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第七十一作戦:怪人スカウト作戦始動


「さて……次の作戦について――それは戦力の拡大だ。」


不死鳥の羽の本部。幹部たちが集う会議室に、蝶々の凛とした声が響いた。テーブルを囲む怪人たちの視線が一斉に蝶々へと集まる。議題は「今後の戦力拡大」。いつも以上に会議室内の空気が張り詰めていた。


蝶々は鋭い目つきで場を見回しながら、冷静に口を開く。


「まずは現状を整理しましょう。」


その一言で、幹部たちのざわつきが収まり、全員の注意が完全に集中した。


「『バグズ』がこのまま静かでいるとは思えない。」


蝶々は背筋を伸ばし、低く落ち着いた声で言葉を紡ぐ。


「クロガネがまた昆虫怪人たちをかき集めて、また大群で押し寄せる可能性がある。それに奴は我々の動きと力を警戒しているはずだ。」


部屋に広がる緊張の色が濃くなる。蝶々の表情は厳しく、声には冷徹な分析が含まれていた。


「ヒーロー側は、マスク・ド・ドラゴンに加え、新たにマスク・ド・タイガーが加わった。これで連中の戦力はさらに増した。ここから先、マスク・ド・ドラゴンとの同盟を目指すのは現実的ではない。」


言葉に詰められた現実は、会議室にいる者たちの胸を重たくする。それでも、幹部たちは口を閉ざしたまま蝶々の話をじっと聞いていた。


「次の対策を急ぐぞ。」


蝶々は強い意思を込めて言い放ち、その鋭い視線を幹部たちに向けた。どこか冷たくも感じられる眼差しだったが、同時に彼女の中に燃える闘志を感じさせるものでもあった。


会議室内は重い沈黙と緊張に包まれていた。蝶々の鋭い言葉が静かに響き渡る中、ラルデュナが深く頷いて重々しい声を上げた。


「同感デス。バグズハ、我々ヲ脅威ト捉エテイルハズデス。次ノ襲撃ハ規模ガ更二大キクナルト考エテ間違イアリマセン。」


彼女の言葉は不気味な確信を伴い、幹部たちにさらなる緊張を与える。


そんな中、アンカーが椅子にもたれ、頭をかきながらため息をついた。


「うちの雑魚戦闘員たちだけであの昆虫怪人の群れを相手にするのは厳しいもんがあるで。戦力を増やさなあかんやろな。」


彼女の言葉に頷く者はいなかったが、同意が会議室に漂う。それを聞いたエルが勢いよく席から乗り出し、大きな声を張り上げる。


「アタシに任せなさいよ。きっちりあの虫ども潰してみせるんだから!」


だがその言葉に、アールは弱々しい声で控えめに反論する。


「…ボ、ボクはエルだけじゃ…無理だと思う…」


エルの視線がアールに向けられるが、彼は視線を避けるように目を伏せる。


その横で、ピエラは緊迫感とは無縁の様子で、手にしたチキンを頬張っていた。


「もぐもぐ♪…ん~うまうま♪」


「静かに…」


会議の緊張を一時的に中断させるような光景だったが、すぐに蝶々の発言が場を引き締める。


「蝶々様、新しい怪人をスカウトするのですね…?」


パンドラがいつもとは違う、真剣な表情で蝶々を見る。蝶々は静かに頷いた。


「あぁ。『スティングホーネット』が良い例だ。あいつのような中級、あるいは上級怪人を新たに仲間にする必要がある。」


その言葉に全員が無言で頷き、一致団結の空気を醸し出す。

蝶々は肘をついて幹部たちを見回しながら厳しい視線を向ける。

計画を具体的に進めるために、一つずつ言葉を整理するように冷静な態度を崩さなかった。


「今回の作戦は中級、もしくは上級の怪人を新たに仲間にすることだ。他に案がある奴はいるか……?」


蝶々が低く落ち着いた声で問いかけると、幹部たちの間で意見が飛び交い始めた。しかし、どの案も新鮮さに欠け、具体性が見えない。名前の挙がった怪人たちは、居場所が曖昧だったり、連絡が取れなかったりする者ばかりだった。


