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神の器と嘘つきな皇太子  作者: ゆうきあさひ


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第6章 祈りが集まる夜-帝都の影  第3話 

視察前夜の皇太子夫妻の私室。ランプの炎が揺れ、春の気配が静かに漂っていた。アレクシウスはそわそわと机に残る書類を見ては溜息をつく。

「本当に、こんなにも離れるのか……」

エルフリーデは微笑む。

「アレク様はお仕事がありますもの。そんなに心配ですの?」

「心配に決まっている。……君のいない帝都など、考えられない」

「でも、視察は務めですわ。それにわたくしは、ゼラニアの王妹殿下がまだこの皇城に滞在してらっしゃるのに、全てをアレク様にお任せするのが心配ですわ。……その、イザベラ様はアレクにとても距離が近くて……妃としても、妻としても、私は……」

言い終える前に、アレクの指がそっと彼女の頬に触れた。

「フリーデ、嫉妬している?ふふ、可愛くて嬉しいけど、私が信用できないのか?あの女は私の眼中にもない。それに務めも大切だが─君がいなくなる夜の方が、よほど私には重い」

その声音に、エルフリーデの胸がじんと温かくなる。

「……そんなことを言われたら、出発できなくなりますわ」

「そうすればいいのに」

ほんの冗談のように言ったはずなのに、アレクシウスの目は冗談ではなかった。その真剣さが胸に触れ、エルフリーデは思わず視線を落とす。

「アレク様……その、私……」

「フリーデ?」

エルフリーデは、胸の内に溢れかけた言葉をそっと押し出し柔らかく笑った。

「アレク様。……出立の前に、抱きしめてほしいと思っていました。離れる前の夜くらいは、わがままを言ってもいいでしょうか」

アレクシウスの表情が一瞬止まり──次の瞬間には彼女を強く抱きしめていた。

「……君が望むなら」

耳元に落とされた声は震えていて、いつもの完璧な皇太子とは違う、ただのアレクだった。

エルフリーデは、そっと彼の胸に手を添える。

「アレク様。……帰ってきたら、また寄り添ってくださいね」

「帰ってくるまで待てると思うか?」

甘く触れた唇が、躊躇いなく深くなる。暖炉の火がぱちりと弾け、外の風が小さく唸る。二人だけの世界が静かに閉じる。──その夜、アレクシウスとエルフリーデは、互いを確かめるように寄り添い、冬の名残と春の息吹が混ざるような、優しく深い時間を過ごした。

その夜――二人は互いを確かめるように寄り添った。

優しく、深く、言葉よりも確かな温度で。

 

翌朝、エルフリーデの視察の日の朝、ベットの中でアレクシウスはなかなか手を離せず、エルフリーデは少し照れたように微笑んでいた。

「アレク様が、帝国の未来のために必要な視察だと仰ったのですよ?わたくしの為になる、と。」

「……あの時の自分を殴りたい」

小さくこぼした呟きに、エルフリーデはくすりと笑う。

「心配なさそうに見えて、そんなことを仰るのですね」

「君のことになると、どうにも冷静さを欠く」

ドアの外から侍女に時間がありません、と促されてようやくベットからエルフリーデを送り出した時。

アレクシウスは胸の奥で何かがざわつくのを感じていた。

(……何だ、この感覚は)

天才は兆しに敏感だ。しかし今回は、それを 自信 が押し潰した。

――この後「初めての誤算」となることも知らずに。

 


♦︎♦︎♦︎♦︎

皇太子妃として初の単独地方公務。

その公務に随行する近衛隊主力──ゲルト、テオ、オスカー、ルッツ。

そこに近衛騎士団長のレオナルトと一個小隊が加わり、完璧な護衛編成となった。

アレクシウスは皇城の玄関フロアでエルフリーデを見送るために立っていた。冷静・完璧・未来を読み切る皇子そのままの表情で。だが胸の奥底では小さな棘のような不安がひっそりと刺さっていた。

(……本当は、行かせたくない。だがこれは彼女が未来の皇后として立つために必要な一歩だ)


エルフリーデが近付く。

「アレク様。……行ってまいります」

微笑む妻に、アレクシウスは息を呑む。胸の奥に、嫌な予兆のような、言葉にならないざわつき。

──だが、彼はそれを振り払った。天才皇子の誇りと絶対的自信が、それを押し込めた。

その手を名残惜しそうに包み込み、ほんの一瞬だけ額に口づけを落とす。侍女たちは目を伏せ、レオナルトは「やれやれ」と小さく肩をすくめた。

「気をつけて。……レオ、頼んだ」

レオナルトが軽く胸に拳を当てる。

「任せろ。途中で報告も上げる」

アレクシウスは頷き、最後にエルフリーデの手を一度だけ包み込んだ。

(──大丈夫。私は、エルフリーデ守るために生まれてきたのだ。今回の視察の為の布陣は完璧だ)

