第九作戦:資金盗難事件発生!疑われるパンドラと真実の犯人!
ようやく悪の組織の活動に力を入れる中、ある日、蝶々が報告を受けた。
「ちょ…ちょっと待って、どういうことだ…?」
予想外の出来事に動揺する蝶々。
蝶々が手に持った書類を見ながら呆れた声をあげる。
「え えっと…調達した資金が…なくなっているんです…」
アールが怯えた声で報告する。
どうやら、サーカスの公演で稼いだ大金が、いつの間にか消えていたらしい。
「な…なん、だと…?」
蝶々の怒りに気が付いたのかアールは悲鳴を上げ後退する。
それに気が付いた蝶々は冷静に状況を整理するため深呼吸をした。
「すまない…まず状況を整理する。アール。幹部たちを招集してくれ…
最優先だ」
「…は はいぃ」
数分後、怪人たちが会議室に集まり着席している。
「蝶々はん。ほ ほんまなんかぁ?集めた資金が無くなったって
話は…」
「あぁ…」
「ありえへん」と頭を抱えるアンカー。その隣にピエラが座っていて
ケンタ〇キーを咥えながら蝶々を見る。
「もぐもぐ…誰かが盗んだのだ?もぐもぐ…」
「分からない…ただ、あまりにも急に無くなったから、
幹部、誰かが盗んだって可能性もある…」
蝶々は目をひそめ腕を組むと幹部たちを一瞥する。
「幹部の中に犯人?…」
エルは「そんなのいる訳」と言い終わる前に、
怪しい目でパンドラを見つめている。
他の幹部たちも疑惑の目を浮かべる。もちろん蝶々も。
「…」
「パンドラ…あかんって。いくら何でも」
「最低ね…」
「ひどいと…思う…」
「ピエラちゃん、がっかりなのだ…」
蝶々たちがチラリとパンドラを見つめると、パンドラは驚いた顔で答える。
「ちょ ちょっと待って下さい…
わ わたくしじゃありませんわっ。濡れ衣ですっ。
確かに一人で組織にいた時は鳥子様の遺産を食いつぶしましたが…
こ 今回は違いますっ」
パンドラは言い訳をしながら、汗をかいていた。蝶々は疑念を持ちながら
調べることに決めた。
「なら部屋を調べるのは構わないな?もちろん私を含め…全員の部屋を
調べる」
パンドラ以外はすぐに了承するがパンドラだけ抵抗を見せる。
「え…えぇっ…そ それは…?」
全員で蝶々の部屋から調べ、最後にパンドラの部屋に向かう。
最後までしぶるパンドラを連れ、部屋のドアを開ける。
そこには信じられない光景が広がっていた。
パンドラの部屋は、高級な化粧品や服。
壁には蝶々の写真。そして蝶々の私物で埋め尽くされていた。
蝶々が無くしたと思っていた靴下や、下着…。
ドン引きの蝶々と幹部たち
「…おい、これは一体どういうことだ…?」
蝶々が声を震わせて問いかけると、パンドラは言い訳を始めた。
「いや、それはその…ちょっと、まあ、洗濯ものが混ざってしまっただけで
…えとっ…決して、蝶々様の私物に囲まれながら眠りたかったとか…
え~っと…え~っとっ…」
パンドラが必死に言い訳をするが、蝶々は冷静に指摘する。
「見ての通り、じゃない!
これ、盗んだんじゃないのか!?
この靴下なんてまだ、洗う前に無くしたものだぞ!」
蝶々が思わず怒りを爆発させると、パンドラは「あ~だから香しい匂い」と
そこで言葉をとめ一瞬固まった後、素直に両ひざをついて謝罪する。
「申し訳ございません!
け けれど、わたくしは盗んだわけではないのです!
