080 リルガミンとエーテリアにおける盗賊の扱いの差
明けましておめでとうございます。拙いエッセイですが、他作品ともども読んでいただければ幸いです。
ファンタジーRPGで基本的な職業のひとつがシーフ、すなわち盗賊である。
簡単にいうとサポート役で、素早いが戦闘力は低く魔法も使えない。反面、罠の解除や鍵のかかった扉を開けるなどの専門技能をもつ。さて今回は74話で紹介した「エーテリアの迷宮」における彼らの話だ。
結論を先に書くと、本作の盗賊はむっちゃ有能。
ゲーム的にはパーティが最大四人なので、一人で複数の役目をこなす必要性からだろう。魔法が使えないのは仕方ないとして、装備によっては侮りがたい戦闘力があり、十分前衛が務まる。
むろん扉の解錠もお手のものだし、なんとウィザードリィでは司教にしかできなかったアイテムの鑑定(4話参照)すらやってのけるのだ。まあ、肝心要の宝箱の罠を判別したり解除したりがあまり当てにならないのは、もう少しどうにかして欲しかったが……。
そんなエーテリアの盗賊の鑑定事情を考えてみたい。
私は4話で、ウィザードリィの舞台リルガミンでの鑑定うんぬんは宗教の影響と仮説を述べた。盗賊や戦士も何のアイテムか分かってはいるが、しかるべき人物のお墨付きがないと買い取ってもらえない。その利権を寺院が握っており、冒険者では司教のみが認可権を有するというものだ。
発掘品の価値を保証する法的後ろ楯があるのは、どこも同じと思う。社会的信用のない者が「これは○○だから百万ゴールドです」とほざいてお金が出てくるわけがない。
本作の鑑定スキルを確認しよう。
これは盗賊と、ウィザードリィの司教にあたる賢者は無条件で持っている。忍者は盗賊ギルドにお金を払えば教えてもらえる。他の職業は、一度上記の職業にならないと習得できない。
となると、リルガミンで寺院が握っていたであろう売買認可の利権、これはエーテリアでは盗賊ギルドの領分なのか? 本来は日陰者であるはずの彼らが、なぜこれほど影響力を持っているのだろう。
推測でなく妄想だが、エーテリアの町は昔からダンジョン資源に経済を依存する、いわゆる迷宮都市であり、発掘に欠かせない盗賊の重要性が高いのではあるまいか。ゆえに領主のシルヴァン公とて、彼らを無視できないのだ。
現実世界でも、エジプトには村単位で代々ピラミッドなどを盗掘して暮らす人々がいたと聞くが、ここはまさにそうした村が大きくなった町なのかもしれない。
極端な話シルヴァン公の先祖がそうで、ダンジョンから得た財をもとに――有力者に渡す賄賂、暗殺者である忍者への依頼料など。だから忍者も盗賊ギルドと関わりが深い――貴族となった可能性も……いや、さすがにこれは飛躍が過ぎようか。
だがここで新たな疑問が出てくる。盗賊ギルドが牛耳る(?)迷宮都市エーテリア、なぜそこで賢者も鑑定士の資格を有するのか、という点。基本職の魔法使いと僧侶は持っていないのに。
魔術師ギルドで教えてもらえるスキルは、攻撃魔法と魔力増幅のみ。ムーン寺院では治癒魔法と増幅。
いずれも戦闘特化のスキルだ。どうやら冒険者の魔法使いと僧侶は純粋なバトル要員らしい。
賢者の鑑定は……もしかするとアスタロス王国全体で認められている資格なのか? なら王国の都市で適用されるのは当然だ。
王都では盗賊の鑑定が認められず、賢者でないとダメだとしたら、冒険者の多くはエーテリアで活動することに旨味が出てくる。上級職がいなくても稼げるという旨味が。
限定的な権限を与えて危険な仕事に繋ぎとめ、ダンジョン資源を町にもたらす。辺境の迷宮都市はこうして生きてきたのかもしれない。
なおエーテリアの鑑定屋の手数料は売却価格の半分。なので盗賊が鑑定できなくても、売れば儲けは出る。
売却価格で鑑定するリルガミンはぼったくりすぎ。




