、付き合ってくださいね。
お話は夏休みの中盤から始まります。
「う~ん。」
「お兄ちゃん、何悩んでるの?」
「え?あぁ、家庭科の宿題で家族について書いてこいって言われたんだけど。一美ちゃん以外に居ないからさ。両親の事を書こうにもかけないし。文章的にはもう、終っちゃったんだけど。さすがにこれだけだとね。」
「でも、事実なんだから仕方ないんじゃない?なんなら、ファーリングさんや葵お姉ちゃんの事を書いてみたら?」
「それは、それで、別の問題が出てきそうだから止めておくよ。」
僕は家庭科の宿題をカバンにしまった。
宿題を全て片付け終えた僕は特にする事もないのでクーラーの効いた部屋で昼寝をしていた。前にも言ったけど寝ると言っても目を瞑っているだけ。そして、僕の前では葵ちゃんと一美ちゃんが夏休みの宿題に手を焼いていた。二人とも頭が悪いわけではない。ただ、量が多すぎて面倒なだけ。まぁ、一日一枚とか計画を立ててやると夏休みの中盤に終るのだけれど。
「マスター。お茶を淹れましたよ。」
「あ、ファーリング、ありがとう。」
「ねぇ、お兄ちゃん。この、英語訳がわからないよ。」と一美ちゃんが言った。
「どれ?」
「この、問の3。」
「この場合はNOTの後にBATがついてるでしょ?それは、ソレは無いがコレあるみたいな意味なんだ。」
「じゃあ、この場合は、技術は無いがやる気はあるって意味なんだ。」
「うん。しかし、なんて問題なんだ。」
僕は問題に笑ってしまった。
「なぁ、ゆかちゃん。この問題なんだが、どんな式を使ったらいいんだ?」
「あぁ、それは因数分解の方程式だね。この場合はこの公式を使えば解けるはずよ。」
「だが、このやり方では、答えがでないんだが。」
「え?じゃあ、襷がけをやれば答えがでると思うよ。」
「あぁ、襷がけをやるのか。なるほど。ありがとう、おかげで助かったよ。」
「いえ、お役に立ててよかったよ。」
そういえば、今年はギンのやつ宿題を見せてくれって言ってこないな。どうしたんだ?まさかとは思うけど自分でしてるとか?
ん?あぁ、現在の俺の状況を説明すると夏のアバンチュールを体験中。なんてな、でも、俺は交喙さんの部屋に居るわけなんだが。
「こら、ギン君!宿題ささとやる。」
「えぇ、夏休み始まったばっかりじゃないですか。」
「そんな事言って一年生の時、ラスト3日で泣きかけたの憶えてないの?」
「なんで、その事を!?」
「縁君達から聞いたのよ。去年は彼に手伝ってもらったらしいじゃない。」
「あぁ、わかっちゃいるんだけどね。こう、意欲が出てこないというか。」と俺は机に突っ伏した。交喙さんこういう面では厳しいのですね。
「はぁ、なんで、遊びに来たのにこうなるのかな?」
「ギン君が宿題見せてなんていうから。」
「写さしてくれるだけでいいのに。」
「それじゃあ、勉強にならないでしょ。それに、三年生は二年生と宿題は違うでしょ?」「だって、去年の宿題と同じって先生が言ってたから交喙さんなら持ってるかなって。」「例え、持っていたとしても見せてあげないわよ。ほら、さっさと終らせましょう。この私が教えてるんだからできないなんて言わせないわ。」と目を輝かせる交喙さん。
「いや、確かに渚の教え方は上手いのですがね。でも、こう・・・ね?」
「何かしら?」
「いや、大好きな人の顔を眺めているのもいいかな~って。」
交喙さんは顔を林檎のように赤くした。
「この、赤点彼氏!」
「のわ!」
何処から出したのかハリセンで叩かれた。妖刀じゃないだけよかった。
「そういうのは、成績表の1をどうにかしてから言いなさい。まったく、このままだと留年だよ。下手すると退学。もう、この私がついてるのに留年なんて許さないんだから。」
私立の学校なので変な制度がある。勿論、義務教育なのだから留年は無い。
だが、大量の補修が待っている。
「は~い。頑張るよ。好きな人の為にも。」
交喙さんは顔を再び赤くした。俺はまたハリセンかと思って構えた。
「馬鹿・・・・。ありがと。」
あら?どうやら見当違いだったみたい。
「交喙さん。」
「ん?」
「ここ、解らないんだけど。どうして、こんな数字になるの?」
「あぁ、ルートの問題だね。ここは、ルート同士の割り算だから右側にある数字をこの、下に置いて分数にするの。後は、普通に割るだけだよ。有利化が残ってるけど大丈夫だよね?」
俺は頷いた。
「ありがと、なるほど。ルートにして下に置いて割るね。」
「そう。」
「あぁ、面倒だ~。」
