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MY MASTER  作者: バラット
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天使のいる暮らし

初めまして。この物語を聞きに来てくれてありがとうございます。いや、この場合は読みに来てくれての方が正しいのかな?

僕は水樹みずき ゆかり神上学園に通う中学二年生です。こんな名前ですけど僕は男です。ただ、性格と名前のせいなのか女の子に良く間違えられます。まぁ、顔も少し女の子じみてはいますが。性格はひ弱で軟弱者でしょうか?学校の成績は優秀で特に問題はないです。体育はにがてですけど。趣味は小説を読む事と書く事かな?天性的な乱視の為眼鏡を掛けています。どこにでも居そうな普通の中学生がこんな人生を送る事になるとは誰も思わなかったんだろうね。神様が僕に与えてくれたものは・・・


「ゆかちゃん、起きてよ。」と僕の体をユサユサ揺する。

「ん?葵ちゃん?」

僕は目を開けて声の主の顔を確認した。

「あ、起きた。おはよ。」

この元気なショートヘアーの女の子の名前は汐宮しおみや あおい。僕の幼馴染でお向かいさん。北側のベランダから飛んで行けるほどの近さである。

「ん。今日は早いんだね。」

「うん。早く目が覚めたからね。ランニングしてきちゃった。さぁ、朝ご飯食べよう。」

毎朝、僕を起こしてくれる姉と妹を混合させたような存在だった。そうそう、運動神経がかなりいい。そして、自分の事をボクというほど男勝りな所が昔からある。

「ん?どうかしたのか?」と僕の方を見て言った。僕は首を横に振った。

「うんん、なんでも無いよ。」

「そうか。ならいいけどね。早く朝ご飯作ってよ。ゆかちゃんが作ったご飯は美味しいんだから。」

「はいはい。」

僕は着替えて台所に居た。僕らの両親は海外で仕事をしている為めったな休みの日でないと帰ってこない。だから、時々伯父さんが見に来る。ただ、成績も生活力も問題ない二人は割りと安心されている。とは言うものの中学生なのである程度の限界があるけれどね。

「はい。出来ました。」

「純和風な朝ご飯だ。いただきます。」と嬉しそうにご飯を食べている葵ちゃん。

「頂きます。」

「そういえば、今日だっけ?流星群が見れるのって。」と葵ちゃんがお味噌汁を飲みながら言った。

「そういえば、そんな事をテレビでやってたような気がする。」

「ねえ、見に行こうよ。」と目をキラキラさせる葵ちゃん。

「でも、夜間の外出って大丈夫なの?」と僕は聞いた。

僕等は中学生の身であってあまり深夜の外出は褒められたものではない。

「う~ん、いざとなったらゆかちゃんが護ってくれるから。」とからかうように笑う葵ちゃん。

「と言いたい所なんだけどゆかちゃん、ボクよりひ弱なんだよね。」

「うぅ。」

「あ、ごめん、ごめん。でもさ、見てみたいんだよな。流星群。」

「そうだね。じゃあ、行こう。」

この際、行っても大丈夫だろう。流星なんてめったに見れるものではないし、両親より珍しいのだから。なんて心の中で思っていた。

「うん。」

「それじゃあ、決まり。」

この決意がまさか、あんな事になろうとはこの時は誰も思っていなかった。

「うん、決まりだね。」

「楽しみだなぁ。」

此処が、僕の通う神上学園。幼稚園から大学まで全てが揃っているとても大きな学園。

「あ、おはようございます。」

「あれ?仲良し2人組ではないですか。おはよう。」と挨拶してくれているのは生徒会長の天音先輩。

「今日も仲良くご登校ね。いい事だわ。」

「ん?会長、なんで今日は猫を被っているんですか?」

「こないだ、他校の不良を撲滅しちゃったからしばらく大人しくしておこうと思って。」

笑顔全開の会長。

「あいかわらず、お強いお方ですね。」

「お褒めの言葉をありがと。」

この会長さんはかなりの怪力の持ち主で、か弱い女性と思っていると怖い目に会う。正義感が強い人で不良を発見すると更生させたくなるらしい。

「この学園に危害を加えようとしていたから天誅を・・・ね。」

「あれ?天誅って天が下す事じゃないの?」と葵ちゃんが言った。

「その意味もあるわね。でも、もう一つ意味があって、天に代わって罰する事よ。」

「貴女はいつから天を凌駕する様になったのですか?」と聞くと。クスリと笑った。

「そうね。いつからだろうね?」

「それじゃあ、僕達はそろそろ行きますからね。」

「うん。それじゃあね。」と会長は手を振って言った。

葵ちゃんと僕はクラスも一緒です。

「あ、来た。なあ、水樹。この問題教えてくれないか?」

話し掛けてきたのはひいらぎ しろがね。あだなはギン。頭があまり良くないけど元気な男の子。

「どの問題?」

「この数学の問題なんだけどさ。どうしても解けなくてな。」

「ん?あぁ、これは公式を当てはめた後に別の公式を使うんだ。だから、この時はこっちの公式を使ってから補助線を引いてからこの公式を使えば答えが出るはずだから、計算してみれば。」

