033 レアアイテムは誰のもの?
命がけでダンジョンに潜り、財宝を持ち帰る冒険者たち。しかし強力なレアアイテムは、どこまで発見した本人が所持することを許されるのだろう。ウィザードリィだと、ラスボスからゲットした「ワードナの魔除け」は、地上に帰還したらトレボー王に返還され、アイテム欄から消えてしまう。
まあこれは分かる。もともと魔除けを奪還するためにトレボーが冒険者を募ったのだから。だが多数のハードに移植される前の初期バージョン(私はプレイしていないので聞いた話だが)では、なんと! 武器や防具といったアイテムも全部消えてしまうらしい。
村正、手裏剣、君主の聖衣を筆頭に、命がけで獲得したアイテムが全部だ。理由は、「勲章をつけるのに邪魔だから」だそうな。
表彰式の後で返してくれればいいだけだよね?
狂王と呼ばれるトレボーのことだ。これはもう、無理やり没収してるとしか思えない。もっとも個人的な欲だけでなく、他国の使者を迎える際に「悪の大魔法使いを討った勇士の武具」を見せたいという意図もあろうが。
ゲーム的にはダンジョン内で仲間にアイテムを渡すという抜け道があるが、実際には否応なく召し上げられるはず。むろん建前上は、偉大な王に宝を献上できるはなんたる名誉と、喜びにむせび泣きながら……。
だがトレボーでなくても、あまりに強力なアイテムだと冒険者(というより、国王を含め特定の個人)が所持するのを許さない王や領主がいてもおかしくない。むしろそれが自然だろう。反逆されても困るので、強制的に奪うのも危険だが。
どこまで見返りを認め、どこから規制をかけるか。為政者の悩みは尽きない。
仮にあなたが王だとして、一個人、しかも若く精神的にも未成熟な若者が、どこぞの伝説巨神みたいに、雄叫びが電光石火の一撃を呼んで銀河切り裂くような剣を所有していたら。
おそれるな心開けよ? いや怖いっての。スペースまでランナウェイしたくなるくらいに!
常識的に考えて、こんな力が独断で振るわれるのは危険すぎる。勇者とは、やっかいな暴れ馬でもあるのだ。きっと王様の中には、伝説の剣より伝説の胃薬が欲しい人もいることだろう。
流出を防ぐ措置と思われる描写もあった。ウィザードリィだと♯1のキャラを♯2に移動させる、もしくはその逆をすると、アイテムは消滅する。また所持金も制限され、たしか上限は五百ゴールド。
1の舞台はトレボーが統治する城塞都市、2はマルグダ女王が治めるリルガミン(二つの都市が別とする説を『二都説』という。一方ゲーム中でどちらも『リルガミン』と表記されるため、同一の都市とする『一都説』もある。ここでは仮に前者として書く)だ。
他の都市に強力な武具や多量の金銭が流出すれば、防衛や経済に悪影響を及ぼす。よって最低限のお金以外、持ち出しが許されないのではなかろうか。トレボーとマルグダ女王の微妙な関係性がうかがえる。
となると疑問なのはキャラが消失したり、登録を抹消したりしたときのアイテムの行方だ。副葬品として棺に入れられたり、一緒に壁の中にテレポートして失われるのは分かるが、引退した冒険者はどうやって故郷に装備や大金を持ち帰るのだろうか?
もしかしたら安物に偽装したり、樽に隠したり、門番に賄賂を使ったりしているのかも。ここまでくると、もう勇者か密輸業者か分からない。
実際、宇宙の勇者には密輸業者もいたけどね。銀河系最速のガラクタに乗ってた人が。
ちなみに君主の聖衣はファミコン版だと聖なる鎧という名前に変更されています




