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082 印象的だった呪文を語っちゃうよ

 今回は16話と同じく魔法の話。ファンタジー小説でほとんどの場合欠かせぬ要素であり、かつ作品の大きな魅力となるものだ。


 ご存知のように、この超自然の力を発動させるには様々な条件がある。本人の魔力、祭壇や魔方陣といった設備、蜜蝋みつろうにかわといった触媒……


 そして呪文の詠唱。文字数の都合でさらりとではあるが、様々な作品における魔法の詠唱を語ってみたい。


 そもそも呪文とは魔法を発動させるキーワードで、ラノベ的ファンタジーが確立されるよりずっと前からあった。「アリ・ババと四十人の盗賊」で洞窟の扉を開く「開け、ゴマ」とか、日本だと忍者が天地の力を身に宿すために結ぶ(いわゆるバフだ)九字印、指を複雑に動かしながら唱える「りんぴょうとうしゃかいじんれつざいぜん」とか、広い意味では「痛いの痛いの飛んでけ~」など。


 ラノベが普及してくると、ドラゴンもまたいで通るあの娘のような、長い詠唱が増えてくる。つまり必殺技を出す前の()()だ。

 これはエンタメ的な外連味けれんみを考えれば正しいと思う。すぐ必殺技を出さず、読者を待たせて焦らしてヤキモキさせるのだ。黄門さまのチャンバラや、スペシウム光線を出すまで怪獣と格闘するウルトラマンのようにね。


 ただ、私は自作品ではこのタイプは採用していない。文字数削減のためや、文才の乏しさゆえ気の利いた文句を思いつかないこともあるが、戦闘中に長時間の詠唱ができるか疑問だから、なんとなく書くのに抵抗があるのだ。


 影響を受けたのは、16話や28話で紹介した「ドルアーガの塔」辺りか? この作品では詠唱は短かった。

 例を挙げると骸骨戦士を召喚する魔法は、黒竜の牙というアイテムをばらまいて「よみがえれ、地獄の戦士たちよ。NASLU!」 と叫ぶだけ。なお他の魔法はアルファベット部分だけで発動できるので、前半はノリと勢いで言ってるだけかもしれない。

 原作ゲームでも魔法使いはテレポートしてすぐ呪文を放つので、詠唱に時間をかけてはいない。続編の「イシターの復活」に至っては、ヒロインがものすごい速度で魔法を連射する。


「あの魔法を無詠唱で!?」と驚かれるアレだろう。これもゲームやラノベが元祖ではなく、古い海外ドラマ「奥様は魔女」のサマンサは、閉じた口を左右にカクカク動かす奇妙なジェスチャーを魔法発動のトリガーとしていた。近年はプロレスラーにも、立てた指を震わせて呪文を使う選手がいる。


 え、それ格闘技的にいいのかって?

 プロレスではアリなんだよ! ルール無用の悪党に正義のパンチ(※反則です)をぶちかます世界だぞオラッエー!


 ……とまあこのように、魔法発動にも様々なパターンがあり、明確な正解はない。さすれば我々作者が留意すべきは、作品の雰囲気やメインターゲットの読者層に合うかということになろう。この点で印象的だったのが、電撃文庫の「ゼロから始める魔法の書」と、青い鳥文庫からは36話でも紹介した「魔女の診療所」だった。


 前者は簡単にいうと、魔法を編み出したゼロは呪文を一種の暗号にしており、自分以外は間違った詠唱になり十分な魔法効果を引き出せぬよう細工していた。


 後者の呪文は魔法少女アニメ的な雰囲気を反映して「オン・○○・デパラージャ」とポップで可愛い。それだけに、主人公の使った最後の魔法だけが、まるで詩のような文言だったのが際立つ。倉橋燿子くらはしようこ先生の見事な手腕である。


 ああそうそう。忍者の話に戻るけど、三重県伊賀市では覆面に忍び装束で白昼堂々歩いてても、観光ガイドと思われて通報されないらしい。


 すげーよ忍者ハンパねーよ忍者。あんな格好でもきっちり忍んでるよ。そこにシビれる憧れるゥ!


 ある意味、これも「魔法」なんですかね。

文字数と著作権の都合から「魔女の診療所」の主人公ヒアリの最後の魔法の全文は表記しませんが、本当に印象的なんですよこのシーン。電子書籍もありますので、興味がわいた方はチェックしてみるとよいでしょう。

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