第十二作戦:勝負とヒーローの素顔
「ふうぅっ…!」
蝶々の肩付近に青いオーラが集まっていくと
片翼が出現する。
そして、懐から黒い鉄扇を取り出し構えた。
「まぁ♥流石はフェニックス様♥美しいですわ♥」
はぁ♥はぁ♥と息を荒げフェニックスを見つめるパンドラ。
「手羽先…食べたいのだ…じゅるっと」
涎をだらだらと足らすピエラ。
「ほぉ…これがフェニックスはんの…不死鳥の片翼…立派なもんや」
素直に蝶々の羽を見て感心するアンカー。
「…ふ ふん。まぁ…まぁ…綺麗じゃない…アタシの目には
敵わないけど」
「…エルの目より…綺麗だと思うけど…」
素直に認められないエル。素直に認めるアール。
幹部たちの感想はさまざまだ。
「フェニックス様。わたくしたちも加勢した方が?」
「いや…少し腕試しがしたい…私がどのくらい戦えるかを」
「承知しました」
「はぁっっ…!」
マスク・ド・ドラゴンも良きを整えるとオーラが両手に集中していく。
互いに地面を蹴り、接近する。
「っ…」
鋭いマスク・ド・ドラゴンの拳を最小限の動きでかわしていく。
「くっ…当たらないっ」
マスク・ド・ドラゴンは相手の予想以上動きに戸惑う。
片翼の不完全な怪人と察していたためだ。
目の前の敵が完全な怪人ではなく、少なくとも人の血が混じってる。
私なら簡単に倒せると…そう思っていた。
たしかに、蝶々は片翼のため空を飛ぶことはできない。
人の血は混じっている。
ただ、それで弱いということはない。
マダム・フェニックスの戦闘力と戦闘センスをしっかり受け継いでいたのだ。
ただ、蝶々も目の前の存在に舌を巻く。
巨乳を指摘され動揺していた時とは打って変わって、鋭い拳を叩き込んでくる。
「…(攻撃をする隙が…ないっ)」
蝶々は仮面の下で汗が流れる。
ただ、予想以上の相手に口元は緩む。
「正義の味方ごっこは楽しいか?」
「ごっこじゃないわっ…ここで悪事を終わらせてあげるっ」
「残念ながら、終わるのはお前の方だっ」
マスク・ド・ドラゴンはその挑発に応じるように拳を握り締める。
「あなたたちのような悪を放っておくわけにはいかない!」
ドラゴンは一瞬のうちに蝶々との間合いを詰め、強烈な拳を振り下ろす。
蝶々は武器である鉄扇を使ってその攻撃を受け止め、互いの力がぶつかり金属音が町中に響き渡る。
「速いな……それに力も中々だ…だが、力任せじゃ勝てないぞっ」
蝶々はそう言うと、鉄扇を広げ振り抜く。鉄扇は鋭利な刃となり、マスク・ド・ドラゴンのアーマーを攻撃する。
「こんなもの、効かない!」
マスク・ド・ドラゴンは拳で鉄扇を弾くと一気に前進する。
その速度は圧倒的で、蝶々に再び攻撃を仕掛けた。
蝶々は片翼を盾のように使ってマスク・ド・ドラゴンの拳を防ぎながら、
隙を見て鉄扇で反撃する。
両者は互いの攻撃を交わしながら激しい戦いを繰り広げた。
「これが正義の力?期待外れだな。」
実際はかなり楽しんでいる蝶々だが、マスク・ド・ドラゴンを挑発すると
攻撃は鋭さを増していく。
「そらっ!この攻撃はどう防ぐっ!」
「口先だけで勝てると思わないことね!はああぁっ!」
蝶々は距離を取りつつ翼を羽ばたかせる。
翼から無数の羽を飛ばした。それらは鋭利な刃となり、マスク・ド・ドラゴンに
襲い掛かる。
マスク・ド・ドラゴンは拳に赤いオーラをまとわせ、一撃で無数の羽を吹き飛ばす。
しかし、蝶々も負けてはいない。
マスク・ド・ドラゴンが攻撃を防ぐことを予測して、羽で視界を遮り、間合いを
つめそのまま鋭い蹴りを腹部に与える。
「くっ……!」
ドラゴンはその攻撃を受けて膝をつく。
しかし、すぐに立ち上がり、力強い視線を蝶々に向けた。
「きゃぁ♥フェニックス様ぁ♥カッコいいですわぁ♥♥」
激しい戦いは、突如として警察のサイレンの音にかき消された。
「警察だ!お前たちを包囲した!」
「ちっ…面白くなってきたのに…」蝶々は舌打ちしながら周囲を見回す。
「撤退するぞ!」蝶々が鋭い声で指示を出し走り出す。
それに続いて幹部たち、戦闘員も散り散りに逃走していく。
「待てっ…くっ…逃げ足が速い…ここまで、かな…」
さっきまで威厳のある口調はなりを潜め、
マスク・ド・ドラゴンもその場を後にした。
建物の陰。
マスクド・ドラゴンは周囲に人影がないのを確認し、そっと変身を解除した。
赤と金色のアーマーが消え、その下から現れたのは、
巨乳を持て余している一人の少女。
彼女の名前は竜面寺たつみ。
「うぅ…おじいちゃんの遺言と言っても、なんで私がヒーローにならないといけないんだろう…」
彼女は乱れた髪を整えながら、バッグから大きな丸眼鏡を取り出して掛けた。
そして猫背気味に肩を丸め、いかにもおとなしい学生の姿に戻る。
「しかも…」たつみは顔を赤らめながらつぶやく。
「あの悪の組織にも、私の胸を弄られて…はずかしいよぉ…」
さっきまでの凛々しいヒーローはもういない。
彼女は両手で胸を抱えるようにしながら、思わずしゃがみ込んだ。
「胸…また大きくなってる気がする…」
一方、蝶々たちは無事にアジトに戻っていた。
「私と戦った正義のヒーロー…マスク・ド・ドラゴン…かなり厄介だな」
蝶々は椅子に座りながら腕を組んで考え込む。
「もぐもぐ…でも、ちょー様、あのヒーロー、なんか動揺してたのだ。
特に胸の話のとき!」ピエラが楽しそうに笑う。
「その話を蒸し返すな、ピエラ!」
蝶々が思わず拳を振り上げると、ピエラは慌てて後ろに飛び退った。
「冗談なのだ!お仕置きは勘弁なのだ!」
「…うちはお仕置きされたいんやけどなぁ…」
「でも…」パンドラがうっとりとした表情で蝶々を見つめる。
「蝶々様とあのヒーロー。中々見どころがありましたわ。
お尻とおっぱい…ライバル関係というのも素敵ですわねぇ」
「パンドラ!」
蝶々の怒声と共に、パンドラの頭が再び吹き飛んだ。




