008 回復魔法を使えない僧侶!?
新堂・ツバサ・リーヴェル。
彼女を知っている人がどれほどいるだろう? 2006年にPS2で発売された「ウィザードリィエクス2・無限の学徒」に登場するキャラクターだ。
といってもストーリーに関わりはしない。台詞すらない。
それもそのはず、彼女はすぐにゲームをプレイできるよう、あらかじめ登録されているキャラの一人にすぎないのだから。ドラクエで言うならルイーダの酒場に最初からいるベンハとか、ああいう人である。
この手のキャラは、大抵すぐアイテムと所持金をはぎ取って削除されてしまうものだが、エクス2は百人までキャラを作ることができ、かつ名簿の並び替えも自由。さらに三十人キャラを作らないと獲得できない称号もあるので、とりあえずそのままにしておく人が多かったと聞く。私は他の五人と一緒に、レベル99まで育ててエース級として使っていた。
彼女にはおおいに助けられた。なぜなら筆者オリジナルのキャラを作った際、なんと僧侶が回復魔法、ウィザードリィで言うならディオス、ドラクエで言うならホイミを覚えていなかったのである!
なぜだろう? 私の推測はこうだ。
物語において、プレイヤーが所属するホトを含めた人類の勢力は、イシュラとクライスの二国が相次いでやらかしたせいで、魔族との戦争において「史上最大の劣勢」に立たされている。しかもホトはクライスの不可解な行動に反発しクルセイド連合軍を脱退、魔族どころかクライスとも緊張が高まっている。
なので式部京聖戦学府は兵力の増員に迫られ、とにかく質より量で学徒を増やした。そのため入学のハードルが下がり、僧侶学科のくせに回復魔法も使えない者がいたというわけだ。
序盤はポーションも買えない。宿代も捻出できない。回復手段がないからいきなり詰み(一応の救済措置なのか、会話イベントでわずかなお金をゲットはできる)である。ここで助けてくれたのが彼女だったのだ。
とまあ一応納得もできたし序盤もしのげたのだが、どう理屈をこねてこじつけようと、ゲーム的には僧侶が回復魔法を使えないってのはダメである。このゲーム、やたらランダムの要素が多いが、このようにゲームバランス的に許容しがたい事態が起こるのは残念だ。とはいえ、上層部から非常識なまでの低予算と無茶なスケジュールを強いられたスタッフを責めるのは酷というものだろう。
だが、作中の人物は批判を甘受せねばならない。とくに式部京聖戦学府の村正御舟校長と、教頭のユリウス・鑑真の両氏には、学徒の入学基準、および教育カリキュラムの見直しを早急に進めてほしいところだ。