007 ビアレスとゲア・ガリング
ファンタジー、とくに異世界召喚ものを書きたいなら、とりあえず観ておくべき作品のひとつが、ロボットアニメ「聖戦士ダンバイン」だ。
主人公の少年ショウ・ザマが異世界バイストン・ウェルに聖戦士として召喚され、世界征服をもくろむドレイク・ルフトの野望を打ち砕くため戦乱に身を投じてゆくという内容で、昆虫をモチーフとした独特なロボットは、放送から四十年を経た今でも人気が高い。ゲーム「スーパーロボット大戦」でお世話になった方もいよう。
主人公と敵対するドレイク陣営は、アの国とクの国の同盟軍(二つ合わせて悪の同盟?)なのだが、クの国の開発したロボット、ビアレスと巨大戦艦ゲア・ガリングのデザインが真逆すぎて面白いので紹介してみたい。
まずはビアレス。全身トゲトゲのいかつい悪役メカだ。股間部に昆虫のお尻の針を模した突起があるものの、虫に疎い私には正直何がモデルかよくわからない。両手にトマホーク(鎌のように見えるが刃は外側にあるから斧である)を装備しているということはカマキリだろうか。
さて、バイストン・ウェルにもお国柄というものがあり、例えばナの国は優雅で上品、ラウの国は質実剛健といった感じなのだが、クの国は好戦的で野蛮というヒャッハー上等のバーバリアンな人たちらしい。国土は森林が多いというから、ビアレスが斧を装備しているのもそのためかもしれない。
そう聞くと、ビアレスのトゲいっぱい&トマホークはな~んとなく「クの国っぽいなぁ」と思えてくるから不思議だ。
対して巨大戦艦ゲア・ガリング。国王ビショット・ハッタの座乗艦だ。実際には戦艦よりも空母に近く、メカの搭載数は抜きんでているが火力と装甲は四大戦艦の中でいちばん弱い。
こちらはあまりいかついデザインをしてない。所々機銃や標識灯の突起部はあるが、クリームイエローという明るい色合いもあって、アの国のウィル・ウィプスやラウの国のゴラオンに比べ威圧感は薄い。むしろナの国の「空とぶお城」ことグラン・ガランに近い気がする。
というのもビショットは、荒々しい気風をもつクの国らしからぬ、よく言えば知的、実際には小心な人物なのだ。それを頭に入れてから見ると、なんとなく都の文化に憧れる田舎大名の願望やコンプレックスとか、俺は野蛮人じゃないぞというドレイクに対する見栄がにじみ出ているみたいで、ちょっと微笑ましい。
話はそれるが、ビアレスを駆るエースパイロットチームに「赤い三騎士」なる人たちがいるが、機体の色は言うほど赤くない。確かに一般機よりは赤の面積が増えてはいるけれど。
クの国の所属ではないが、真っ白いガラバが最終搭乗機だった黒騎士といい、名前と色くらい一致させてほしいものである。