しかし、この時のアレクシウスは知らない。

この「自信」がのちに訪れる落差を生み出すことを。


皇城を出た馬車が遠ざかる頃。別の影が静かに動いていた。影の統括官がアレクシウスの元へ走り寄る。

「殿下──也を潜めていたイザベラ殿下の動きが活発化しています。初日の歓迎式典の視線も気になりますが……」


アレクシウスは息を吐いた。

「……想定の範囲内だ。イザベラ殿下が帝都にいる以上私に接触を図るのは最初から分かっていた」

影は眉を寄せる。

「しかし──妃殿下のご不在中です。隙を突かれる可能性が……」

「隙など与えない。私は今大陸で最も狡猾な王女の一人を相手にしているんだ。油断するわけがない」

アレクシウスは完璧な自信のまま言い切った。影は頭を下げつつも、どこか不安げ。

(殿下……こういう時ほど、妃殿下に関すると判断が鈍る……)

(完璧なのに……完璧ではいられなくなる……)


エルフリーデを載せた馬車は穏やかに揺れていた。

街道を進む一行は、春のまだ冷たい風の中を穏やかに進む。

道中の村々では、皇太子妃の行列に人々が立ち並び、花を振り、帽子を取って礼をしている。

エルフリーデは馬車の窓から一人ひとりに微笑み返した。

レオナルトは並走する騎馬隊の先頭に立ち、優しいが鋼の眼差しで妹を守る。

完璧な編成。皇太子妃を守るにこれ以上はない布陣。

だが──それでも防げない事故がある。


デルミア北部近くの街道の途中。レオが馬上で眉をひそめた。

「……地盤、少し緩んでるな」

ゲルトが即座に馬を寄せる。

「昨晩までの雨の影響かと。予定より一刻ほど遅れてでも、下り坂を避けるべきかと」

「そうだな。エルフリーデの馬車は重い。無理はさせられん」

ほんの小さな遅延、護衛としては正しい判断。

馬車の中、エルフリーデは少しだけ窓の外を心細そうに眺めていた。その視線を、外からレオナルトが見つけた。

(……エル。少し心細いか)

レオナルトは軽く笑って大声で言う。

「おい!帰りたいなら今のうちだぞ!兄ちゃんが引き返してやる!」

馬車の中から、くすりと笑う声。

レオナルトはそれだけで満足そうに視線を前へ戻した。


この兄の願いは誰よりも強かった。


♦︎♦︎♦︎♦︎


デルミアの町に到着すると、領主代理と役人たちが整列して出迎えた。

「ようこそお越しくださいました、皇太子妃殿下。デルミアを代表して、心より歓迎申し上げます」

エルフリーデはすっと馬車から降り、穏やかな笑みを浮かべる。

「長旅でしたが、皆様にお会いできてうれしく思います。

 今回は川沿いの護岸工事と、孤児院・救護院の様子を拝見させてくださいませ」


デルミアの街並みは、想像していたより古く疲れていた。

川に近い地区は特に建物の傷みが酷く、護岸もところどころ継ぎはぎだらけで危うい。

孤児院の屋根は、雨漏りを誤魔化すための布が重ねられ、救護院の壁にはひびが走っている。院長は深々と頭を下げた。

「……お恥ずかしい姿ではございますが、冬を越せたのも、帝国の支援のおかげで……」

エルフリーデは、院長の手を両手でそっと包んだ。

「恥ずかしがることはありません。ここまで子どもたちや保護が必要な方達を守ってこられたこと、それが何より尊いことです」

そして領主代理に向き直る。

「この屋根と壁の修繕は、護岸工事と同時に進めてくださいませ。必要な資材と職人の追加は、わたくしの名前で急ぎ手配いたします」

「妃殿下、それは本来アレクシウス殿下のご決裁を待つ案件では――」

「帝都への報告は、後からいくらでもできます。ですが、子どもたちや民の頭上から落ちる瓦礫は、今止めなければなりません」

その言葉に、領主代理は何も言えなくなった。レオナルトは横で聞きながら、心の中で小さく舌を巻く。

(……アレク。お前の奥さん、思った以上に肝が据わってるぞ)