「おう。ありがと。」

「相変わらず、ゆかちゃんは教えるのが上手いね。今度、ボクも勉強を教えてもらおうかな?」

「そんな事しなくても葵ちゃんは出来るでしょ?」

「そ、それはそうだけど・・・。その、なんて言うか応用問題とかさ。ね?」

「ね?と言われても僕はどんな反応をすれば善いんだ?」

「さぁ?」

授業は面倒なので省略しますね。帰り道。会長が正門で帰る生徒達を見送っていた。しかしながら、会長からして見れば帰る生徒よりもお礼参りに来る不埒者を警戒している。

「あら?今帰るところ?」

「えぇ。会長はまだ帰らないんですか?」と僕は聞いた。

「残念ながら、まだ仕事が残ってるの。」

「そうですか。」

「ねえ、ゆかちゃん、早く帰って仕度しようよ。」と葵ちゃんが嬉しそうに言った。

「何処かに行くの?」

「えぇ、流星群を見るんです。」

「あぁ、そういえば。そんな事をテレビで言っていたわね。見れると良いわね。」

「えぇ、それじゃあ。」

僕等は会長を後にした。

「そう、見れると良いわね。天気は曇りのはずだけど・・・。」


ボクは楽しそうに仕度をしていた。ゆかちゃんと何処かに出かける事はあったけど夜出かけるのは初めてだ。さて、一体どんな服を着て行こうかな。

「夏場とは言えあまり薄手で行くのもどうかと思う。」とボクは言いながらタンスの服をいじくっていた。

お茶とかも持って行った方が良いね。お茶と後は何もって行こうかな?ボクは本当に楽しみだった。


「こうして世界は改変を向かえ人は混乱していった。と、こんなもんで良いかな。今日はこの位書けば十分かな。」

僕はパソコンの電源を落とした。別に何処に投降するわけでもない僕の趣味の小説です。気がついたらページが増えていた。

「さて、準備しようっと。」

とりあえず、シートとお茶。それに、寒くないように上着も持っていこう。夏場の夜は急に寒くなったりするからね。

「後は何をもっていこうかな?あ、カメラを持っていこうっと。」

僕は棚からカメラを出した。

そして、夜になりチャイムがなったのでドアを開けた。そこには笑顔の葵ちゃんが居た。

「それじゃあ、行こう。」

僕の手を引っ張る。目的地は魅加護山の上だ。

「魅加護山なんて小学校の遠足以来だね。」

葵ちゃんが言った。確かに小学校の遠足は魅加護山だった。小学生の僕にとっては辛い山道だったけど葵ちゃんはそうでもなかったみたい。中学生となった今ではとても簡単に登れてしまう山だった。夏の夜はかなり晩い時間帯にならないと暗くならない。結果、十時頃に頂上に着いた。僕は鞄からシートを出して座った。

「流星群。みれるかな?」

正直言って天気は好ましくない薄っすら雲が掛かっている。

「なんか、神様が意地悪してるみたい。」と言う膨れっ面の葵ちゃんが言った。

「大丈夫。多分晴れる。きっと。」

なんの根拠も無いけれどなんとなくそんな気がしていた。

「だといいな。」といいながら葵ちゃんは空を見上げた。

僕はラジオをつけた。どうやら、流星の事を話題にしているらしい。気象省の発表ではもうすぐ見られるみたいだけど。そして、星が一つ、また一つと流れて行く。流星群だ。

「わぁ、綺麗。お願い事しなきゃ。」と葵ちゃんが祈りの仕草をする。僕も同じ事をしてみた。しばらくして、流星は消えていった。

「葵ちゃんは何をお願いしたの?」

「う~ん、ゆかちゃんが言ったら言うよ。」

「僕は人生がもっと楽しくなりますようにってお願いした。」

「今よりももっと楽しくって事?」

「うん。今が楽しくない訳じゃないけれど、もっと楽しくなりたいなって。傲慢過ぎるかな?」と照れながら頭をかいた。

「良いんじゃない?」

「それで、葵ちゃんの願いは?」

「うんとね、ゆかちゃんと楽しく居られますようにって願ったの。」

「僕と?」

僕は自分のことを指さした。

「うん。だって、ゆかちゃんはボクが小さい頃から一緒だった、大好きな友達だから。」

「そっか。それじゃあ、帰ろうか。」

帰る途中で会長に会った。

「おや?仲良し2人は今お帰りかな?」

「あ、会長。えぇ、そうですよ。流星を見ていたので。」

「そう、見れたんだ。曇っていたからどうかと思ったけどよかったわね。」

「なんで、会長は此処に?」

「深夜徘徊している非行な男女を指導に来たのだ。なんてね。どちらにしても、早く帰ったほうが良いよ。夜は輩が出てくるから。」

「はい。それじゃあ。」と僕らは会長に挨拶を済ませた。

家に着いた時、僕は忘れ物をした事に気が着いた。そして、山へと忘れ物を取りに向かった。まさか、こんな事になろうとは。


「あった。よかった。流星を写真に撮ったのにそのカメラ忘れたら意味ないもんね。」

空を見上げた。そして、また一つの流れ星を見つけた。でも、ソレは徐々に大きくなってこちらに向かってくる。ソレが流れ星ではないと判ったのはその時だった。そして、僕の目の前にソレは落ちた。まるで、隕石が落ちたかのごとくクレーターが出来ていた。僕は近づいた。そこには一人の少女が居た。見た目的には僕らと同じ年代だろう。でも、ただ一つ違うとすればその少女には羽が生えていた。天使みたいな大きくて真っ白な羽。綺麗な黒の長髪だった。

