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ある男に復讐をしようと悪魔召喚の儀式をした私の前に一匹の悪魔が姿を現した。魔法陣の真ん中に現れたそいつは黒い肌、足にはヤギの蹄、尖った爪に尻尾に羽。伝承の通りの、予想通りの姿ではあったのだが、一つだけ予想外のことがあった。その顔にニコニコと嬉しそうな表情を浮かべているのだ。
「いやいや。いやいやいや、あなたは実に運が良い! 私はいまとても気分がいいのです。特別大サービスで料金の魂は取らないであなたの願いを叶えましょう!」
その言葉に私は眉をひそめる。そんなうまい話があるはずがない。ましてや相手はあの悪魔だ。きっとなにか罠があるに決まっているのだ。上機嫌であるというのもなにか怪しい。
何度も何度もその悪魔と言葉を交わすが、しかし悪魔の主張は変わらない。魂を取らずに願いを叶えるというのだ。
私はしばらく悩んだが、しかしやがて願いを叶えてもらわずに彼を地獄へと送り返した。
どんな罠があるかも分からないのに契約を交わすのはさすがに怖かったのだ。
仕方ないが、復讐は自分の手でやるしかない。
地獄へと送り返された悪魔はつまらなさそうに口を尖らせると一人で呟いた。
「まったく、人間じゃないんだからそんな嘘なんて吐くわけないだろうに」