第十五作戦:悪の頂点を目指して
この物語はフィクションです。
実在する団体・地名、人物、事件など一切関係ありません。
アジトの会議室には、いつものパンドラを筆頭の幹部たちと
蝶々が集まり、新たな作戦会議が始まっていた。
いつものように、蝶々が静かに目を閉じ、話し始める。
「さて…全員揃ったな。
次の一手を考える前に…改めて確認しよう。
我々『不死鳥の羽』の目標は世界征服と、日本のどこかに隠されているという
手中に収めた者は絶大な力を得られるとされる宝石を入手することだ」
パンドラたちは蝶々の言葉に耳をしっかりと傾け頷く。
「私たちは、そのために全力で動く。何か案があれば
口を開くことを許可する…」
「蝶々様…まずはわたくしが…」
パンドラがすっと立ち上がり、妖艶な微笑を浮かべながら蝶々に顔を向ける。
「チャリティーパーティを開催し、地元の名士や有力者を招待する手はずを整えましたわ。
その方々をわたくしの魅力で虜にし、噂の宝石の情報収集。それと
組織の資金源として取り込むのです。」
「…ん?」
いつものようにふざけるのかと思った蝶々はパンドラをじっと見る。
「どうかなさいましたか?」
「…いや…今日は随分まじめだと思って…」
蝶々と同じだったのか、アンカーたち幹部がうんうんと頷く。
「ひ ひどいですわっ…蝶々様っ。
仮にもわたくしは鳥子様の参謀だった幹部です。
真面目に仕事することだってありますわっ!」
「…あ…すまない。それで、自信はあるのか?」
「…もちろんですわ♪わたくしの美貌にかかれば数秒で終わらせますっ!」
「そうか…ご苦労」
次にアンカーに話を振ろうとすると、パンドラが蝶々にすり寄ると耳元で囁く。
「わたくしが男に汚されることが心配なのですね…
ですが、安心して下さい蝶々様♥下賤で汚らわしい
男どもにはわたくしの体に指一本触らせませんわ♥
蝶々様のイチモツを受け入れるま――ーっ」
パンドラの横から蝶々は鋭い一撃を放つ。
放たれた拳はパンドラの頭を吹き飛ばし体がゴロゴロと転がる。
「だから何度言わせる。私は女だ…」
「はぁ♥分かってますわ…♥はぁ♥やはり…1日1回は蝶々様の愛を受けないと
ダメですわね…♥♥」
「…はぁ…誰でも良い…案はあるか?」
「蝶々はん。次はうちの話きいてぇなっ!」
アンカーが元気よく立ち上がると、胸を張って提案を始める。
「戦闘員、増えてきたやろ?
でもまだまだ力不足や。そこで!うちが特訓プランを作ったんや!」
アンカーが書類を渡すと蝶々は、プランに目を通す。
『地獄の飴と鞭。1日10時間の特訓メニュー』と書かれた紙には
戦闘員たちが泣き叫ぶイラストまで添えられている。
「10時間の特訓…」
「そうや!基礎体力から精神力まで全部鍛えたら、最高の戦闘員になるやろ!」
「戦闘員が強ければ、いろいろなプランに使えるな。
最悪捨て駒として使えば良い」
「せやせや、もちろん捕まった時を考えて捕まったら記憶が消える細工もするで!」
「…過酷すぎて逃げ出す心配は?」
「そこは大丈夫や。まず忠誠心をしっかり植えつけてから調教に
入るから蝶々はんは心配せんでええよぉ!」
「分かった。その件はアンカー…お前にまかせる」
アンカーのやる気を尊重することにした。
「アタシたちの番ね!」
エルが勢いよく立ち上がり、続けてアールもそっと立ち上がる。
「や 、やっぱり人間が多すぎると思うんだ…歩いてると
本当に…邪魔だし…」
「そこで、よ!…ジャーン!」
エルがビンを取り出す。その中には青色の小さい玉が詰め込まれていた。
「飴のように見えるこれ…アールが自作した毒薬なの♪」
「…へへ…意外と簡単だったよ…色々試したから…じ 自信作です」
「舐めてから数秒であの世に行けるって代物♪これを町のやつらに
無料で配るの。
無料と聞けばあいつら…絶対食べるわ♪」
「あ、悪の組織の邪魔をする人たちは…消さないとね…えっと…
ボクたちの作戦にはアンカーの協力が必要なんだけど…」
「ん?何か、うちに出来ることなら協力するでぇ?」
「数人の戦闘員にこの飴を配らせて欲しいんだ…できたら家族いない人たち
…証拠隠滅…楽だし…」
「うちは、蝶々はんが許可すればええけど?」
「…いや…その計画は賛成できないな」
「え?何でよっ!世界征服するために邪魔者は排除するべきじゃない?」
エルの陰に隠れアールも頷くが、パンドラも蝶々の意図に気付いてか
口を挟む。
「確かに邪魔者を排除するには正攻法かもしれないわ。
でも、わたくしたちがするのは世界征服であり、人類滅亡ではないわ。
それは分かるかしら?」
エルとアールはうんと頷くとパンドラは言葉を続ける。
「それに人類を滅亡させたらインフラは誰がするの?人類が減れば
たちまち世界は滅亡よ?」
「その通りだ。だからその案は却下だ。ただ、面白い…毒を改良したものが
あったり良いかもしれないな…」
「えぇ、分かったわ」「…分かりました」
エルは渋々だが、アールに関してはしっかり理解したのか蝶々の言葉に
頷くと「お腹が少し壊れるくらいに調整します」とメモ帳を取り出した。
「…ピエラ…何かある――ー?」
「あー…ん♪ぱく♪ん~♪」
「…ピエラ…何を食べている?」
最後にピエラに視線を向ける。そこには青い飴玉(毒)を口に含むピエラの
姿だった。
「そこにあった飴なのだっ。
…ん~なんか苦いのだ…この飴…おいしくないのだ…」
「何食べてんのよっ⁉」
「あ…あわわ…ピエラ…吐き出してっ」
「ピエラ。ぺっせぇ⁉ぺぇっ⁉」
「ん…ぺっ…こんなの飴じゃないのだっ」
エルの言葉が本当ならピエラはすでにこの世にはいないのが、
飴を吐き出した後も平然としている。
「ピエラ…調子はどうだ?」
「調子?すごく良いのだ!」
「蝶々様…どうやら大丈夫なようですわ…」
「どんな胃袋してんのよっ」
「え…えぇ…ボ ボクの毒が効かない…ちょっとショックかも…」
「ま、まぁ…無事ならええやろ…エル。はようその飴ちゃん捨てぇっ」
「分かったわよっ」
エルはアールと共に、毒が入った瓶を早急に処理しに向かう。
「ピエラ…何か案はあるか?」
「餡?ちょー様、餡はどこにあるのだっ。
飴苦かったからピエラちゃんアンコ食べたいのだ!」
たい焼き、大判焼き、だいふくとピエラはランランとした目で
蝶々を見ている。
「蝶々はん。うち買い物行くし買ってくるでぇ」
「…頼む」
「了解や!」
アンカーが買い出しに出かけ、蝶々は頭を抱え呟く。
「まぁ…ピエラが動くと正体がバレる可能性があるし、
下手に動かれるよりマシか…」
名案とトラブルがある中、作戦会議は終了した。