俺はまたうだってしまった。
「はいはい。文句言ってないでとっとと書くのよ。」と交喙さんが急かす。
「もう、限界ッス。」
そんな時、薫さんがお茶とお菓子を持って入って来た。
「お茶です。少し、休憩されては?」
「いいよ。ギン君はさっきから休憩してるから。さっきから、殆ど進んでないもの。」
「では、お嬢様が教えて差し上げればいかがですか?」
「え?さっきから、教えてあげてるけど?」
「そうではなくて、こちらに来て柊様の隣りで教えて差し上げるんです。」
「此処でいいの?」
俺の隣りに交喙さんが来た。
「えぇ。それでは、私はこれで。」と部屋を出て行く薫さん。
「まだ、出来てないの?もう、私が教えてあげるから。」
「あぁ、いいですよ。俺、一人で何とかしますから。」
「いいのよ。遠慮しないで。ほら、シャーペン貸しなさい。」
俺は言われるまま貸した。
「ここは、この公式を使って解くの。」
「そっか、だから、此処の式はこれになるから。あぁ、解けた。ありがと。」
「どう致しまして。」
「それじゃあ、この調子で教えていただけると嬉しいんだけど。」
「調子に乗らないの。自分と解かないとテストで苦労するのよ。頑張って自分で解きなさい。終ったらデートでもしてあげるから。」
「本当?」
「えぇ。」
「解りました!俺、頑張ります!」
俺は今まで異常のやる気を見せて問題を解いていく。
「始めから、真面目に解きなさい!」
交喙さんが俺の進み具合を見て言った。
「いや、ご褒美があるとやる気が溢れてきてですね。」
「はいはい。じゃあ、早く解きなさい。」
「はい!了解であります。」
そして、終了させた。
さて、僕の視点に戻ってきました。あ、時間は一日経過しているので今は午前中です。
「あ、会長からメールだ。」と葵ちゃんが言った。
「“今度の木曜日、天音家のプライベートビーチへ行きます。みんな集合!時間と場所は以下の通り。”との事だ。みんなとは誰までを指すのだろうか?今までだと会長とギン、ボクとゆかちゃん、それに、一美ちゃんとファーリングさんなんだけど。」
「多分。それで、あってると思うよ。」と僕は言った。
そんなわけで、海へ行きます。
そして、海に来ました!
「海だ~!」と一美ちゃんが大声をだした。朝だというのに元気である。
「いくら叫んでもかまわないわよ。ここは、私のプライベートビーチだから。」と会長が言った。それを聞いてさらにはしゃぐ一美ちゃん。
「さて、先に荷物を別荘に置きましょう。帰りに運ぶと疲れちゃうだろうし。」
そんなわけで、僕らは荷物を別荘に置いた。
そうそう、今回のメンバーを紹介しますね。主催者の会長。それに、ギン。僕と葵ちゃんと一美ちゃん。後、ファーリングです。
「さぁ!海へGO!」と会長がダッシュで行く。すごい速度。それを追いかけるギン。
「葵お姉ちゃん。行こう!」と和美ちゃんが葵ちゃんの手を掴んで海へと走る。
「あ、あぁ。」
「マスターは泳がないのですか?」
ファーリングが聞いてきた。
「僕は泳ぐの苦手だから、パラソルの下に居るよ。泳ぎたかったら泳いでいいよ。あ、天使って泳げるの?」
「羽をスタイルチェンジすれば可能です。」
「そう。」
「ところで、この、水着というものはどういうものなのですか?」
「え?」
「形状からして下着と変わりないように思えるのですが。」
「えっと、その辺は僕も知らないけど下着とは材質が違うと思うけど。水に適した服って事で認識しておいて。」
「はい。それでは、行って来ます。」
「うん。」
でも、ファーリングは行く前に僕の方を見てから言った。
「マスターはこの水着をどう思いますか?葵さんに言われて着てみたのですが。」
「うん、すごく、似合ってると思うよ。」
白いビキニが白い肌を一層と際立たせる。
「ありがとうございます。」
そう言ってから海へと向かっていった。
すでに海では会長と葵ちゃんのショーが始まっている。あれは、イルカでも真似できそうにないと思う。
そして、恒例のビーチバレー。男女に分かれたが流石に3対4では比率が悪いのだけれどもね。ちなみに男子は柳沢さんも加わっている。女性陣はわかっているので説明しないですよ。
「行きますよ!」
柳沢さんが歳とは思えぬほどのサーブを打った。
「はい!一美ちゃん!」と葵ちゃんがレシーブ。そして、一美ちゃんがトスでボールを上へとあげる。そこに、会長が飛んで。
「天音流、月下 朧十字!」
なんで、ボールが五つに増えるの?
