第三十三作戦:敵は増えるばかり
幹部たちがパワーアップについて無駄に白熱した議論を繰り広げられていた頃、街のはずれの港では、マスク・ド・ドラゴンこと竜面寺たつみの戦いが始まろうとしていた。
ぬめるような音が響き、海から巨大な触手を持つ怪人が現れる。
「私の名前は…タコ型怪人。オクトパーフェクト!恐れおののけ!人間ども!」
長くぬめる触手が貨物クレーンを簡単にへし折り、地面に叩きつける。港の作業員たちは一目散に逃げ出した。
「フハハハハ…抵抗するならば全員海の底だぞ!」
だが、その混乱を切り裂くように現れたのが、赤と金のアーマーを纏う
竜の仮面ヒーロー。マスク・ド・ドラゴンだった
「あなたの悪事もここまでよ!観念しなさいっ!」
オクトパーフェクトは一瞬、気を取られたが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。
「…貴様見たことがあるぞ…?たしか、マスク・ド・ドラゴンだったか…?面白い。その強さを見せてもらおうか!」
オクトパーフェクトが触手を鞭のように振り回し、たつみに向かって撃ち放つ。
触手は空を切り裂く勢いで迫り来るが、たつみは鋭い動きでそれをかわしていく。
触手の攻撃から距離を取り、敵を見据えるたつみ。
本来ならタコ怪人とたつみの1対1だろう。
しかし、いつものように敵と戦うだけではなかった。
彼女を悩ませている、新たな「第二の敵」の存在だ。
「ドラゴンちゃんがんばれー!」
「がんばれー!写真撮らせてー!」
「揺れる心っ!最高でござるなぁっ!」
「「おっぱいおっぱい!」」
「…うぅ…どこから…来るの…この人たち…」
マスク・ド・ドラゴンのファンクラブが結成され、日々拡大していたのだ。しかもその裏には、不死鳥の羽の一部(表向き)たちが暗躍していたとも知らずに…。
「ふっ。何やらうるさいギャラリーだな…だが、なるほど。
動きは悪くないな!…なら、これでどうだ!」
オクトパーフェクトはさらに触手を増やし、四方八方から攻撃を仕掛けてきた。
触手はまるで意思を持つ生き物のようにたつみを捉えようとする。
「くっ、このしぶとい触手…!きもちわるいっ…っ…しまっ…きゃぁっ!」
たつみは懸命に触手をかわしながらも、いくつかは直撃を受けてしまう。その攻撃は力強く、彼女は地面に叩きつけられた。
「どうした、マスク・ド・ドラゴン!その程度で私を止めるつもりか?」
「くっ…ぬるぬるっ」
ファンクラブのメンバーたちは触手につかまったたつみを見てヒートアップしていく。
「やばい、触手プレイだ!」
「R系の話じゃないけどっ!いいのかっ!」
「動画撮影の用意しろ!今すぐだ!」
「そ、そんな実況しなくていいから!…くぅっ…っ」
たつみは叫びつつ、触手から抜け出そうと体をひねる。
ひねることで、隙間が出来てたことえ抜け出すことに成功した。
「ちっ…逃げたか…」
「ふぅっ…はぁっ!」
立ち上がったたつみの両手に、炎が灯る。
彼女は拳を振り上げ、オクトパーフェクトに向かって突進する。
たつみの炎に包まれた拳がオクトパーフェクトの体に直撃した。
だが、触手のぬめりで大きなダメージにはならなかった。
「ぐっ…ふっ…炎なんてな、海の生物には通じないんだよ!」
オクトパーフェクトは挑発するように笑い、再び触手を繰り出した。
「っ!?ちょっと、触手が多すぎ…!(…海の生き物…でも炎が効かないってことはない…っ)」
「がんばれっ!」
「避けるでござるよっ」
ファンクラブの声援が、応援なのか妨害なのかわからなくなりながらも、たつみはなんとか反撃の機会を伺うため、触手を弾き落とす。
たつみはそのまま全力で接近戦を仕掛ける。だがオクトパーフェクトの遠距離攻撃はなおも優勢だった。触手は容赦なく、再びたつみを叩きのめした。
「きゃっ!くぅっ…はあぁっ!」
オクトパーフェクトの触手の一本がたつみによって切り落とされ、「ギャアアア!」と悶絶する怪人。それを見たファンクラブのメンバーたちは拍手喝采。
「マスク・ド・ドラゴン!すごい!」
「かっこいいぞ!」
「グッドおっぱいっ!」
「…ぐっ…なめるなぁっ!」
切り落とされた触手が再生すると、オクトパーフェクトはマスク・ド・ドラゴンを見据えながら言い放つ。
「諦めろ、マスク・ド・ドラゴン!貴様の動きはもう読めた!」
「…そのセリフ、そっくりそのままお返ししてあげるっ!」
たつみはわずかな隙間から目を凝らして怪人の攻撃パターンを解析していた。
そして、自分の炎を纏った足に全ての力を注ぎ込む準備をしていた。
「ここで…終わらせるっ!」
オクトパーフェクトは全ての触手をたつみに向かって集中させる。
しかし、その隙をぬって彼女は低く身を屈め、最大のスピードで接近し、飛び蹴りの体勢に入る。
「はぁぁぁぁぁ!」
「なんだと…速い!」
『ドラゴン・キックうぅっ!!』
「ぐはぁぁぁ……私が完全な……触手が……敗れるとは……ぐああああぁっ!!」
怪人が反応する前に、炎のエネルギーを纏った足がその胸元に炸裂した。
炎が怪人を包み込み、大きな爆発音が港に響く
「「「うおおぉぉぉっ!!!」」」
歓喜の渦に包まれる中、たつみは、振り返ってファンクラブに向かって口を開く。
「…今日はこの辺で解散!写真、ネットにあげないでね!」
彼女の言葉に応じて、ファンクラブのメンバーは渋々ながらも解散した。
しかし、その場に残された写真がすでにSNSで拡散されることを、彼女はまだ知らない。
―――
一方、不死鳥の羽の首領・蝶々と幹部のパンドラは、ビルの屋上からその光景を眺めていた。
「終わったな…」
「ふふふ。マスク・ド・ドラゴンも随分大変そうですわね。ファンクラブに振り回されるなんて。」
パンドラが笑いながら言う。
「…思った以上だな…マスク・ド・ドラゴンのファンクラブを作る作戦は…」
「えぇ…♪まだ、顔は分からないようですが…マスク・ド・ドラゴンの正体も
時間の問題かもしれませんわ」
「油断はするな…私たちもの正体も迫られている…」
警察のスパイからの情報を経て、ヴァリアントサーカス団がいまだ疑われている。
蝶々はマスク・ド・ドラゴンに目を向けたままパンドラに釘を差す。
「はい。承知しております…♪」