「うぅ。」

少女は起き上がろうとした。でも、起き上がれない。僕は近づいた。

「大丈夫?」

僕は手を指し伸ばした。そして、その手を掴んだ少女。少女の体が光りだして光の線が僕の胸へと繋がっていった。

「MY MASTER。」

「ほえ?」

「マスター。」

「えっと、君は誰?」

「私は人造天使です。」

「なんで、空から落ちてきたの?」

「契約前のメモリーはほぼ消滅しているのでその質問には解答できません。」

「マスターって、僕の事?」

「はい、MY MASTER。」と無機質な回答が帰ってきた。

「何故?」

「何故と聞かれましても、貴方がマスターなのですから、それ以上の回答が見つかりません。」と少し困った顔をした。

「君はロボットなの?」

「比較的それに近い存在ですがその技術よりも上の存在だと思います。」

「そう。僕はどうしたら良いのだと思う?」

「その回答は複数ありますが、一番有効的なのはマスターが何をしたいかです。」

「そう。それじゃあ、帰ろう。」

「私はどうしますか?」

「そうだな。着いてきますか?僕の家に。女の子をこのまま一人置いていくわけにも行かないし。そうだ、君名名前を聞いてなかった。何て名前?」

「製造番号1075号。人造天使。」

「ん?それって、君の名前なの?」

「名前と言う概念で言えるのかどうかわ解りませんが。」

「それじゃあ、番号だよね。とりあえず、呼ぶのに不便だからなにか名前を付けないといけないね。ファーリング・スター。あ、逆のほうが良いかな?いいや、君は今日からファーリング。」

「解りました。」

「よろしく。ファーリング。」

僕は手を指し伸ばした。

「はい。MY MASTER。」

こうして僕とファーリング・スターとの生活が始まった。


「それじゃあ、僕は学園に行って来るから家出留守番していてくれる?町を見回っても良いけど六時までには家に居てね。」

今日は、葵ちゃんが日直なので先に行っている。

「そういえば、ファーリングって何を食べるの?」

「食事ですか?」

「そう。昨日も今日の朝も食べてないから。天使は食事をしないの?」

「そうですね。食事と言う概念は特にありませんけど。あ、エネルギーのチャージと言う点では食事というモノが存在します。これです。」と言って何処からか発条を出した。

「それは?」

「私のエネルギーを溜める物ですね。これを捲いてもらうとエネルギーがチャージされるので。」

「そうなんだ。」

「はい。」

「それじゃあ、僕は学園に行ってくるね。」

「いってらっしゃい。MY MASTER」

僕は学園へと行った。

「あ、葵ちゃん。おはよ。」

「ゆかちゃん。おはよ。今日はゆかちゃんの朝ご飯を食べてないからあんまり元気が無いのだ。」と言う葵ちゃん。見た目からして十分に元気である。

そして、しばらくして学園全体が騒ぎ始めていた。どうやら正門の方でトラブルがあったらしい。正門か、なにやら会長の気配がするんだけど。

案の定、会長の舞踏会が開かれていたのだった。いや、この場合は武道会だろうか?会長はまるで舞いを踊っているように見えるからその字を使ったのだけど。

「懲りて欲しいな。貴方達じゃあ勝てないのよ。学校までトラブルを持って来て。」

あの女性の何処にそんな力があるのかと言わんばかりの力で男性が投げ飛ばされていく。あぁ、もう、どう表現したら良いんだろう?

「あいつは女じゃない、化け物だ。紅蓮団の名にかけてもあいつに参ったといわせる。」

「まあ、人を化け物扱いなんてひどい。」

「知るか!行くぞ!」

不良集団が会長めがけて走ってくる。

「まったく、女の子一人に男が何人も。私ってそんなに魅力的かしら?」

「いや、会長違うでしょ?」と僕は突込みを入れた。会長は笑って返した。

「ふふふ、そうね。少なくとも、この人たちはお断りしたいわね。」

そう言いながら笑顔で不良集団を殴る会長さん。あぁ、もうどうしよう。まあ、相手から襲ってきてるし、文章的報告書では正当防衛と見れるけど、現状を見た人は明らかな、いや、もういいや。まぁ、解りやすい表現をするならば神に人が突っ込むものである。