(あくまで振動と暑さによる蜃気楼的なものです。)と作者の説明があるが実際的に不可能な気がするのは僕だけでないはず。勇敢にもギンがレシーブを構えたがすり抜けた。そして、柳沢さんが回転レシーブで跳ね返す。なんか、年寄りにこんな事させてなんだか罪の意識を感じる。
「ほい!」とギンがトスを上げた。
「お嬢様方!覚悟!」と柳沢さんがハイジャンプ。執事服でどうしてそこまで上がれるんだろう?(そりゃあ、執事ですから。)
しらんわ!と作者に突っ込みをいれつつ僕は試合に目を向ける。
「させるか!」と葵ちゃん&会長のブロックがはいった。でも、ブロックによって弾かれたボールは一美ちゃんの方へ。
「ひあ!?」
駄目だ、一美ちゃん避けるどころか驚いて動けない。
「!」
その瞬間ボールが音を立てて割れた。一瞬、光る物を見た気がしたのは気のせいかな?
「ファーリング?」
「申し訳ありませんボールを割ってしまいました。」
「大丈夫よ。ボールならまだあるわ。」と会長がボールを見せた。
そんなわけで、まあ活躍所のない、ギンと僕だったわけです。ギンは会長の愛のボールをその身で受けている。ご苦労な事を。死なぬ程度には見守っておきました。
そして、夜の花火。
「そういえば今年は台風の影響でお祭りが延期になったらしいわね。」と会長が線香花火を見ながら言った。
「あぁ、夏祭りじゃなくて秋祭りになる話だろ?俺も聞いたぜ。」とギンが言った。
そして、夜。みんなが寝静まった頃。僕は寝付けずにいた。
「少し、散歩でもするか。」
「一緒に行ってもいいですか?」とファーリングが聞いてきた。
「うん。」
僕らは砂浜に居た。昼間の騒ぎが嘘のように波のうねり音だけが聞こえる。
僕は砂浜に座った。ファーリングも僕に寄り添うようにして座った。
「星が綺麗だね。都会の空気は汚れてるけどここは違うみたいだね。」と僕は言った。確かに星が幾つも見えていた。
「ファーリングに初めて会った時はこんな綺麗な星空だったっけ?」
「流星群が通っていたと記憶しています。」
「そっか、きっと、その流星群が無かったら僕はファーリングに会う事はなかったんだろうな。流星に感謝だね。」
「偶然だとしても。それが、私には必然に感じられました。だから、私はマスター契約を結んだんです。」
「そっか。」
夏とは言え海が近い盛夏少し寒かった。
「マスター。一緒に空を飛んではみませんか?」とファーリングが言った。
「空?」
「えぇ、空です。」
「うん。飛んでみたい。」
「解りました。」と白い羽を伸ばし、僕を抱えて空を飛んだ。風が心地よかった。
「へぇ、これがファーリングの見ている風景だね。」と僕は言った。
「えぇ、そうですね。」
そして、しばらくの空中散歩を楽しんだ後僕は地面に降りた。
「あがとう。」
「いえ、役に立てて嬉しいです。それでは、私はもう部屋に戻ります。」
「うん、僕はしばらく此処に居る。」
「そうですか。わかりました。」
ファーリングは去っていった。
そして、入れ替わるように葵ちゃんが走ってきた。そして、反対側から一美ちゃんが来た。
「あ、葵お姉ちゃん。」
「あ、一美ちゃん。」
2人は少し笑った。
「どうやら、目的は同じのようだな。」
「そうですね。」
「?」
彼女達は僕の両サイドに座った。そして、腕を掴まれて行動範囲が制限されて動けない。
「一緒に星を見ようと思ったら部屋に居ないんだもの。探してしまったじゃないか。」と葵ちゃん。
「あたしは、海でも見ようかと。夜の海は昼と違ってまたいいからね。」と一美ちゃんが微笑む。2人の顔をこんなに近くで見たのは久しぶりだった。妙に意識してしまい顔が赤くなる。
「ん?ゆかちゃん?」
「え?どうしたの?」
「いや、なにか俯いていたから。」
「いや、その、こういう状況にはなれていなくてどうしたらいいかわからなくて。」
「なら、自然にしてればいいと思うよ。」と一美ちゃんが言った。
「自然ですか。そうだね。」
「そう、無理にかしこまる事は無い。ゆかちゃんはゆかちゃんらしく、自然体でいればいいんだ。」
「それじゃあ、そうするよ。と言ってもなにかするわけじゃないけどね。」
「スク、そうだよね。」と一美ちゃんが笑った。そんな風にして夏休みは流れていった。
なに、時間ならすごくあるよ。夏休みは長いんだから。