第一作戦:遺産は悪の組織でした
パンドラ・アンバランファスの絵はpixivに載せてます。
https://www.pixiv.net/artworks/113351605
「…世界征服?」
マダム・フェニックスが率いる
悪の組織『不死鳥の羽』が現れた。
『不死鳥の羽』は悪事の限りを尽くし
世界を侵略していった。
世界征服にあと一歩と差し掛かった時、
正義のヒーロー
『マスクド・ドラゴン』によって
『不死鳥の羽』の世界征服は阻止された。
『不死鳥の羽』と『マスクド・ドラゴン』の
激しい攻防戦が続いていたが突如、『不死鳥の羽』
の首領『マダム・フェニックス』が姿を消した。
統率が取れなくなった『不死鳥の羽』は勢いをなくし
やがて『不死鳥の羽』は忘れられていった
そして、現代。
新たに『不死鳥の羽』の首領が誕生
しようとしている。
伏見蝶々は、重い金庫から取り出した一通の遺言状を握り締めながら、祖母の悪ふざけに苛立ちを覚えていた。
祖母、伏見鳥子が死去したと聞いて駆け付けたのも束の間、出迎えたのは悲しみに暮れる家族ではなく、
古びた地下アジトの図面と組織名簿だった。
「『私の後を継いで、世界征服をしなさい』って……!?」
蝶々は短めの黒髪を掻き乱す。
遺言を無視したいところだが、遺産を受け取る条件が「組織の復興と征服活動の開始」らしい。
「父が怪人と聞いてたから、まさかと思ったが…」
「意地悪なおばあ様らしいと言えば、らしい…か。
……まぁ、ヒマだし遺産を貰えるならやってみるか…」
そう呟き、遺書を懐にしまい蝶々は腹を括った。
「…ここが…アジト…」
雑居ビルが立ち並ぶ中、アジトのある地下に足を運ぶ。
進んでいくと扉が見え、その向こうから微かな音が聞こえてくる。
「誰か…いる。怪人か?」
金庫にあった鍵を手に取り、恐る恐る扉を開けると
微かな音がはっきりと聞こえてくる。
それはテレビの声と人の大笑いだった。
「うふふぅ♪バカねぇ♪不倫ってのは
バレないようにやるってのが鉄則なのに♪」
「…」
「…あら…?…ちょっ…鳥子様っ⁉
お久しゅうございます♪んちゅぅぅっ♥」
蝶々に気が付き駆け寄ってきたのは、驚くほど整った美貌の女性――いや、スライムだった。
肌はつやつやと輝き、スタイルはまるで彫刻のよう。
「(この怪人…たしか名簿に)」
唇を突き出し飛び込んでくるスライムを蝶々は軽やかにかわすと
組織名簿を取り出し、蝶々はこの怪人を確認する。
不死鳥の羽。参謀。スライム怪人。パンドラ・アンバランファス。
「私は鳥子ではない。
鳥子は私のおばあ様。私は孫の伏見蝶々だ」
「お孫様?
言われてみれば…鳥子様の
おっぱいはこんなに貧相ではなかったぁ…こぱぁっ⁉」
蝶々は容赦なく拳を叩む。
拳はパンドラの顔を捉え頭が飛び散るが、数秒後には再生していた。
「ふむ…名簿通りの再生力…」
「はい、私の身体は永遠に蘇ります!どうぞもっと、強く……♥
この激しい愛♥鳥子様の血縁者なのですね♥」
「こはん。改めまして
私。『不死鳥の羽』の幹部が1人
パンドラ・アンバランスですわ。
鳥子様のお孫様である蝶々様の忠実なる僕♥
以後おみしりおきを」
パンドラは胸を張って名乗るが、背中から伸びる手は蝶々の腰元
に伸びている。
「なぜ私の尻を触ろうとする。セクハラだぞ」
「セクハラではなく、愛の確認ですわ!どうか、このわたくしに蝶々様の
愛を――んぅっ」
黙らせるために再度、顔に拳を叩き込み、
頭が吹き飛ぶがすぐに再生していく。
「……はぁ…パンドラ…他の幹部たちはどこにいる?」
「蝶々様。大変申し訳にくいのですが…」
「…まさか…戦闘員はおろか…幹部たちも抜けているなんて…」
蝶々は頭を抱えた。
全員が組織を抜け、好き勝手な生活を送っていると知る。
「しかも残ったのが…これとは…」
「うふふ♥」
「はぁ…まずはこいつらを連れ戻すしかないか……。悪の組織ってのも楽じゃないな」
そうして始まった幹部招集。
しかし、待ち受けていたのは蝶々の想像を遥かに超えた変人たちだった。




