052 ランタンの謎。なぜあの持ち方なのか
ファンタジーものは地下迷宮や洞窟など、暗い場所での行動がつきものだ。
それらの場所では何らかの明かりが必要となる。ご親切に照明が設置されているダンジョンもあるが、ゲームなどでは松明やランタン、光の魔法を用いることも多い。
ていうか、照明つきのとこでも明かりは常につけておくべきだろう。いきなり灯が消され、コウモリなど視覚に頼らないモンスターに襲われる罠かもしれないものね。
そして用意する明かりは、魔法と燃焼物の両方があると安心だ。魔法を無効化する結界や、逆に火を消すスプリンクラーみたいな罠もありうる。
燃焼物は、個人的には松明を推したい。ランタンに比べてかさ張り、燃焼時間も短いという難点はあるが、床に落としても短時間なら消えないし、ミイラなど火に弱いモンスターには強力な武器となるからだ。
でも、長時間の探索や水対策にランタンも欲しいところ。上にある取っ手を持って、ぶら下げて持つのは絵になるし……
ちょぉぉっと待ったぁぁ!
私は昔からあの持ち方が疑問だったんだよ! あそこ蝋燭の火にあてられてすごく熱くなるの! 素手で持つのは無理だよ!
なぜ手を火傷してまで見た目にこだわるのだ。作中の世界にも龕灯(横向きの筒の中に蝋燭を入れる照明器具。火から離れたところを持つので手が熱くならない)くらいあるだろう。てなわけで、あの持ち方が定番の理由を考えてみたい。
①ファンタジー特有の素材や魔法で、取っ手の耐熱性が高められている。ただ、ランタンだけ加工しても熱せられた空気は上昇して手に当たるから、同様の処理をされた手袋も必要となる。
②光魔法を用いたランタンでそもそも熱くない。でもこれは魔法封じの結界では使えなくなるはずだから松明の併用が前提となり、荷物がかさ張るのがネック。
③熱くないパターンの別バージョンで、発光する生物が入っている。ホタルを入れた虫かごみたいなものだ。魔法封じの罠でも安心だが、逆に他の罠で死ぬリスクも。
④力業。ファンタジー世界の住人は超人だから、単純に熱さに耐えられる。攻撃魔法くらって生きてる連中からしたら、使い捨てカイロくらいでしかないのだ。
⑤実は手で持ってない。わが国の提灯は火傷しないよう棒の先にぶら下げるが、手そっくりに作ったランタン保持棒(?)で、手で持ってるように見せかけている。
なんかどんどんマヌケ度が増して大喜利っぽくなってるなあ。で、書いてて思ったんだけど、やっぱ提灯みたいな棒や龕灯を使ったほうがよくない?
ファンタジーじゃなくて時代劇になるから嫌だ?
ならこれはどう? 実際にもあったらしいけど、松明を固定する金具やランタンがついている盾。ゲームだと盾は金属製が多いから、ピカピカに磨けば反射板みたいになって明るいかもしれないよ。
だが私の知る限り、彼らは頑なに取っ手を持ち続けている。そこに山があるから登る登山家のごとく、そこに取っ手があるから持つのである。
なんなのあんたら。やっぱ見栄え重視なのか。そんなに見た目が大事なのか。
見た目が大事。そういや今は冬だが、女子高生の皆さんの中には校則関係なしに「スカートの下にジャージはダサい!」と、タイツどころか生足で寒さに耐える勇者もいるという。乙女にとって、オシャレは暖かさという実用性に勝るのである。
手を焼かれても取っ手を持ち続けるファンタジー世界の住人は、存外に乙女チックな人たちなのかもしれない。寒さに耐えるのが乙女心なら、熱さに耐える乙女心があってもおかしくないだろう。
中には覆面以外は素っ裸の忍者とか、シルクハットにステテコパンツの従者とか、ランタンより先に服装の見栄えにこだわってほしい人もいるけれど。