つまりは、無駄な事である。まぁ、神は人が創造したモノだから勝ち負けも人が決めるのだろうけど。

「これで、終わりかしら?」

「うぅ、また負けた。」

「人を化け物扱いした罰は受けて貰う予定だから覚悟しておいてね。」と笑顔の会長。敵は戦意喪失しています。寧ろ青ざめてます。

「これだけ、痛めつけてまだやるの?」

「えぇ、今度は精神的な面で。そうね、まずは学校に連絡して学校長と親を呼んで四者面談からかしら?それから、一ヶ月の社会奉仕と、色々と。」

「会長にそんな権限があるの?」

「私ではなくて私の親にあるわね。親が教育委員会の委員だから。」

「そういえば、そうでしたね。」


まあ、そんな事件があって僕は疲れた。気疲れってやつです。

「まったく、会長って、色々な意味ですごい人って事が改めて理解できた気がする。」

「そうだね。」と葵ちゃんが言った。

そして、昼休み。僕はお弁当を葵ちゃんに渡した。

「ありがと。やっぱり、ゆかちゃんのお弁当が一番美味しいや。自分で作ってみたけど、やっぱりゆかちゃんには敵わなかった。」

僕はその言葉に照れた。


放課後。掃除も終って僕は家に帰っていた。

「まだ。ファーリングは帰ってないみたいだな。」

「ファーリングって誰?」と葵ちゃんが聞いてきた。

「天使、かな?」

「はい?」

そして、詩が聞こえ来た。

「ん?詩?」

「え?何が?」

「詩が聞こえない?」

「聞こえないよ?」

「え?」

こんなにはっきり聞こえるのに。僕は窓を開けて空を見た。


「“夜空に消えた星達は何処へと行くの?君の願いを乗せて何処へと行くのだろ?深い闇の中に落ちて消えて行く運命さざめの星達も消えるときに刹那に光る

はじけて消えた星は何処へと消えるのだろう?君の心に届けて欲しい。“」

「見つけた。まさか、こんな暢気に詩なんて歌ってると思わなかったけどね。」

私の目の前には私同様に羽を生やした天使が居た。

「貴女は誰ですか?」

「そっか、墜落の衝撃でメモリーが損傷してるんだ。だったら、都合が良いや。貴女を此処で、破壊してあげるわ。」

どうやら襲ってくるみたい。私は戦闘モードへと移行した。

「知ってる?翼を無くした鳥はもう飛べないんだよ。」と言う天使の少女。少女は殴りながら話してきた。

「それが、どうかしたのですか?」と反撃しながら聞いた。

「そして、羽があるのに飛べない鳥は何でしょう?」

「・・・」

「それはね。」

高出力砲撃魔法を構える少女。少女の前に魔方陣が現れて魔法の弾がいくつも放たれた。

「籠の鳥だよ!」

凄まじい爆音と轟音が響いた。

「飛び方を忘れた鳥は羽の無い鳥と同じなんだよ。ハハハ。あんな地上の人間と契約を結んだのがいけないんだよ。」

「確かに、籠の鳥は空を飛べないかもしれません。」と言って力を溜めていく。

「けど、ソレは貴女も同じなのではないですか?空に縛られし、者。」

『記憶が戻っている?さっきの衝撃でメモリーのバックアップが一時的に作動したの?』

「黙れ!私は自由なんだ。私はマスターが好きで一緒にいるんだ。」

少女はまた砲撃を放ってきた。今度はシールドでも護りきれないぐらい強力だった。

「飛べない鳥はもう鳥じゃない。地面を這っていろ!」

「何故、貴女は私を攻撃するのですか?」

「何を今更。記憶が無いならそのまま破壊されろ!」

私は弾幕の雨を掻い潜りながら近づいた。そして、少女の背後に回りこむ。

「しまった!?」と少女が振り返る瞬間に私はゼロ距離からの高出力魔力砲撃を放った。天使の少女は爆炎と豪炎の中に消えた。

「私は、何者なのでしょう?私は何をするべきなのでしょう?」

私の高度が下がっていった。エネルギーを使い過ぎたみたい。私は地面に着地してマスターの居る家へと帰っていく。門限までもうあまり時間がない。

「マスター。」


「ん?帰ってきたみたいだね。」

玄関を開けるとそこにはヨロヨロのファーリングが居た。

「どうしたの?」

「少し、エネルギーを使いすぎてしまって。他の機能を遮断して何とか保っているんですが、ソレも限界が近いようです。」

「そういえば、朝、言ってた発条を巻けばどうにかなるの?」

「えぇ、この発条を私の背中に。翼と翼の間に差し込むところがあるので。」

僕はファーリングから発条を受け取って、発条を巻き始めた。

「マスター、や、優しく。」

「え?あ、ごめん。こう?」

「えぇ、ひゃ!」

声を上げたファーリングに僕は驚いた。

「え?痛かった?」

「い、いえ。ただ、エネルギーが補充されると、その、なんて表現すれば良いのか。気持ちいいんです。」

「そう、ならよかった。」

僕は発条を巻き始めた。その度にファーリングが声を上げる。

終わったころに葵ちゃんがやってきた。

「ありがとうございました。エネルギー補充完了です。」

「そう、よかった。」

「それで、ゆかちゃん、この人は誰なの?」と葵ちゃんが聞いた。

「私は、ファーリング・スターです。人造天使です。」

「天使?」

「そうです。」

「へぇ、天使って本当にいたんだ。」と感心する葵ちゃん。

「それじゃあ、そろそろ夕食作るとしようかな。」と僕は腰を持ち上げた。

「マスター。食事なら私が作りますよ。」

