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第十三作戦:揺れる正義、揺れない悪

アジトに戻った蝶々たちは、それぞれの作戦を練り直していた――が、実際には練り直しどころか会議室に響くのは、まとまりのない雑談と

笑い声ばかりだった。


「蝶々様の新衣装ならこれよ!

見なさい。黒を基調にしたゴシックロリータ。

黒がイメージカラーの蝶々様にぴったりよ♥」


「甘い…甘いでぇパンドラ。蝶々はんに似合う服はセクシーな

ボンテージやろ。

蝶々はんのドSの性格にはぴったりやでぇ。さらに鞭を持たせたらポイント

アップや。どや」


「く…鞭…そのアイテムは卑怯ですわ♥で でも想像しなさい。

ゴシックロリータを恥ずかしそうに着る蝶々様をっ…いいと思わない…?」


「な なんやとっ…た 確かに…羞恥心を抱く蝶々はん…良いやないかっ」


「でしょ?」


パンドラとアンカーは、蝶々の新衣装を(勝手に)決めるために

熱い談議を…


「もぐもぐ♪ケンタッ〇ーも良いけど…ファミキ〇もたまにはいいのだ♪

次は…どこのチキン食べようか迷うのだ…

うーん…でも、骨があった方が食べ応えはあるのだ…もぐもぐ」


ピエラは新しいチキンの開拓を…


「…ふふ…よっっ…」


「くぅっ。こ こら逃げるじゃないわっ…あぁっもうっ。攻撃当たらないっ。

やば…もう100%超えてるっ…ひっ…吹き飛んじゃうっ。

アールっ。それ取るじゃなあぁっ!」


「…ボクの勝ち」


「…く…ふ ふん!て 手加減してあげたのよっ。

つ 次は本気で相手してあげる」


「…はいはい…(弱いなぁ…)」


エル&アールはなんてんどーのゲーム機を手に、対戦ゲームを…







「おい!」蝶々がドンっと机を叩いて静かにさせ言葉を続ける。


「私たちは悪の組織として世界征服を目指してるんだ!

もっと真面目にやれ!…何か案があれば言え」


「はい♥蝶々様♥わたくしに案が…」


パンドラが挙手すると綱渡りをするようなポーズを机の上で披露する。

さらに体を捻り逆立ちを見せてくる。


「これがわたくしの新しいパフォーマンス案ですわ。

観客の満足度高めるにも良いと思いまして!」


「だから!サーカスの話じゃないって言ってるだろ!

