第三作戦:お仕置き希望!?SMクラブからの幹部奪還作戦
ピエラをアジトに連れ帰った蝶々は、次なるターゲットである
アンカー&サンダー姉弟の情報を確認していた。
彼らの現在地は「繁華街の地下にあるSMクラブ『鞭と鞭』」とのこと。
蝶々はため息をつく。
「なんで悪の幹部がSMクラブなんかで働いてるんだ……と
思ったが…悪の幹部としては…正しい…のか?」
「蝶々様、アンカー・ライトニングは昔からドSの性格で
『鞭の女王』として有名でしたわ
彼女の鞭捌きは絶品で一度浴びたら虜になるとか」
隣でパンドラがニヤニヤと笑いながら補足する。
蝶々は軽く頭を押さえた。
「チキンの好きなピエラはケンタッキーで働いて
ドSのアンカー・ライトニングはSMクラブで働く。
…趣味の延長みたいな奴ばっかだな…」
「蝶々様。着きましたわ」
しばらく歩くと、ようやく目的地に到着しパンドラの声で
立ち止まる。
「「「ふぅぅぅぅっ!!」」」
繁華街の地下にある薄暗い店に入ると、耳をつんざくような音楽と歓声が響いてきた。
中央のステージでは、金髪のサイドテールに獣耳。キツネを思わせるような
細い目をしたアンカー・ライトニングが長い長い尻尾をしならせ、観客を支配している。
ライオンでありアンカーの弟でもある
サンダー・ライトニングはアンカーの後ろで横になり眠っていた。
「さあ、豚どもぉ!
もっと這いつくばりぃっ!うちの尾(鞭)でシバかれたいならなぁ!」
その鋭い声に、観客たちは歓声を上げて服従のポーズを取る。
「ぶひぃと豚の鳴き声でお願いしぃや!」
「「「ぶぃぃっ!!」」
異質な光景に蝶々は額に手を当て、深呼吸した。
「なんだこれは……」
「流石は数々の戦闘員を調教してきた
調教師のアンカー…素晴らしい統率力ですわっ」
人が大勢いる中、アンカーに接触するわけにもいかない
蝶々はショーが終わるまで待っていた。
「今日のショーは終いや!
また打たれたくなった豚どもは、この店に金落としぃ!」
大歓声を浴びたアンカーは、サンダーを連れステージを後にする。
「気が乗らないが、アンカーを連れ戻すか…」
アンカーのいる控室に向かう途中、屈強な係員に止められたが
パンドラと蝶々の前には無力のようで軽々と地面に潰される。
蝶々はノックもせず、アンカーのいる控室に入ってアンカーに
声を掛けた。
「初めましてだな。ライトニング姉弟」
「久しぶりね…アンカー、サンダー」
「ぐるるぅっ…」
「ん?何や?うちの控室にノックもせぇへん不躾モンはぁ?
パンドラ…?それと…」
「私は伏見蝶々…不死鳥の羽の新しい首領と言えば…分かるか?」
「パンドラ…そして伏見…」
なるほどなぁと片目がキッと開かれる。猛獣を思わせる切れ長の鋭い眼光。
普通の人間なら恐怖に震えるが蝶々にはまったく通じていない。
「…それで、新しいボスのあんたがうちに何の用や?
まさか、うちのショーに惚れて鞭でシバかれたいんか?」
「それは遠慮しておく…
単刀直入に言おう…不死鳥の羽に戻れ」
アンカーは蝶々を見てニヤリと笑うと尻尾を軽く振り、
挑発するような目つきで言った。
「嫌だと言ったらどないする?」
「力づくで従わせて連れて帰るが?」
「ふーん。面白いやないか…サンダー。
あんたの力で叩き潰してお家に帰してやりぃっ!」
「…ぐるるぅっ」
尻尾を床に叩くと、それに反応してサンダーがうなり声をあげ
蝶々を見据える。
猛獣を前にしても蝶々は微動だにせず、サンダーを見つめ返す。
しばしの膠着状態の中先に動いたのは蝶々だった。
「…お手…」
「…」
中腰で蝶々がサンダーの前に手を出す。サンダーは何の躊躇もなく
蝶々の手に自分の手を乗せる。
「お~よしよし」
「ごろごろごろぉ♪」
あ~わたくしもして欲しいですわとパンドラが腰をくねらせているのを
蝶々は無視してサンダーを撫でまわす。
サンダーはねこなで声をあげ床に倒れお腹を見せると嬉しそうに
身をよじらせる。
「ちょっ⁉サンダーなにしてんねんっ⁉戦いっや⁉
しかも、何でお手で反応するんねんっ。お前ネコ科やろっ⁉」
「ぐるぅ…」
「な…何やて?
俺じゃボスの相手にならないから降伏するって?」
「ふふ。いつかペットを飼ってみたいと思っていた所だ。
さて…お前はどうする?アンカー?」
「はっ♪うちは弟みたいに甘くないで?
うちを従わせられるか試してみぃや。
うち、ちょっとやそっとじゃ屈服せえへんで?」
「お前、本気で言ってるのか?」
「もちろんや」
やれやれと額に頭を当てると、
蝶々はため息をつき、冷たい目でアンカーを見る。
「さあ、かかってき――ぐぬっ!」
次の瞬間、蝶々の拳がアンカーの腹に炸裂した。
手から尻尾が離れると、蝶々はアンカーの尻尾で素早く
締め上げる。
「痛っ、痛ぁっ!ちょっ…待て待ってぇやっ⁉
うちが攻撃する前にやる何て反則やっ」
「反則?何を言ってる。お前がそうしろって言ったんだろう?」
「くぅ…そうやけど…
中々やるやないか…蝶々はんって言いましたな。
分かりましたわぁ。あんたに従いますわぁ」
「分かった」
アンカーを解放するとアンカーは膝をつけ蝶々に頭をさげる。
「改めてうちはアンカー・ライトニング。
あれはサンダー・ライトニング。うちら姉弟。
不死鳥に羽に戻らせてもらいますわぁ
ほんま、先ほどの無礼。すんませんなぁ…」
「それは別にいいが」
「いや…あかんっ。戻る前とは言え
首領に歯向かったんやケジメはつけなあかん…
だから蝶々はん。うちを締め上げてお仕置きしてくれへん?」
「……何?」
「はぁ…はぁ…こんなん初めてや…
うち…しばくだけで、シバかれたことなんてなかったんやけど
…あかん…はぁ…癖になりそうや…はぁ…」
「……」
蝶々様。お仕置きならわたくしにと口を開いたパンドラの
頭を吹き飛ばし、アンカーを見る。
アンカーの目は輝いていた。完全にMに目覚めた瞬間だった。
「蝶々はん。SM嬢に興味あらへん?
もちろん、S役や。蝶々はんならごっつ人気のSM嬢に
なるんとちゃいますかぁ?
うち、練習台になりますわぁ」
「蝶々様♥わたくし。わたくしめにお仕置きを♥」
「まともな奴はいないのか…」
蝶々は深い溜息をつきながら、次のターゲットへと思いを巡らせる。