「あ、私もファーリングさんの作ったご飯を食べてみたい。」と葵ちゃんが言った。

「作れるの?」

「ある程度の物でしたら可能です。何が良いですか?」

「ファーリングに任せるよ。」

「了解しました。」

ファーリングは台所へと消えていった。

しばらくして、台所から姿を現わしたファーリング。出来た料理をテーブルの上に並べていく。

「すごい。綺麗。」と葵ちゃんが目の前の光景に驚いている。目の前には八宝菜に鳥の唐揚げ。厚焼出汁巻き玉子焼きだった。

「この程度の物でしたら。」

「すごいね。ファーリングは料理が上手なんだね。」と僕が言うとファーリングは顔を少し赤らめて照れた。

「それじゃあ、さっそく食べよう!」と葵ちゃんが言った。味も申し分ないぐらい美味しかった。

「美味しい。」と葵ちゃんが卵焼きを食べながら言った。

「ありがとうございます。」

「このふっくらした感じがいいよね。ゆかちゃんの料理と同じくらい美味しい。どうしてこんなに美味しい物が作れるの?」

「どうして?と聞かれましても、愛情と言えばいいのでしょうか?」

ファーリングは少し困った表情を浮かべながら答えた。

「愛情か。なるほど、深いね。まぁ、それは実力がついてからゆっくり研究してみる。まずはゆかちゃんと同じくらいに上手になるように努力しないとね。」と葵ちゃんは決意を言った

「僕も協力するよ。」

「私にも出来る事があればお手伝いいたしますが。」

「ありがと。」

こんな平凡な非日常的日常がいつまで続くのか僕にはわからないけど、今はこのままでいい気がしている。楽しいし。


休日、僕はファーリングと葵ちゃんを連れてデパートに来ていた。ファーリングの服を買う為だ。目の前では葵ちゃんがファーリングの為にどの服がいいかと話をしていた。

「ねぇ、ファーリングさんは何がいい?」

「私には服の観念がわからないのですが。これではダメなのですか?」

ファーリングは自分の着ている服をさしていった。

「ダメじゃないんだけど、いつも同じ服ではバリエーションがないというか。」と葵ちゃんが言った。

「そうなのですか。」

「あ、この服なんてどう?」と葵ちゃんが服をさして言った。

「マスターは一体、どんな服がいいと思いますか?」とファーリングがこちらを向いて聞いてきた。

「そうだな。僕だったら、こんなのがいいと思うんだけど。」

「これか?」と葵ちゃんが服を取った。

「そう、その白いワンピース。」

「とりあえず、試着してみよう。いこう、ファーリングさん。」と葵ちゃんはファーリングの手を掴んで試着室へ走っていった。そんなに走らなくてもいいと思うけど。僕は歩いて2人を追った。

「此処で着替えるのですか?」

「そう。それじゃあ、着替え終わったら呼んでくれ。」と葵ちゃんが言った。

僕は2人に追いついた。

「あ、ゆかちゃん、今、ファーリングさんが着替えてるところだ。」

「そう。ところで、なんで葵ちゃんは言葉がそんなに固いの?」

「固い?あぁ、だがとか言ってしまう事か。それは、ボクがしっかりしようと男っぽくなったときの名残だな。嫌だったか?」

そう聞かれて僕は首を横に振った。

「うんん。別に。」

それは、それで葵ちゃんの良い所なのかもしれないからね。

「そうか。なら、ボクはボクのままでいいよな。」

「うん。」

「終わりました。」とファーリングがカーテンから顔を出して言った。

「うん。それじゃあ、カーテンを開けて。」

ファーリングはカーテンを開けた。白いワンピースは思った以上に似合っていた。

「似合ってるね。」と僕は言った。

「ありがとうございます。」

「ねえ、ゆかちゃん、この服いいと思うな。買ってあげようよ。」

「うん。」

僕は購入する事にした。ファーリングは買って貰った洋服を大事そうに抱きしめていた。その姿がなんだか可愛らしく思えていた。まあ、背中に羽が生えているけどね。みんなはコスプレの一種だと思って色々な目を向けている。まぁ、本人が嫌でなければ僕は構わなかった。

『人造天使。か一体誰が何の目的で作ったんだろうな?まさかとは思うが、神様でも降臨させるつもりか?まさか。』と僕は自分の考えを笑った。

『そんなわけ無いか。』

買い物を終えて僕は家に帰ってきた。

「ふう。少し、疲れたかな?」

結局の所、天使と居ようが居まいが生活に何かあるわけではない。変化はあるけれど、それがどうこうしたわけではない。

「マスター?お疲れですか?」

「まあ、少しね。ずっと、立ちっぱなしだったからね。」

「私でよければマッサージを試みてみましょうか?」とファーリングが聞いてきた。

「うん。お願い。」と僕は頷いた。

「それでは、マスターうつ伏せで寝ていてください。」

僕は言われたとおりにうつ伏せで寝た。そして、背中にファーリングの手が触れた。肩甲骨のあたりをファーリングの柔らかい指がしっかりと力を入れて押していく。あぁ、なんだか気持ちよくなってきた。

「マスター。痛くないですか?」

「うん、丁度良いよ。」

「それはよかったです。」

気持ち良過ぎたせいなのか、買い物の疲れからなのかはわからないが、何時の間にか僕は眠ってしまったらしい。目が覚めた頃には日が西に沈んで空がオレンジと黒の境がわからない程度の時間帯だった。