世界征服の案だっ」


パンドラはにこやかに微笑む。


「確かにこの案はサーカスに関する物ですわ。

ですが、目新しいパフォーマンスは

サーカスのリピーターを獲得する上で重要だと

愚考します!」


「…」


思ったよりしっかりとした案に、蝶々は関心する。

中々考えているじゃないかと。


見直したぞと言おうと口を開くとパンドラは言葉を続ける。


「なるほどな…中々良い案だ」


「ありがとうございますわ♥

ふふ、ところで蝶々様、ゴシックロリータとボンテージどちらを着て

わたくしをイジメ――」


パンドラの台詞が終わる前に、彼女の頭がまた吹き飛んだ。


「あぁ♥やっぱりいつもの、黒スーツもいいですわ♥」


その後も幹部たちから良案が出ず、本日の会議が終わった。







一方その頃、マスク・ド・ヒーロー改め、竜面寺たつみは大学の講義室で

ノートを取っていた。


「えっと、この数式は…あ、違う…」


教授の言葉に耳を傾けながらも、彼女の心はどうしても先ほどの戦いに

引きずられていた。


「あの悪の組織…特に、あの首領…なんか不思議な人だったな…」


たつみはふと思い出して顔を赤らめた。

蝶々の鋭い目と、キリッとした指示を飛ばす声。

なぜか胸のあたりがズキズキと熱くなる。


「ダメダメ!私はヒーロー、正義の味方なのに、なんでそんな相手を気にするのよっ」


辰美は頭をぶんぶんと振って考えを振り払おうとしたが、背後から声をかけられる。


「たつみさん、大丈夫?なんか具合悪そうだけど」


振り返るとそこにいたのは、蝶々だった。


「えっ!?」たつみは思わず声を上げそうになるが、なんとか飲み込む。

さっきの話聞かれてないかなとビクビクしながら蝶々を見る。


「あ、えっと…大丈夫です…伏見さんはどうしてここに…?」


「この授業、必修だからね」蝶々は淡々と言いながら隣の席に腰を下ろした。


「そ、そうでしたね…」たつみは目を逸らしながら、小さく笑った。


「(伏見さん…あまり話したことなかったけど…クールだなぁ…

しかも、スレンダーで…羨ましい。服着たら太ってるように見られるし

ヒーローになったら胸で弄られるし…あぁ…胸なんて要らないよぉっ)」


たつみは改めて蝶々を見る。女性にしては高めのスラっとしたスタイル。

大きな胸が嫌いなたつみには、蝶々のスタイルが憧れだった。


蝶々は蝶々で、隣にいるたつみのスタイルに思うことがあるようだ。


「…(初めて話したけど…竜面寺さんのスタイル…おかしくないか?

何だ…あの胸は…何を食べたらあんな良い体になる?

なぜ…なぜ私はまっ平なんだ?

世の中不公平すぎるだろうっ!)」


「(どうやったら、こんなスタイルになれるんだろう?聞いてみようかな…)

…ふ 伏見さんってスポーツやってるの?」


「え?いや、特にやってないけど。なんで?(実際はサーカスで

色々動き回ってるから運動はしてるよな…私)」


「えっ、あの…その、動きがなんか鍛えてる感じがしたので…

(鍛えてないのに…こ これ?羨ましいよぉ)

わ 私もスポーツしてるから…すこし分かって」


「へぇ…どんなスポーツ?」

まさか、スポーツをしていると思わなかったたつみに、蝶々は少し

興味を持った。


「え えっと…格闘技…」


「え…意外…っと…すまない…失礼だったな…(ちょっと…マテ

何だ?鍛えてこのスタイルだと?オカシイダロウ…ヨノナカ…)」


「う ううん…大丈夫っ。小さいころからお爺ちゃんに

連れられて自然と今でも…」


「なるほど…そうか…それにしても、鍛えてるように見えるか?

まあ、最近は体力勝負なことが多いからな…

その性かも…(サーカスとか悪の組織とか)」蝶々はぼそっとつぶやいた。









その頃、アジトではピエラが問題を起こしていた。


「大変なのだ!パンドラっ!」


「はぁ♥はぁ♥…ど どうしたのよ…ピエラっ。

というかノックしなさいっ(見られてないわよね……)」


パンドラが恍惚の顔で蝶々の椅子に顔を近づいているとピエラが慌てて走ってくる。


ピエラに手を引かれ、食堂に向かうとそこには山積みのピザ箱が並んでいた。


「んぉ…パンドラやないか…あんたも食べるかぁ?」


「おいしいわよ!」


「…もぐもぐ…」


戦闘員たちと共にアンカー、エル、アールも食事をしているようだ。

パンドラは深くため息をついた。これのどこが大変なことなのかと。


「何よ…大変って、ただピザを大量に注文しただけでしょ?」


「バカバカしい」とパンドラは軽く手を振って蝶々の席に戻ろうとする。

だが、しかし、ピエラの言葉で足を止める。


「それが…うっかりちょー様のカードを使っちゃったのだ!」


「…え?」


「…おい…今何て言ったんや!(お仕置きやっ♪)」


「はぁ⁉」


「ん?…」


「「「「ガクブルっ」」」」


幹部、戦闘員たちはピザから手を放し、しばしの沈黙が食堂を包み込む。








どうにか誤魔化せないと思案を巡らせている間、蝶々が戻って来てしまい

アジトに悲鳴が響き渡った。



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