第十六作戦:カオスな悪事
不死鳥の羽の幹部たちは蝶々の指示のもと、それぞれの作戦を実行に移していた。
しかし、悪事も一筋縄ではいかない。
スライム怪人のパンドラは人間形態で美しいドレスに身を包み、高級車から颯爽と
降り立った。
パンドラが高級車から降りると、辺りがざわつく。
それもそのはずだ。
パンドラの美貌は世界一クラスと言っても良い。
少し笑いかけただけで、ほとんどの男は彼女に釘付けだろう。
会場の外にいる男たちは隣に彼女がいるはずなのに
パンドラを見つめ顔を赤くして立ち止まっている。
「ふふ…(わたくしの魅力を前にすれば、誰も抗えないですわ。
この仕事を早めに切り上げて蝶々様からご褒美を貰わなくては♥)」
パンドラの目標は街の名士である彼らを虜にし、宝石の情報と
不死鳥の羽の資金源にするのが目的だった。
「さて…行きますわ♪」
そう意気込んでチャリティーパーティ会場に入ったパンドラ。
しかし、彼女に何か話しかけようとするたびに、出席者たちは距離を取る。
「…お、おかしいですわ…わたくしの美貌に惹かれない男など
いないはず…」
「お、お前イケよ…」
「いや…流石に無理だって…美しすぎる…」
「あんな美人な女性に話しかける勇気何てでませんね」
パンドラの魅力は間違いない。
ただ、一つ誤算があるとすれば美しすぎるのだ。
芸術品とも言われれば信じるであろうパンドラの容姿。
そんな美しい彼女に話しかけられるのは相当な容姿の持ち主か…
「マサルちゃん…気に入ったのでしょう。あなたはイケメンなのだから
行ってきなさい」
「う うん。僕頑張るよ」
「こ こんにちは」とパンドラに話しかける一人の男。
「…はい(え…ゴブリンかしら…?)」
パンドラが怪物と見紛う存在。
「き 君も運が良いね…僕と付き合うことができるんだから♪」
「はぁ…?」
この男のような…よほどのバカである。
相手が如何に醜かろうが、パンドラは仕事をするだけだと。
心に誓い…その男に向き直る。
だが、しかし…その仕事は白紙に代わる。
「ね、ねぇ…見た?あの人、どこかで見た気がするんだけど…」
「あ~…うん。私も見覚えてあるわ…」
「そう、そうよ。ヴァリアントサーカス団の綱渡りの人じゃない?」
「あぁ、思い出した!昨日、女の子の服の匂い嗅いでて危ない人だって
思ってたんだっ⁉」
「あたしも見た。はぁはぁ…鼻息荒くてドン引きしちゃったよ」
出席者のざわめきを聞き、パンドラは笑顔を保ちつつ、内心では激怒していた。
「(このメス豚どもっ⁉何てこと言いますの⁉折角立てた計画がぱぁっですわっ⁉)
こほんこほん…あ、あら?わたくしに何――」
「マサルちゃんっ⁉そんな女に近づいたダメよ‼
汚らわしいわっ‼」
「あぁっ…ママっ…‼」
心を整え、いざターゲットを堕とそうとするが母親の登場で失敗に終わる。
「………」
結局、計画は大きな成果を得られずに終わった。
「「「イィィッ!!」」
一方、アンカーは戦闘員たちの調教をしていた。
戦闘員たちは、アンカーの厳しい指導に汗を流していたが、
その声はやたら大きかった。
「おらおら♪豚ども!もっと声出さんかい!
正義のヒーロー相手に勝つ気あるんかいなぁ!」
「「「イィィッ!!」」
「せや!魂を燃やすんや!蝶々はんのために死ぬ気できばりぃっ!」
「「「イィィッ!!」」
「ごめんなさいね。警察です」
大きい奇声に困惑したのか近所の住民が、即座に警察に通報されてしまた。
「…なんや?警察はんやないかい。事件かいな?」
突然、背後から声を掛けられびっくりたアンカーだったが、
一般人を装う警察官に対応する。
「いや…ね。近所の方々から奇声の苦情が来ましてね…
ここで何してるんですか?」
「何って警察はん。ここはサーカスやで?