「少し、眠っちゃったのか。」

「あ、起きられましたか。葵さんが来ていますよ。」とファーリングが言った。

「ん?」

「おはよ。ゆかちゃん、買い物で疲れちゃったかな?」と葵ちゃんが聞いてきた。

「さぁ。でも、今はすっきりしてるよ。」

「そう。なら良かった。今日はゆかちゃんの家でご飯を食べようと思って。いいか?」

「構わないよ。それじゃあ、早速作るとしよう。」

僕は台所に姿を消した。

「マスター。何か手伝う事はありますか?」

「それじゃあ、テーブルを拭いてくれる?」

「解りました。」

「それじゃあ、ボクはお皿を出すよ。」と葵ちゃんが言った。みんな協力的でいいなと思いながら僕は料理を作っていた。


「ふう。おなかいっぱい。」と葵ちゃんが言った。僕はお茶を差し出した。

「すまない。」

「そういえば、ファーリングって物食べたり出来るの?」と僕は聞いてみた。

「そうですね。出来なくは有りませんが栄養にはならないので分解して空気中に還す事になりますけど。」

「どういう事?」

「この世界のモノは全て元素で出来ていますから、ソレを元素に戻すんです。例えばこの麦茶ですが水は水素と酸素に麦は炭素と水素と酸素ですから。酸素と水素。それに、二酸化炭素にして空気中に放出すればいいわけですから。」と説明してくれた。

「まぁ、なんで元素に分解できるかはさておいて飲めるのであれば。これ飲む?」と僕は麦茶を差し出した。

「頂きます。」

「そういえば、味はわかるのか?」と葵ちゃんが聞いた。

「えぇ、解ります。ある程度の物であればですが。」

「まぁ、食べ物は人生の楽しみの一つではあるからね。ソレが解るのは幸せな事だよ。」と葵ちゃんが言った。

「“幸せ“ですか。上手く理解が出来ませんがどういう意味なのですか?」とファーリングが聞いてきた。その回答に僕等は困った。

「う~ん。どう説明していいんだろうね?」と葵ちゃんが聞いてきた。僕は本棚から辞書を出して調べてみた。

「幸せ。めぐり合わせが良い事。幸福な事だってさ。」

僕は辞書を本棚へ戻した。

「う~ん、今一な説明だね。簡単に言うと不満も無くて心が満ちる事かな?心が満たされるって言う感じ。」

「心が、満たされる。ですか。」

「ちなみに、葵ちゃんの今の状態は口に福と書いてこうふくと読むんだよ。」

「実際にある言葉だね。まぁ、使う事はあまり無いけどね。」と葵ちゃんは言った。

『私の心が満たされる事は一体何なのでしょうか?』

「ファーリング?どうしたの?」

「いえ、なんでもありません」


その日は公園で会長に会った。

「会長?」

「あら?どうしたの仲良し2人組みさん。」

「いえ、会長の方こそどうしたんですか?そんなお洒落な格好をして。」

葵ちゃんが聞いた。会長はこちらをみて、相変わらずの笑みを浮かべてから。

「あら?私がお洒落な格好をしていたら変かしら?」と言った。

「いえ、そんな事は無いですが。」

「実は、デートなのよ。」

「デート?会長がですか?」

「えぇ。何をそんなに驚いてるの?」

「だって、今まで恋人らしい恋人を見かけた事はなかったんですけど。」と僕は驚いた。

「そうね。今日が初デートだからだと思うけど。」と会長は言った。

「そうですか。」

「あ、来たわよ。お~い、ギン君。」と手を振る会長。

『ギン?まさか?』とボクラ2人は思って振り返った。そこには柊 銀が居た。

「あ、ギン。」と僕は言った。

「ギンじゃないか。」

葵ちゃん。2人とも驚きを隠せないで居た。どうしてギンが此処に居るのだろう。会長のデートの相手はまさかギンだったのか。

「あれ?なんで水樹に汐宮じゃないか、どうしたんだ2人とも。あ、まさかお前らもデートか?」

「こら!」

葵ちゃんが手を振りかざして怒った。

「あはは、わりい。それじゃあ行きますか。天音先輩。」

「えぇ。」

よもや、あの2人が付き合っていたとは。でも、ギンはそこまで強くないはず。何か惹かれる要素があったのだろうか?とまあ、こんなサプライズが起こった状態で僕等は公園に居た。僕らが公園にいる理由はファーリングに人間らしさを教える為である。流石に、この世界の全人類が天使を受け入れられるわけも無いので。それ以前にこないだお巡りさんに注意されてしまったので。

「とりあえず、ファーリング。」

ファーリングは空から降りてきた。そして、僕はファーリングに言った。

「とりあえず。まずは、人間は空を飛べないから地上を歩こう。まぁ、人気がなければ空を飛んでもいいけどね。」

「解りました。羽をしまいます。しまうといっても収縮するだけなので完全には隠せませんが。」

でも、服の下に隠れるのであればOK。

「まぁ、それ以上の事は無いんだけどね。」と葵ちゃんが言った。

「そうですか。それでは、これからは極力羽をしまって歩くようにします。」

「う~ん。まぁ、家では僕と葵ちゃんしか居ない時は伸ばしてていいよ。後、1人の時もね。」と僕は言った。

「わかりました。」

「それじゃあ、これからどうしようか?」と葵ちゃんが言った。

「せっかく公園にきたのだから何かで遊ぼうか?」

僕は言った。葵ちゃんは頷いた。

「そうだね。なにか無いかな?」と葵ちゃんがあたりを見渡していると一つのバスケットボールが転がってきた。どうやら中学生がバスケットをやっているらしい。

「あ、すいません。」と男の子がボールを取りに来た。

「ねぇ、ボクらも一緒に遊んでいいか?」

葵ちゃんが聞いた。男の子は仲間と相談して了承を得た。勿論やるのはバスケット。とは言え、運動の苦手な僕はあまり役に立てないのが現状。体育の成績は他の面でカバーしてるだけだからね。その点では葵ちゃんはかなり上手かった。

