6話 春子 六
クラスにもだんだん慣れてきたときに、担任から春の校外学習の話があった。
担任の話によると、今回の校外学習は、クラスの親睦を深めるもので、行先は小高い山と丘陵地のハイキングコース。
服装は学校指定の体操服。お菓子は自由。帽子が必要な者は用意しておくように、だった。
お菓子は自由という言葉に、敏感に反応した春子は、早速私を買い物に誘った。
「ねえ、麗奈。校外学習に持っていくお菓子とか、一緒に買いに行こうよ!」
春子があんまり嬉しそうに誘うものだから、私は断ることができずに、OKしてしまった。
だから、今、こうして苦手な人混みの中を春子と一緒に歩いているのだ。
春子の肩には、五歳くらいの男の子が乗っている。
春子の肩は居心地が良いのか、男の子の霊は気分が良さそうだ。
春子が行きたかったのは、駅前の商店街にあるお菓子の専門店。
「一度ここに、麗奈と来たかったんだぁ。」
別にわざわざ高校の最寄り駅まで来なくても、自宅に近いスーパーで買っても良いだろうに、春子は私と一緒に買い物に行きたいという気持ちを優先したようだ。
私たちがお菓子を選んでいると、孫と一緒におばあさんが入って来た。
にこにこしながら、お菓子を選ぶ孫を愛おしそうに見ているのだけど、おばあさんの後ろには、死神がぴったりとくっついている。
死神が持っている鎌は、まだ振り上げられていない。
しかし、このおばあさんは、もうすぐ死んでしまうのだ。
どのように死ぬのかなんて私にはわからないが、死は確実に近いうちに訪れる。
死神が鎌を振り上げて、振り下ろした瞬間が、おばあさんの死の瞬間。
私はこれ以上、おばあさんを見ていることができなくて目をそらした。
この後、買い物が終わり、私たちはファーストフード店でドリンクを飲んでから別れた。
「麗奈、ハイキングが楽しみだね。じゃあね!」
ニコニコして手を振る春子の肩には、もう子どもはいなかった。
きっと飽きたのか、もっと居心地の良い誰かの肩に乗り移ったのだろう。




