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プロローグ

 ――それは、まだアルヴェス帝国が滅びて久しくない時代のこと。

 この大地に、かつて一つの帝国が存在した。全土を統べ、豊かなる魔力の泉を持ち、技術と栄華の極みにあった黄金の時代。だが、ある日それは唐突に終焉を迎える。


 かつて大陸の中央にぽっかりと穿たれた“奈落の渦”。

 それは、古代戦争で用いられた「理外の禁呪」によって、大地そのものが穿たれ、空間が歪み、魔力が暴走を始めた場所である。そこにはもはや秩序はなく、ただ流れ続ける“魔”の奔流だけが存在した。


 帝国の記録では、「第四次錬精戦役」において、帝国軍と反逆軍との最終決戦のさなか、反逆者たちが制御不能の魔導術式を起動したとされる。

 術式の名は《永焉(カタリスト)(・オブ・)触媒(ルイン)》――世界に一つしか存在しなかった失伝の呪文。


 それを止めるために、皇帝は七人の高位導師とともに“封印”の儀式を行い、なんとか渦の拡大を止めることに成功した。だが、その代償はあまりに大きかった。皇帝と導師は肉体ごとその渦に呑まれ、帝都エル=アラグナは地図から消えた。


 それが“奈落の渦”の誕生であり、アルヴェス帝国滅亡の瞬間であった。


 その後、帝国は後継者を失い、四つの勢力に分裂する。


 アーレンク王国:かつての皇族血統を奉じ、伝統と礼節を重んじる騎士の国。


 イシューターヴ共和国:海を制し、工房ギルドによる「魔導工学」の革新に力を入れる商業国家。


 テュリア聖権国:神託に従い、厳格な神官階級によって治められる宗教国家。


 カラディア自由連合:複数の部族・民族が自然と精霊を敬いながら緩やかに結んだ共同体。


 それぞれの国が誓ったのは、「二度と封印を解いてはならない」という盟約。

 しかし――数百年の時を経て、“奈落の渦”が再び蠢き始める。


 各地では魔獣が増え、人が闇に堕ち、古代の禁忌に手を伸ばす者たちが現れた。

 彼らは“黒装束”と呼ばれ、封印技術や古代魔導器を密かに掘り起こし、世界を再び渦へと導こうとしていた。


 アーレンク王国の若き近衛騎士候補、レオナルト・アヴィネル。

 王命を受けた彼は、まだ何も知らぬまま旅に出る。

 ――だが、その旅の果てで彼が見出すものは、かつて帝国を滅ぼした“奈落”の真実であり、希望なき時代に灯される最後の光でもある。


「もう一度、この大地を守るために。

 魔獣や闇の勢力に立ち向かう光を、再び取り戻さなければ――」


 四つの国家と多彩な人々の思惑が交錯し、帝国の遺産をめぐる陰謀が今動き出す。

 それは、奈落の渦の底から生まれる絶望と、それを打ち消す新たな希望の物語。

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