「ファーリングさんパス。」と言ってファーリングにパスを出す葵ちゃん。そのままファーリングがシュートを決めた。男の子達は女の子に負けたのがよほど悔しいのか何度か勝負を挑んできたが結局二人に返り討ち。僕は

眼鏡が割れない事を祈るだけだった。

「やったね。」

ファーリングとハイタッチをかわした葵ちゃん。そうとう楽しかったみたい。

「お姉ちゃんたち強いね。」

「ははは。」

「あら?まだ、公園に居たのね。」と会長の声がした。

「あ、会長。それにギンも。」と葵ちゃんが言った。

「バスケットをやっているの?」

「えぇ、会長も参加しますか?」

「そうね。貴方達全員が相手でも、いいかしら?」

「そちらは2人ですか?」と僕は聞いた。

「そうね。」

そして、試合が始まる。ギンははっきりってお飾りだった。会長一人の独走状態。僕らは止める術も無く点を入れられて行く。

「あら?もう降参?」とボールを指で巧みに回しながら聞いてきた会長。あなたに勝てる人類が存在するなら会ってみたいです。

「会長、手加減してくださいよ。こっちが二点入れても会長にボールが渡って三点を決められてたら意味ないじゃないですか。」と僕は言った。

「あら?これでも手加減してるのよ。ねえ、葵ちゃん。」と会長が聞いた。葵ちゃんは頷いた。

「そうだな。会長の実力はこの程度ではないからな。」

まったく、なんで会長はこんなに強いのに僕はこんなひ弱なんだろう?と思った。

「あ、ゆかちゃん眼鏡に砂埃がついてる。」と葵ちゃんが言った。僕は眼鏡を外して拭いた。

「う~ん。眼鏡がないとますます女の子に見えちゃうわね。」と会長が言った。

「男だったんですか?」とビックリしている男の子達。

「男ですよ。」

僕は苦笑するしかなかった。

「マスター、この方々は何方ですか?」とファーリングが聞いてきた。

「あぁ、僕がさっきから会長って呼んでいるこの人が・・・。」

天音あまね 交喙いすか神上学園の生徒会長をしているのよ。よろしく。」

「俺は柊 銀。」

「で、こちらの方は?」

「ファーリング・スターです。よろしく。」

頭を下げるファーリング。

「そう。ファーリングって言うんだ。」と会長が言った。


なんやかんやで帰る時間になった。何故か知らないがみんなで帰ることになっていた。2人はデートじゃないのですか?

「そういえば、会長はギンの何処に惚れたのですか?」と葵ちゃんが聞いた。

「ギン君の方から告白してくれたのよ。」

「せ、先輩。照れるじゃないですか。」

「いいじゃない。減るものでもないし。」

「はぁ。」

「まぁ、突然生徒会室に乗り込んできたときは何処の不良性とかと思ったけどね。そしたら突然。俺と付き合ってくれって。」

「すご。」と僕は驚いた。葵ちゃんもあまりの急な入りに驚いている。

「そこからは、何が好き、何処が好きって校長先生のスピーチの如く永遠聞かされたわ。だけど、それだけ、私の事を思ってくれているのは嬉しかったけどね。だから、私はギン君と付き合おうって思った。」

『大事に思ってくれる。私が大事に思っているのは・・・。』

「ファーリング?」と僕は声を掛けた。

「は、はい。どうかしましたか?」

「いや。何か悩んでるみたいだったから。」

「だ、大丈夫です。」

「それにしても、ギンに彼女が出来るなんてね。」と葵ちゃんが言った。

「な、なんか照れるな。」

そんなわけで僕らは各自の家に帰っていったわけですが。なんかファーリングが考えてこんでいるように僕には思えた。

「大丈夫?」

僕は心配そうな声で聞いた。

「あの、マスター。」

「ん?」

「ちょっと空を飛んできてもいいですか?」とファーリングは聞いてきた。僕は頷いた。

「あぁ、いいよ。」

「ありがとうございます。」と頭を下げてからファーリングは白い羽を巨大化させて窓から空へと飛び立って行った。

「気を付けてね。」と僕は飛んでいくファーリングをみながら言った。


私は回りに誰もいないことを確認してから詩を歌った。いつも何処からか湧いてくるこの詩。私の過去の手がかりなのだろうか?

