046 ケモミミの不思議。二つは変化で四つは追加?
ファンタジーものにおいて、一定の人気をもつキャラクターが獣人である。狼男とかと違って普段から獣の特徴をもち、原則として変身はしない。
そのケモノ度はまちまちで、ほぼ動物が直立しただけのものから、かの偉大なる豹頭王のように獣の頭に人間の体というパターン、さらには普通の人間にケモミミとしっぽを追加したタイプまである。
ぶっちゃけ、ケモノ度が高いタイプは楽でいい。耳のことで悩まなくていいからだ。
ご存じと思うが、近年のケモミミキャラは耳が四つあることが多い。人間の耳の位置に普通の耳が、頭のてっぺんに獣の耳があるパターンだ。
私は彼らを見るたび不思議になる。なぜゆえ耳が四つあるのだろう?
結論から書くと、四つ耳タイプの獣人は「元々は人間だった生物に獣の力を加えた」もの、つまり文字どおり耳が追加された種族で、頭頂部にのみ耳がある、もしくはロバの耳の王様よろしく人の耳の位置にケモミミがあるタイプは「人間が獣に近い姿に変化した、もしくはその逆」の種族なのかなと思っている。
一口に獣人と呼ばれていても、まったく違う経緯で生まれた完全に別種の生物だ。
とは言うものの、私には人間が獣になるのはともかく、いったん猫なり犬なりに進化した獣が、そこからさらに変わる理由はよく分からない。別種の生物が環境に適応して似た姿になることを収斂進化というが、猫が人間を真似る必要がどこにある?
聞いた話だが、ネコ科の生物は陸上の肉食動物として理想的な姿をしているそうな。長い進化の歴史の果てに最適解を導き出したなら、もうこの姿でいいだろう。
人間なんて明らかに進化の失敗例でしょ。図体がでかい割に動きは鈍いし、角もかぎ爪もなく牙はしょぼい犬歯だから戦闘力低いし、半端なとこにしか毛がないから寒さにも弱いし、何より猫ほど可愛くないし。
かわいいは正義なんだよ!
まあいい、仮に人間そっくりの二つ耳タイプを出すとして、獣が人間に近く変化した理由を無理矢理でっちあげてみよう。
①神は地上界を管理させるため、自分を模した土くれの人形に魔法をかけて人間を作った
②つまり生物の中でいちばん神に近いのは人間である
③なので人間は生物の中で最多の魔力を内包できる
④獣の中には突然変異的に魔力が高い個体がいる
⑤その個体の子は、魔法適性が上がったため少しだけ人間に近い姿になる
⑥それが何世代も繰り返され二つ耳の獣人になった
適当に書いただけあって、実に陳腐な設定だ。これなら四つ耳だけにして、
①かつての魔法文明は現在よりはるかに優れていた
②魔王軍と戦うなどの理由から、獣の力を人に付与した合成獣が作られた。強化人間とかバイオソルジャーの類だ
③そうして生まれたのが四つ耳タイプの獣人
④現在の獣人は彼らの末裔である
五十歩百歩だが、こっちの方がまだマシな気がする。史実でも古代の戦士は獣の力を宿すため毛皮をかぶったというし、中国拳法にも動物の動きを模したものがあるし、なんなら現代のプロレスラーだって虎の覆面かぶってルール無用の悪党に正義のパンチをぶちかましてるし。なおプロレスでパンチは反則である。
なので私は、自作品に「人間にケモミミとしっぽ」系の獣人を出すなら四つ耳オンリーにしようかなと思っている。耳が多ければ立体的な音の探知能力に優れているはずだから、それを活かした見せ場を作れるかもしれないものね。
ただ気になるのは、耳が四つあるってことは頭頂部にも鼓膜とかがあり、そのぶん頭蓋骨の中で脳に割くスペースが減らざるをえないことである。
まぁ、その辺は深く考えなくてよかろう。脳ミソが大きければいいって訳じゃないことは、他ならぬ我々人間が証明しているのだから。




