009 ニルダなのかグニルダなのか
RPG「ウィザードリィ」の二作め「ダイヤモンドの騎士」は、失われた神器「ニルダの杖」を取り戻すことが目的だ。反面、王国を乗っ取ろうとした魔人ダバルプスは物語が始まる前に死んでおり、「ラスボスのいないRPG」という異色作でもある。
さて、このニルダの杖のスペルは「STAFF of GNILDA」であり、昔のパソコン雑誌などでは「グニルダの杖」と表記されていた。
似たようなアイテムは他にもある。ダイヤモンドの騎士の剣ハースニール、スペルは「HRATHNIR」も、フラスニールとかラスニールなどと書かれていた本があった。
原作者の監修により、今はニルダとハースニールで確定しているそうだ。アイテム以外だと、三作めに登場する聖なる竜もずっとル・ケブレス(L'KBRETH)と呼ばれていたが、正しくはエル・ケブレスらしい。
が、これはあくまで地球の話。物語の舞台リルガミンでの発音事情はどうなっているのだろう?
結論から言えばどれも正しいと思う。ファンタジー世界にだって、言語は複数あるだろうから。ロバートがイタリア語だとロベルトになるのと同じことだ。あるいは発音の違いは、地方ではなく人間とエルフなど種族の違いによる可能性もある。
いずれにせよ、正式な呼称が標準語ないし最多数種族である人間の発音であり、他のものが異国語ないし方言、あるいは他種族の発音と思ってよいだろう。昔グニルダとかフラスニールが多かったのは、ゲーム中の世界において、王国の広報担当官とかそういう役職の人が標準語圏の人ではなかったのかもしれない。
のちハースニールに統一されたのは、我が国において文書からラジオ、そしてテレビへと情報の伝達手段が発達し、標準語を耳にすることが増えるにつれてコテコテの方言を使う人が減っていったようなもので、リルガミンの地方都市においても方言は少しずつ廃れて中央の文化に染まっているのだろう。
勇敢なる冒険者たちによって、街道の安全が確保され人の出入りが増えたのか、それともニルダの杖が寺院に戻ったことを知って各地から巡礼が詰めかけ、王都で正しい発音を知り、帰郷してから「ホントはグニルダじゃなくてニルダなんだって」と吹聴したのか。想像は尽きない。
話はそれるが、ゲームをクリアするためには、ダイヤモンドの騎士の武具をフルコンプしたのち、それらを装備したキャラが単独で最下層に降り、謎解きに答えたのち一階に戻るという手順を踏む必要がある。
そして装備できるのは戦士、侍、君主のみなので、ニルダの杖をアイテム図鑑に登録するためには、一旦冒険を中断してアイテムを鑑定できる司教と合流させ、杖を渡して鑑定してもらわなくてはならない(アイテムは未鑑定だと図鑑に登録されない)のが面倒だ。この辺りはテンポを考えて、最初から鑑定済みくらいの融通をきかせてくれても良かったのではなかろうか?
なんせそのまま地上に出たら、司教も一緒にダイヤモンドの騎士の称号を貰ってしまうことになる。いや、ロランの歌に登場する大司教チュルパンは、たしかに槍とかぶん回していたけど。