8話 ハイキング 二
男の霊がふわふわと移動し始めたので、私は男の後をついて行った。
さっき春子がボールを拾いに行った斜面まで来たが、緩い斜面を過ぎると急な斜面に変わり、さらに奥は小さな崖になっていた。
崖の下には雑草が生い茂り、人間には雑草の下までよく見えないが、魂となった私は、雑草の下であろうと自由に動いて見ることができる。
男について行った先の草に隠されたその場所に、服を着た白骨化した死体があった。
「これが僕。足を滑らせて落ちたんだけど、大した崖でもないのに、運悪く頭を岩で強く打ってね。そのままここで眠っているんだ。ずっと誰かに知らせようとしてたんだけど、なかなか気付いてもらえなくてね。」
「わかったわ。私がなんとかするから、あの子には近づかないで、ここで待っていてください。」
私は男の霊と別れて、魂を身体の中に戻した。
その後は今日のために買ってきた帽子を被り、男の霊に教えてもらった場所まで歩いた。
そして帽子を投げた。
次は、若い体育の男性教師を探した。
「先生、たいへんです。私の帽子が飛んで行ってしまいました。」
泣きそうな顔で女子生徒にお願いされると、若い男の教師は何とかしてあげようと躍起になってくれる。
「こっちです。」
私は教師を案内し、帽子が落ちている場所を指さした。
小さな崖だから、若い体育の教師なら、どうってことなく降りてくれるはず。
思った通り、教師は簡単に崖の下まで降りて、私の帽子を拾ってくれた。
そして・・・、ぎゃあっと叫んだ。
「き、君は見なくていいから、他の先生を呼んできてくれ。」
私はほっとして、他の先生たちを呼びに行った。
それから先は、大騒動で、夕方のニュースにでは、他殺か事故死かの調査を開始したと報道されていた
遺体のそばに落ちていたカバンに入っていた学生証から、男の身元は、一人暮らしの大学生だとわかった。
実家は他県でかなり遠く、二年前に行方不明になっていて、家族からは捜索願が出されていた。
まあこれで、あの男の霊は、あの場所でさまようことはなくなったはず。
家族の元に帰り、きっと成仏していることだろう。