その時、不意に一つの声が上がった。


「あ、あのぉ……」


スティングホーネットが小さく控えめに手を挙げ、周囲を伺いながら口を開く。


「す、すみませんっス!俺っちが知ってる怪人なら協力してくれるかもっス!」


全員の視線が一気にスティングホーネットへと集中する。彼の表情には少しの緊張が滲むが、言葉を噛み締めながら続ける。


蝶々はその様子を興味深げに見つめ、少し身を乗り出して尋ねた。


「……お前の知り合い?それはどこにいるんだ……?」


「は、はいっス!俺っちと同じ町にいたっスけど、確か今は少し離れた町に移ったと聞いてるっス。腕は確かで強いっスよ!」


スティングホーネットの言葉が終わると同時に、ラルデュナが鋭い視線を向けた。


「オイ」


「は、はいっ……な、なんスかっ……ラルデュナの姐さんっ!」


ラルデュナは彼をじっと見つめ、冷たく正確な言葉を吐き出す。


「ソノ知リ合イ二、裏切リノ可能性ハアルカ?」


スティングホーネットはラルデュナの圧倒的な雰囲気に呑まれ、肩を震わせながら即座に否定する。


「そ、そんなことは絶対ないっス!そいつは誇り高くて、信頼できる怪人っス!」


ラルデュナは無言で彼を観察していたが、やがて緊張を緩める素振りを見せる。


「ふむ……良さそうだな……。」


そんなやり取りを見守っていた蝶々は少し考え込みながら、指でテーブルを軽く叩いた。短く響く音が、彼女の思考のリズムを表しているようだった。


「では、その怪人を説得して仲間に引き入れることを試みることにするか。」


蝶々の静かながら力強い声が会議室に響き、全員の視線が彼女に注がれる。


「スティングホーネット、お前が案内しろ。」


「は、はいっス!」


スティングホーネットが思わず勢いよく返事をし、その場で背筋を伸ばす。だが、蝶々の目が鋭く光ると、室内の空気が一段と引き締まった。


「ただし……」


蝶々の視線は冷徹そのもので、会議室の空間全体を飲み込むかのようだった。


「万が一、相手が何か企んでいる様子があれば、その場で対処する。いいな。」


「……了解っス。」


スティングホーネットは蝶々の鋭い言葉に若干の緊張をにじませながらも、しっかりとうなずいた。


蝶々は一息つくと、話を続けた。


「さて、私とスティングホーネット……あと1人、誰を連れて行くか……」


そう言いながら、彼女は会議室の幹部たちを一瞥した。その中で真っ先に声を上げたのはエルだった。


「アタシに任せなさい!アタシに掛かれば怪人なんて簡単に仲間に出来るから!」


その自信たっぷりな態度に対し、アールがおずおずと手を挙げる。


「エ、エルがスカウトに行ったら、相手に喧嘩売るだけになるんじゃないかな……」


アールの控えめな反論にエルは不満げな顔をして口を尖らせたが、蝶々はその判断に同意し、視線を他の幹部に移す。


「ピエラちゃん行くのだ♪ 食べ歩きなのだ♪」


ピエラが満面の笑みで答える一方、スティングホーネットが驚いた声を上げた。


「マジっスかっ! ピエラの姐さん行きましょうっス。ピエラの姐さんが行くならバグちゃんたちと一緒っスね!」


だが、蝶々は軽くため息をついて首を横に振った。


「……観光に行くんじゃない……あくまで怪人のスカウトだ……」


その次に手を挙げたのは、ラルデュナだった。


「主蝶々。 我ガ行キマス。向カッテ来ル敵ヲ殲滅シマショウ。」


鋭利な鎌を構えたラルデュナが名乗りを上げたが、蝶々は冷静に首を振る。


「……ラルデュナ……お前だと怪人を殺しにしかねない……ダメだな。」


僅かに肩を落としたラルデュナを横目に、パンドラが笑みを浮かべながら手を挙げた。


「蝶々様♥ わたくしが同行します♥ うふふ♥ 蜂付きですけど、新婚旅行と行きましょう♥いざ愛の新婚旅行へ♥」


蝶々は即答でその提案を却下する。


「却下だ。」


「あら、蝶々様……わたくしの時の拒否反応早いですわっ……で、でも、そんなところもわたくし……好き♥♥」


続けざまに名乗りを上げる幹部たちの中、アンカーが手を挙げた。


「うち行くで! 新しい怪人とか楽しみやん!」


その言葉に、蝶々は少し考え込むようにして、視線をアンカーへと向けた。


「アンカー、同行しろ。お前がいれば、多少問題のある相手でも圧倒できるはずだろう。」


アンカーは軽く手を振って答える。


「了解や!」


会議を締めくくると、蝶々たちは速やかに準備に取り掛かった。


スティングホーネットの知り合いをスカウトするため、遠く離れた町へ向かう。


だが、この行動が後に何を引き起こすのかは、まだ誰一人として知る由もなかった。






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