デルミアの河岸は人で溢れていた。視察に集まった群衆の中、エルフリーデは立ち止まることなく歩を進めていた。

そのときだった。

川沿いの人垣の奥、擦り切れた外套を羽織った、ひとりの老人がいた。

エルフリーデの白に近い銀の髪が陽を受けて揺れた瞬間、

老人の視線が、はっと射抜かれるように跳ね上がる。

――似ている。

否、同じだ。

老人の喉が、かすかに震えた。声にならない音が、唇の奥で形を作る。

「…………」

その場で、膝が折れかける。

次の瞬間、エルフリーデがふと顔を上げた。人の流れの向こう、ほんの一瞬だけ――視線が、重なる。

その刹那、胸の奥で、何かが静かに鳴った。

声ではない。

言葉でもない。

けれど確かに、呼ばれた気がした。

――。

誰かに名を呼ばれたような、

けれど自分の名ではなかったような、不思議な感覚。

エルフリーデは思わず一歩、足を止めかける。理由はわからない。ただ、頭の内側をなぞるように、冷たい指先が触れた気がした。

「……?」

小さく息を漏らした、その瞬間、人の波が視界を遮り、

先ほどまであった何かは、跡形もなく消えていた。

胸に残ったのは、言いようのないざわめきだけだった。

エルフリーデは誰かを認識する前に、すでに次の歩みへと意識を戻した。

群衆が動き、視界が遮られ、老人の姿は再び人の波に呑まれていった。 

視察の合間に、ゲルトがレオナルトにそっと近づく。

「団長。周囲の警戒中に、少々気になる人物を見たとルッツが。」

「気になる?」

「ええ。川沿いの人だかりの中に、かなりの年配の男が紛れていまして……」

ゲルトは眉をひそめた。

「妃殿下をご覧になった途端、顔色を失って膝をつきかけたそうです。聞き取れないほどの声ではありましたが……確かにこう口にした、と」

「なんと言った?」

「フリードリヒ様……と」

レオの背筋に冷たいものが走る。

「……フリードリヒ。アルトリヒト自治領最後の領主、エルの本当の父親の名だ」

「はい。こちらではほとんど耳にしない名前です。デルミアに彼の地の生き残りがいる可能性は……?」

「ゼロではないな」

「……先日の陛下のお話、御印はまだですよね?」

「ああ、エルが来た日から一切ない。今は眠ってる感じか」

レオは空を仰ぎ、ひとつ息を吐く。

(老人……フリードリヒの名を口にした男……。今、エルの前に過去が現れるのは、あまりにも早すぎる)

「接触は?」

「いえ。人混みでしたし、すぐに視界から消えました。ただ、ルッツが顔を覚えております」

「……今は追うな。エルの前にこれ以上、不確かな要素を増やせない。ただし、その男を見かけたら必ず報告しろ。絶対に勝手な接触はするな」

「了解しました」

老人の存在は、まだ小さな影に過ぎなかった。

しかし、その影は確かに、静かに動き始めていた。


その日、視察隊は住民との対話と施設確認に一日を費やし、デルミアの人々に温かく迎えられながら、夜には領主館へと戻って行った。


デルミア役所裏の倉庫。薄暗い灯りの下で、ひとつの取引が交わされていた。

「……金貨は確かに受け取ったな?」

黒装束の男が、汗だくの役人の胸倉を軽くつかむ。

「は、はい……北側の峠道は地割れの危険ありとして封鎖の報告を上げておきます。妃殿下一行は、帰還の時に南東ルートを使うはずです……!」

「ご苦労。書類と印章さえあれば、誰も疑わん」

男は影の中に消えると、仲間とともに山腹の崖へと向かった。そこではすでに補強の杭が数本抜かれ、土の表面がわずかに歪んでいる。

「……本当に、こんなもんで崩れるのか?」

「ここ数日の雨で、地盤は飽和している。杭を抜いて水の流れを変えれば、あとは重力が仕事をするさ」

密偵は冷たい目で斜面を見下ろした。

「自然崩落だ。誰もゼラニアや教会を疑わない」

「これで雨で地盤が飽和する。自然の崩落にしか見えないはずだ」

「皇太子妃は、明日の午後、この峠を通るのか?」

「ああ。役人の誘導通りにな」

密偵たちは薄い笑いを仕掛けた。

「イザベラ様の仰る通り。事故なら、誰もゼラニアを疑わねぇ」


翌日も視察は順調に続いた。

川沿いの風はまだ冬の匂いが残っていて少し肌寒い。

流れに沿って並ぶ工夫たちの声、木槌の乾いた音、土の湿気――デルミアの護岸工事は、春の到来を待たずに忙しさを増していた。

 

