004 なぜ司教だけ識別ができるのか
今回もウィザードリィを取りあげてみたい。
このゲーム、宝箱から見つかったアイテムは、最初は正体が分からず「?剣」などと「不確定名」で表示される。素人には剣の良し悪しなど分かるまいから、これはリアルなシステムといえる。
この不確定アイテムを「鑑定」することで、ロングソード+2だのカシナートの剣だのと正体が分かるのだ。なお不確定名のままでも性能は変わらない。
この鑑定が行えるのは、お店の有料サービス、もしくはプレイヤーキャラの「司教」という職業の者だけである。もっとも、シリーズによっては錬金術師も可能で、また鑑定の魔法が存在するケースもあるが。
説明書およびゲーム中のヘルプメッセージには「学問にも熱心な彼らはアイテムの鑑定ができる」とある。確かに中世において知識は聖職者のものだったので、この説明はなるほどと思うが、疑問もなくはない。
剣のことなら宗教的な理由で刃物を持てない司教より、むしろ戦士や侍のほうが分かりそうなものではないか? 魔法の巻物なら魔法使いでも読めるだろ? 何がお宝か分からなきゃ盗賊は務まらんよね? 忍者なら薬とか詳しくないの? なぜ司教だけ?
私は個人的に、物語の舞台となるリルガミンにおいて、アイテム売買の認可権……つまり「このアイテムはこういう品ですから、お店で売ったり買ったりしてもいいですよ」というお墨付きを与える権利を、教会――ニルダの神様かカドルトの神様かは知らないが――が握っているのではないかと思うのだ。
そして、プレイヤーキャラクターが選択できる八つの職業のうち、宗教関係者は僧侶、司教、君主の三つだが、そのうち最も宗教的な地位が高いのが司教(なるために必要なパラメータは君主のほうが厳しい)で、彼らだけは独自の判断でその権利を行使することが許されているのではないか? と。
レベルが低いうちは鑑定に失敗しやすいのは、鑑定眼の未熟さだけでなく、下っ端ゆえに申請が通りにくいからかもしれない。
ちなみにお店の有料サービスの場合、鑑定の手数料はアイテムの値段の半額。そして不確定アイテムは買い取ってもらえず、鑑定後のアイテムの買い取り値も買値の半額なので、お店で鑑定してもらうと、アイテムを売っても冒険者は儲けが出ない。さすがボッタクル商店と揶揄されるだけのことはある。
なので酒場には大抵鑑定専門の司教がおり、店に鑑定手数料が落ちないのは有名な話だ。司教の副業なのだろう。
手数料がもっと安ければ、お店で鑑定するプレイヤーもいるだろうに……欲張りすぎると損をするのは、ゲームの世界でも同じってことですな。