「闇と遊ぶ鳥が月に照らされる 月明かりは部屋へと入って私を照らす 私はまだ自由を知らない籠の鳥 いつも籠から空を見上げて鳴いていた あなたはまだ優しさを知らない空の鳥 いつも空から籠を見下ろして鳴いていた 私はまるで狂った鳥みたいに自由を求めて空を目指しては籠に戻る鳥 自由は何処に優しさは何処?あなたは何処に居るのだろう?ふざけあったあの部屋で天罰を受けたくて 大空で断罪されたくて 許して欲しいのか 何を望む 優しい自由を欲しい 怠慢な望みかも知れないけれど 私はそれが欲しい 優しい自由 」

そこで詩は途切れた。この詩に一体どんな意味が込められているのだろう?私には解らない。ただ、何処となく悲しい温かさを感じている。上手く言語化できない。

「天使の詩が聞こえると思ってきて見たらまさか、お前が居たとはね。」

「・・・。」

以前にもあった気がするが私が詩を歌うと天子が現れるらしい。今度は少し大人びた天使だった。

「貴女は誰ですか?」

「私は製造番号1265号。貴女を見つけたら破壊するように言われているの。」

「誰からですか?」

「そんなの、神様からに決まっているじゃない。」

「神様?」

「あ、メモリーが消失してるのね。」

「確かに私には契約前の記憶は無いです。」

「まぁ、壊れてしまうモノに記憶はいらないわね。」

どうやら襲ってくるらしい。私は戦闘モードへと移行した。

「何故神様は私を破壊したがるのですか?」

「さぁ?そんなの解らないわ。」

「貴女は言われた事をなにも考えずに遂行するのですね。」

「そうね。それが、神様の望みなら私はそうするわ。貴女は自分のマスターが望んだ事を全て遂行しないの?」

「解りません。マスターは私にあまり命令しません。」

そう、言ったのは六時までに家に帰る事と人前では空を飛ばないようにする事ぐらいだ。それ以外は自由だった。

「そう。神様はいつも退屈してるわ。だからいつも刺激を求めている。だから人に天罰を与えると言う遊びをする。まぁ、人間はカ身を崇めているけどね。天災の多くが神様によって起こされているとも知らずにね。」

天使は銃を放ってきた。

「シールド展開。」

銃弾はシールドで弾かれる。そして、その上から天使が殴ってきた。私はシールドごと吹き飛ばされた。

「きゃあぁ。」

地面へと叩きつけられる。

「やっぱり、籠の鳥は弱いわね。そもそも、なんで人間なんかと契約したの?人間の力では天使の全力も出せないだろうに。」

確かに天使は契約者であるマスターの精神力の一部を使って力を出している。想像力がこの魔法の原動力だから。人間の想像力は確かに神に比べれば弱いのかも知れない。

『何故?何故私はマスターと契約したのでしょうか?』

「解らないんです。」

「は?解らないですって?やっぱり貴女は壊れているわ。神様が貴女を破壊するように命じたのはあなたが壊れているからじゃないかしら?」

「壊れている?私は壊れているのですか?」

「貴女は羽があるのに飛べない鳥。否、飛び方を忘れてしまった可哀想な鳥篭の鳥ね。貴女は貴女のマスターと一緒に地面を這っていればいいのよ。そして、惨めに壊れていきなさい。あの、ゴミ人間と一緒にね。」

「・・・」

私は許せなかった。マスターを悪く言った天子を。

「さぁ消えなさい。1075号!」

高出力砲撃魔法を構える天使。天使の前に魔方陣が現れて魔法の弾がいくつも放たれた。

凄まじい爆音と轟音が響いた。

「馬鹿な、シールドだと?あの砲撃を防いだというのか?」と天使が驚いている。私の目の前には真紅のシールドが展開されている。

『力が増している?私の意思に力が答えている?』

「確かに壊れているのかもしれません。1075号は壊れているのかもしれません。しかし、私は壊れていません。」

「なに言ってるの?」

私は魔法で弓矢を形成した。私は光の矢を溜めて弓を引き絞った。

「私はファーリング・スター。1075号じゃない。」

矢を放った。矢は一直線に飛んで行き天使のシールドを貫いて刺さった。

「ば、馬鹿な。」

天使は消滅していった。私は怪我を修復してからマスターの所へ帰る事にした。

「私は、何者なのでしょう?私は何をするべきなのでしょう?」

「マスター。」


「ん?帰ってきたみたいだね。」

窓を開けてファーリングを入れた。

「マスター。私は何をするべきなのでしょうか?」と言ってきた。

「どうしたの突然?」

「教えてください。私は何すればいいいのでしょうか?」

「う~ん、突然そんな事聞かれても。ファーリングのしたいようにすればいいんじゃないかな?」

「私のしたいようにですか?」

「そう。何でもかんでも人に決めてもらうのってすごく楽だけど、それって結局は自分を殺してるんだ。それじゃあ、生きた人形だからさ。ある程度は自分で決めていいんだと思うんだ。だから、ファーリングは自分のしたいようにすればいいと思う。」

「私のしたいように。」

「そう。ファーリングのしたいように。」

そう言うとファーリングは突然僕にキスしてきた。柔らかい唇が僕の唇に触れる。

そして、唇を離していった。その瞬間ふと甘い香りがした。

「これが、今、私のしたい事です。」とファーリングは言った。僕は顔を赤くした。

「マスター、これからも一緒に居てくださいね。」

「うん。」

僕は笑顔で返した。

いかがでしたでしょうか?これからもがんばって書いていくので温かく見守っていてください。感想や意見、疑問などをお待ちしております。

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