第五作戦:資金ゼロの悪の組織!?
アジトの会議室に集まった『不死鳥の羽』の面々。
スライム怪人。パンドラ・アンバランファス。
マンティコア怪人。ピエラ・キメラ・マルチコア。
ライオン怪人。アンカー・ライトニング。サンダー・ライトニング。
単眼怪人。エル&アール・スイッチチェンジ。
蝶々はサンダーに寄りかかりながら幹部たちを見る。
強者のオーラを放ち黙っていれば、美形の幹部たち。。
…黙っていれば…だが…。
「サンダーったら蝶々様に寄りかかって貰えて羨ましいですわ。
わたくしも蝶々様の肉布団。いいえ…スライム布団として
活躍したい♥♥」
「あむあむ♪…やっぱりケンタッキ〇はうまうまなのだ…
あむあむ♪
組織に戻ってよかったのだ♪」
「あぁ…あかん…はぁ…禁断症状や…
はぁ…人を尻尾でシバきまわしたいわぁ…
蝶々はんにお願いして縛ってもらうましょか?」
「ちょっっ…アール。それやめなさいよっ。
卑怯よ。麻痺ひるみは反則っ。アタシのモンスター
攻撃できないじゃないっ。クソゲーじゃないっ」
「えぇ…は 反則じゃないよ…これは
立派な戦略だから…公式でも使われるし…」
各々、好き勝手過ごす怪人たちを見た蝶々は
立ち上がり、勢いよく机を叩いた。
その音で、怪人たちは蝶々に視線を向け話を聞く体制に入る。
「…よし、これから『不死鳥の羽』を再始動させる!
世界征服の第一歩を――」
「…蝶々様…」
「何だパンドラ…」
「あの…その…実は…」
奥歯にものがはさまったような言い方に怪訝な顔を向ける。
はっきりと物をいう参謀的な役割のパンドラにしては珍しいと
幹部たちも蝶々と同じことを思っているようだ。
会議室が静まり返る。全員の視線がパンドラに集中した。彼女は椅子に深く座りながら、ゆるりと手を挙げた。
「…資金がありませんわ」
「…何を言ってる?おばあ様からの資産は十分にあるはずだ。
ピエラの食費に使ってると言っても、そんな早く資金が減るわけがないが…?」
そう言えばと、パンドラをじっと見る。組織にただ1人残ったパンドラ。
それぞれ、働いたり何かを貰って生活していた幹部たちはともかく
パンドラの生活費は誰が払ったのか…どこから払ったのか。
幹部たちから見つめられるパンドラの頬に汗が走る。
「…パンドラ…まさか…」
「も 申し訳ありません」
蝶々の眉がピクリと動く。
「何に使った?」
「…美味しいものを食べたり、素敵なお洋服を買ったり、美容グッズ…
マダム・フェニックス…鳥子様のグッズを少し…」
あぁっ⁉今後は蝶々様のグッズを買い集める予定ですわと
反省のないパンドラにあきれ果てる。
「っ⁉何してんのよ⁉アタシたちの生活費でもあるのよ⁉」
エルがテーブルを叩きながら声を上げた。
「信じられない!貯金がゼロってどうするのよ!」
「…うぅ…ボクたち…しゃ 借金生活?…
で でも…しょうがないんじゃない?使っちゃったものは…」
「しょうがないちゃうわっ。今後うちらはどないすんねん‼」
「んぅ?どうしたのだ?何か困りごとなのか?ピエラちゃん難しいこと
分からないのだ」
「毎日ケン〇ッキー生活はできなくなるって意味よっ」
「う 嘘なのだっ。ピエラちゃん。そ そんなの考えられないのだっ。
ちょー様どうするのだっ?」
蝶々はため息をつき、頭を抱えた。
「仕方ない……資金調達をするしかないな」
「資金調達って、具体的にどうすんのよ?」とエルが尋ねる。
「…強盗だ。我々は悪の組織。堂々と銀行を襲う。異論はあるか?」
蝶々がそう言うと、全員が「了解」と頷いた。
「……だ 誰が行くんですかボス?」とアールが不安げに尋ねた。
「もちろん、全員でだ」