あくまで『借りた』だけなのです!」
「…パンドラのお仕置きは後だ。とりあえず部屋を調べろ…」
パンドラの部屋を隅々まで探した蝶々たちだが、
結局お金は見つからなかった。
「…パンドラでもないとなると…一体だれが…」
「…うぅ…分かっていただけて何よりですわ…」
「蝶々!誰かいるわ!」
エルの声で普通の泥棒が隠れているのに気が付く。
その泥棒は、上から下まで全部黒色の不審な男だった。
「お前っここで何をして――!」
蝶々が驚きの声をあげると、泥棒は慌ててお金を持った袋を抱え直し走り出した。
「ちょっと待て!」
蝶々が声を上げ、後を追いかける。人間と怪人。身体能力の差で
すぐに泥棒は捕まる。
蝶々は泥棒をぐっとつかみ、無理矢理引き寄せた。
「私たちのアジトに侵入してただで帰れると思うな?」
「いや、すみませんでしたっ。盗んだ物は返しますから!
どうか命だけはっ⁉」
泥棒の目から涙と鼻水が垂れていく。
聞くところによると、泥棒に入って金を奪うことには成功したが
サンダーや猛獣たちが室内をうろつき出入口を
塞いでいたため出られなかったようだ。
相手は猛獣のため金の力は聞かないため、死の恐怖に怯え
あの室内に隠れていたようだ。
「何でもするか?それなら助けてやるが…」
泥棒が恐る恐るうなずくと、蝶々はアンカーに指示を出す。
「いいだろう…助けてやる。アンカー」
「おぉ?何や、蝶々はん」
耳をぴこんを動かし、アンカーは蝶々に歩み寄る。
蝶々を泥棒を見ながら命令する。
「こいつを調教して戦闘員にしてやれ
泥棒するくらいだ…戦闘員の素養は少しくらいありそうだ…」
「え?」
調教という単語を聞きアンカーが嬉しそうに答える。
「任せときぃ!こいつ、しっかり鍛え上げたるわぁっ!」
「さぁ、泥棒…生きたいなら必死にアンカーの調教に耐えることだな…」
「ひぃっ」
幹部たちが部屋を後にすると、アンカーは即座に泥棒を厳しくしごき始めた。
調教されている間、アンカーの笑い声と泥棒の悲鳴がアジトに響き渡った。
「終わったでぇ♪
思ったより簡単に調教できたわぁ。
ほら、ボスにしっかり挨拶せぇ♪」
「イィィっ‼」
顔も黒い布で覆われた泥棒が胸に拳を当て奇声を発する。
「本当に戦闘員になったのか?裏切りはないだろうな…?」
「もちろん。人間やから戦闘力は期待できへんけど、雑用なら完璧や。
それに記憶弄ってるから、こいつが捕まってもうちらの事は分からないって
寸法や♪」
ドヤぁと胸を張るアンカー。調教というより洗脳に近い能力に蝶々は舌を巻いた。
この能力は使えると。
「良くやったぞ。お前の能力はかなり使える。
よってお前を悪の組織戦闘員の調教係に任命する…
戦闘員たちを量産するんだ」
蝶々が指示すると、アンカーは「任せときぃ」と豪快にうなずいた。
「パンドラ…私物を盗んだ件。分かってるな?」
「分かっております」と反省の弁を述べる。
蝶々が考えたパンドラへのお仕置きとは、蝶々との1週間の接触禁止であった。
「そ そんな‼あ あんまりですわ⁉」
いつものように、殴られるだけと思っていたパンドラの顔が歪んでいく。
「蝶々様の匂いを嗅がないと、わたくし、わたくしぃ…」
泣いてももう遅いと、パンドラを自室に軟禁させ蝶々は自室に戻っていく。
それから1週間後、大いに反省したのか蝶々の私物が紛失することがなくなった。
しかし、反省をうながす効果的なお仕置きだったが、お仕置き後のパンドラが廃人のように
なってしまい使い物にならなくなってしまった。
そのためこのお仕置きをやめざるをえなかった。




