4話 春子 四
入学式が始まった体育館で、新入生を相手に校長先生の長い話が始まった。
パイプ椅子に腰を掛けている今がチャンス。
私は自分の身体から、魂だけの姿になって抜け出した。
魂が抜け出た私の身体は、ただ静かに眠っているように見えるだけ。
一般的にこれを幽体離脱と言うけれど、なんとなく、その言葉自体が大げさな気がして、私はあまり好きではない。
ふわふわと浮いた私は、春子の肩に乗っているおじいさんと対面して話しかけた。
「どうしてあなたは、この子の肩に乗っているのですか?」
「歩くのに疲れていたら、この子が通りかかったもんで・・・、ちょっと休ませてもらったんじゃよ。」
「それにしても、長くないですか?」
「なんかね。この子の肩の居心地がとっても良いんじゃ。それでつい、長居をしてしまったわい。」
「あなたが乗っているから肩が凝ってるんですって。もうそろそろ降りてあげたらどうですか?」
「それもそうじゃなぁ。では、降りるとするか。」
おじいさんは、春子の肩からひょいと飛び降り通路を歩き、体育館の壁を抜けて外へと出ていった。
春子は、急に肩の凝りがなくなったことに驚いてキョロキョロしていたが、すぐに真面目な顔で校長先生に視線を移した。
私は自分の身体に戻って目を開けた。
入学式が終わった後、これから私たちが過ごす教室に入ったのだが、日向と緋ノ江は出席番号が一番違うだけで、当然、座席も春子が前で私は彼女の後ろの席になった。
「よかったぁ。緋ノ江さんがそばにいてくれて、すっごく心強いわ。」
本当に嬉しそうに言ってくれるから、なんだか私も嬉しくなった。
私は高校生になっても、友人を作る気はなかったし、春子とも適当に話を合わせるだけで距離を置くつもりでいた。
だけど、クラスに知り合いが誰もいない春子は、後ろを向いて、何かと私に話しかけてくる。
「緋ノ江さんは、私の高校最初の友だちよ!」
と友だち宣言されてしまった。
積極的に拒否する気もなかったし、まあ、そのうちに新しい友人ができたら、私から離れていくだろうと思っていたのだが、彼女は私が思う以上に情が厚く、私自身も、彼女から目が離せなくなった。
なぜなら、彼女は、霊を呼び寄せる体質なようで、彼女の肩や頭にしょっちゅう霊を乗せたまま登校してくるのだから・・・。