そんなのサーカスの演技指導に決まっとるやないですか。
そうやろ!お前ら!」
「「「イィィッ!!」」
「うん…そうですか…まぁ、周りに迷惑をかけない範囲でお願いしますよ」
「すんまへんっ…次から気を付けますわぁ…」
「まったく…僕たちはそんな暇ではないというのに…」と
警官たちは首をかしげながらも、それ以上は追及しなかった。
「…ふぅ…この緊迫感…結構好きやわぁ…」
しかし、住民たちからの苦情が相次ぎ、次回から調教方法を変更する羽目になった。
エルはソファでくつろぎながらタブレットで漫画を読んでいる。
一方、アールはテーブルに並べた薬品に必死に取り組んでいる。
「ふふ。あはは♪この漫画、おもしろ♪
蝶々も中々センスあるじゃない♪」
「えっと…よし…これを混ぜてっと…」
「面白かった♪…アール、今どんな感じ。うまく出来てる?」
「…うん。今のところは…ただ、死なない程度の毒薬って作るの
難しいよ…」
「また…裏手のホームレスで実験すれば?」
「…う、うん。そのつもり…」
「何か手伝うわよ…?この漫画の続きまだ来月発売だし」
「え?い、いいよ。エルが手伝ったらめちゃくちゃになるから…」
「何よ!このアタシが手伝ってあげるって言うのっ」
タブレットをテーブルに置くと、薬品に手を取るがそれをアールが阻止する。
「…ダメだってっ」
「少しくらいいいじゃないっ…っ…あっ‼」
エルとアール。2人で薬品を取り合っているとエルの肘がビーカーを
倒してしまう。
そのビーカーが倒れた先にはエルが蝶々から借りたタブレットがあり
薬品がタブレットを包み込む。
「エル…こ、これ…ボスのっ…」
「……だ、大丈夫よ。薬品がかかったくらいじゃ…
こ、壊れるわけ…ない、じゃ…ない?」
冷静を装い、エルは電源ボタンを押す。
しかし、タブレットはうんともすんとも言わない。
「「……ああぁぁっ⁉」」
エル&アールはの体は震え、アジト内に悲鳴が響き渡った。
ピエラは特に蝶々に指示を受けなかったため、アジト周辺で食べ物を
探していた。
「…お腹空いたのだ…」
蝶々から支給されたケンタッ〇ーを早々に食べつくしたピエラは
お腹をぐるぐると鳴らし、指を咥え辺りを見渡すとゴミ箱を見つけ出す。
「これ、いけそうなのだ!」
ピエラがゴミ箱を開けると、中からは匂いだけで強烈な刺激を与える残飯が。
彼女は一口かじるが、すぐに吐き出す。
「うぇっ…腐ってるのだ…」
結局、お金もなく食べ物も見つからなかったピエラはサーカス内に
戻っていた。
「うーん…今日はホームレスいないのだ…ん?」
「ニャ~♪」
「…非常食なのだっ♪」
「ニャ⁉」
非常食であるホームレスがいると期待してたピエラだったが残念ながら
不在だった。
けれど、代わりの野良猫を発見するとピエラの目が変わった。
猫もまさか自分が食べられる側になると思わず、驚きの声を上げ
逃げようとする。
人間相手なら逃げきれただろう。しかし、ピエラは人ではない。
野良猫は逃げる間もなくピエラに捕獲される。
「猫肉…初めてなのだ…じゅる♪」
猫を見るピエラの目は輝き口の端から涎をだらだらと流す。
「いただきま――」
「こらこら!何しとんねん!」
ピエラの歯が野良猫を捉えることなく、アンカーの尻尾によって救出された。
「ん?アンカー…?何で非常食取り上げるのだ?」
「アホ!非常食ちゃうわ!こいつは、生まれたばかりのサーカスの猛獣の子や!
商売道具を食べようとすなっ!」
「…?良く分からないけど…食べちゃダメなのか?」
「当たり前や。腹減ってるなら、うちが何か買うてきたるからまっとれ!」
「ほ、本当か!頼むのだアンカー!」
蝶々は幹部たちの報告を聞き終えると、深いため息をついた。
「思う通りには…いかないか…」
しかし、彼女は幹部たちが持つ個性とポテンシャルを認め、次の計画を練る決意を新たにする。
果たして、不死鳥の羽はこの調子で本当に世界征服に近づけるのだろうか。