エルフリーデは川沿いの工事現場や仮設の資材置き場を回り、技師たちと真剣な顔で話し込む。

「この護岸は、次の雨季には間に合いそうですか?」

「ええ、妃殿下。人手と資材が予定通り届けば――」

エルフリーデは工事現場の労働者たちに向き直った。

「皆さんの働きが、川沿いの家々と子どもたちの命を守ります。どうか、お身体を大切にしながら力を貸してくださいね」

そんな彼女の姿に、周囲の目が柔らかくなる。

一部の者は「労働者の俺たちにも声をかけてくれるなんて……!」と囁き、別の者は単に「優しい方だ」と感嘆していた。

レオナルトはそんな声に耳を傾けながら、常に周囲を警戒していた。

「妃殿下。こちらがデルミア行政局の局長、サイラス・バーンです」

護衛騎士のテオの声に導かれ、振り向く。そこで足がほんのわずかに止まった。

その男は痩せても太ってもいない。色の抜けたような緑の外套。特に華美ではないが、妙に清潔な指先。けれどエルフリーデの視線を射抜いたのは、そんな外見ではない。


――目だ。


淡い茶色の瞳。けれど温度が、どこにもない。

「皇太子妃殿下をお迎えできるとは、デルミアの誉れにございます」

言葉は丁寧だ。声は低く滑らかで、耳に心地よさすらある。

なのに。

エルフリーデは一瞬、背中を指でなぞられたような感覚を覚えた。理由は分からない。ただ、肌の奥がひりつく。


「……本日は、どうか遠慮なくご覧ください。工事の表も裏も、お隠しするものはございませんので」


にこりと笑った瞬間の隙のなさに、ルッツが微かに体重を移す。剣を抜くでもなく、ただ足裏の感覚を変えるだけ。だがその動きは警戒を示すには十分だった。エルフリーデは河岸の補強材の継ぎ目を見て、首を傾げた。

「この区画……材が古いように見えます。昨年の改修の際の残材でしょうか?」

サイラスの表情が、一瞬だけ止まった。

ほんの呼吸一つ分。外からは気づけないほどの微細な変化。

「……妃殿下は鋭いお目をお持ちだ。はい、予算繰りが難航しており、一部は旧材の再利用で……」

声は穏やかだ。だが、言葉の端にわずかな“棘”が混じった。

……なぜ、この人……わたくしを、そんなに見て……?

説明のあいだずっと、サイラスの視線はエルフリーデの目から、頬、胸、足元へと流れるのではない。

動かないのだ。

まるで――何かを探すように。

その視線に、理由の分からない寒さが残った。

視察の終わり、レオナルトが低く囁く。

「……エル。さっきの行政局のあの男、気をつけた方がいい。何が、とはまだ言えないが……目が、気になる」

エルフリーデは何も言わなかった。

ただ川面を見る。

陽の光は優しいのに、胸のどこかが冷たかった。

 

夕刻、視察を終えて領主館に戻った時、デルミア役所から急ぎの書状が届けられる。

「来る時通った北側斜面が……昨夜の地割れで通行不可?」

その書状を見てレオナルトが眉をひそめる。ゲルトがすぐに地元の者数人を捕まえて確認していた。

「団長。そんな話は聞いたことがないと」

「だろうな」

そう短く返し、改めて書状を読み直した。工事主任の署名。領主代理の印。形式上は、何ひとつおかしなところはない。

しかし――どうにも胸騒ぎが収まらない。

(噂にも上らない地割れ。でも、あの道が元々危ういことも事実……)

彼は騎士団長としての経験則と、兄としての感情の間で、わずかに沈黙した。

「……情報の信頼度は五分五分、か」

テオが問う。

「どうされますか、団長」

「報告を無視して北を通り、そこで本当に崩落していたら――守れるはずの命を落とす。逆に、この書状が虚偽であったとしても、危険な可能性がある以上、避けるのが筋だ」

自分に言い聞かせるように言い、決断する。

「南側ルートに変更する。先鋒は俺が務める。何かあれば、すぐに引き返す時間は稼げる」

ゲルトは頷いた。

「妃殿下には私から申し上げます」

レオナルトはなおも胸の奥に残るざわめきを押し殺し、ただひとつの祈りを心に押し込めた。

(……どうか、ただの念のためで終わってくれ)

だが、大地はすでに音もなく限界へと近づいていた。


帰還の朝。空は鈍い灰色に覆われていた。

エルフリーデは馬車に乗り込む前に、デルミアの住民たちに向き直り、深く一礼する。

「短い滞在でしたが、皆様の暮らしの一端を見ることができました。これからも、帝都からできる限りの支援をお届けできるよう努めます」

孤児院長は感極まったように涙を拭きながら頭を下げ、

救護院の医師たちも胸に手を当てて感謝を示した。

その人混みの中。

レオナルトは、ふとひとりの老人の姿を目にする。


ボロ布をまとい、杖をついた白髪の老人。

その視線がエルフリーデに釘付けになったまま震えていた。

「……」

老人の唇が何かを形作った気がした。

だが、群衆のざわめきにかき消され、レオナルトの耳には届かない。

ただ、その痩せた手が震えながら空を掴むように伸び、

銀の髪を追っていた。

(――あれが、ゲルトの言っていた男か)

レオナルトは視線を向けていたが、式の進行上、近づく隙はない。次の瞬間、老人は群衆に紛れ、姿を消した。


その小さな影が、この先どれほど大きな波紋を生むのか、

誰もまだ、知らなかった。


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