人気のない銀行の裏で、幹部たちが集結する。
各々が不死鳥の羽時代に使っていた
仮面と衣装を身にまとい、蝶々も祖母から受け継いだ不死鳥の仮面をつける。
「この仮面をつけている間の私の名前はフェニックスだ。
分かったか」
了解と全員が頷き、蝶々はそれぞれに適格な指示を出す。
「ピエラ、入りしだい警備員を引きつけろ。襲ってきたら
倒して構わない。終わればご褒美だ」
「任せるなのだ!ピエラちゃん頑張るのだ!」
「アンカーとサンダー、エル、アールは一般人と銀行員の監視だ。
誰も外に出すな。
警察を呼ばせるな。生死は問わない」
「了解や」
「ぐるぅ」
「分かったわ」
「りょ…了解です。外に出ようとする人たち皆殺しします…」
「パンドラ、お前は……待機だ。下手に動くな」
「蝶々様の指示に従い傍を離れませんわ♥」
いや離れろと言ってもパンドラは蝶々のすぐ後ろに立ち
すんすんと鼻を鳴らす。
触らないセクハラとはまさにこのことだろう…。
「ぎゃおー!銀行強盗なのだ!大人しくするのだっ!」
突如、銀行に突入するピエラを見た人々は驚いたようだが
少女と分かった途端、笑い声が聞こえてくる。
「はは…お嬢ちゃん。冗談はそこまでだよ」
一人の警備員が笑いながらピエラの肩をポンと叩くが
警備員の笑いがそこで途絶えた。
顔には穴が開き、絶命していたからだ。
ピエラの体についている赤い玉が警備員の命を奪う。
赤い玉の正体は虫でありピエラの一部だ。
冗談だと思っていた人々は悲鳴を上げ逃げようと出口に向かう。
「逃げちゃダメよ」
「動かないでね」
「グルルゥっ!」
だがしかし、エル、アール、サンダーがそれを阻止し逃がさない。
1人が逃げようものならサンダーにより食い殺され、アールも
容赦のない一撃を食らわせてくる。
「…っ」
「おっと♪あかんあかんよぉ♪警察呼ぶなんて無粋やろ?」
銀行員が警察を呼ぼうとするが、
アンカーの鋭い眼光により銀行員の手がピタリと止まる。
「ええ子やなぁ♪
そのまま動かず、黙ってれば痛い目はあわんでぇ♪」
「…ひぃっ」
だから動くな言うとるやろと、長い尻尾を巧みに使い
銀行員のクビを捉える。
手加減していたからか、死ぬことはないが強烈な痛みで
ゴロゴロと転がる。
その姿にアンカーはご満悦だ。
一方、蝶々からの指示でパンドラは金庫室に向かっている。
強固なセキュリティで通常の人間なら入ることのできない場所だが
スライムの体により軽々と侵入できた。
「ふふ♪わたくしにかかれば余裕ですわ♪」
そして、スライムの体で機械のシステムをショートさせ
開けてしまう。
「フェニックス様♪やりましたわ♥」
予想以上の出来に蝶々はパンドラを見直す。
軽く褒めてやるとパンドラは喜々として金品を袋に詰めていく。
「成功だ。逃げるぞっ」
スムーズに事が進み逃げようとする。
だが、外にはすでに警察が待ち構えていた。
思っていたより日本の警察は優秀のようで蝶々の額に汗が滲む。
「動くな!撃つぞ!」と警察が叫ぶ中、パンドラが悠然と前に進む。
「フェニックス様、私にお任せをっ」
スライムの体を広げ、警察官たちを包み込み拘束していく。
動くことのできない警察官は混乱を引き起こし、蝶々たちは逃げきることに
成功した。
逃げ切った蝶々たちは、アジトで山積みの札束を前にして歓声を上げた。
「これで当面の資金は確保したな…」
「中々楽しかったのだっ」
「ほんまになぁ。久しぶりに人をシバけて楽しかったわぁ」
「アタシのおかげね」
「…ボ ボクも頑張ってたよ…エルは何もしてないじゃない…」
「蝶々様、私のおかげですわね♥だからご褒美を
頂きたいですわ♥」とパンドラが言うが、全員が無視をする。