031 簡易寝台とロイヤルスイートが同じ宿にある理由
久しぶりにウィザードリィネタだ。
このゲーム、体力や魔力を回復させる施設が「冒険者の宿」なわけだが、複数の部屋が用意されている。具体的には、
馬小屋(日数経過せず。無料。体力回復せず。魔力は全ての部屋で全快)
簡易寝台(一週間10ゴールド。体力1ポイント回復)
エコノミールーム(50ゴールド、3ポイント)
スイートルーム(200、7)
ロイヤルスイート(500、10)
の五種類。なおご存じの方も多いと思うし察しもつくだろうが、ゲーム的には加齢対策のため、HPは魔法で回復させ馬小屋に泊まるのが鉄則である。
実際には高レベルのパーティが馬小屋はないだろう。ベニー松山氏の小説「隣り合わせの灰と青春」だと、主人公と戦士は簡易寝台、魔法使いはロイヤルスイート(酔い潰れたから放り込まれただけで普段は違うようだが)に泊まっていた。忍者と僧侶は修行の一貫なのか馬小屋だったけど。
松山氏の設定だと、冒険者は荒くれ者も多く、また鎧をガチャガチャ鳴らすため騒音のクレームもあり、一般の宿泊客とは別に冒険者専用の宿が用意されたとされている。
なるほど納得だ。が、その一方でこれは極めて人口密度が高く、またワードナ討伐令のため一種の特需が発生しているトレボーの城塞都市ならではの非常措置なのかもなぁ、などと思ったりもする。おこがましいことだけれど。
当然ながら、宿には「格」の違いがある。
現代に例えれば馬小屋は倉庫か駐車場、簡易寝台はカプセルホテル。エコノミーはビジネスホテル、スイートなら一般的なリゾートホテル、ロイヤルで高級温泉宿といったところか。
ゲーム上では「冒険者の宿」という同一の施設に各部屋があるが、ワードナ関連の事情がない普通の状態なら、部屋のランクごとに別々の宿があり、貧乏な低レベル冒険者は木賃宿に、勇者パーティみたいな人たちは高級な宿に泊まっている、と考えたほうが自然だと思う。
少々語弊のある書き方だが、レベルや装備のランクが違いすぎる人たちが同じ宿にいるのは、お互いにいい気分ではないだろうから。トレボーはそんな事情など知ったことかと、冒険者たちに特定の区域を押しつけ「冒険者街」とも言うべき地区を作ったというわけだ。
ここからは本格的に考察を逸脱して妄想になるが、元々治安の悪い貧民街を強引に開発したのかも、なんて気がする。
氏素性も知れぬ流れ者、捨て駒の冒険者を物騒な場所に押し込め、いくらかの報償金をちらつかせてギャングなどを撃退させることで、治安の回復と反社会的勢力の衰退を狙って。ならず者のアジトに賞金稼ぎの集団をけしかけた感じか。
「隣り合わせの~」ではグレブナーグなる人物がトレボーの参謀だったが、この人は主君と同じく悪辣だったので、彼の発案かもしれない。なお、その一方で冒険者による犯罪も多発しており、過酷な開墾作業をさせる罰則が設けられていたことも付記しておく。
トレボーのとこに限らず、新しいダンジョンが発見されるなどして人が押し寄せてくる頃、つまりダンジョンを中心とした都市の勃興期においては、荒くれ冒険者は地価の低い地域を押しつけられていたが、ダンジョン資源が都市の経済に与える影響が増すにつれ地位も向上し、ギルドが一等地に移転したケースもあるかもしれない。
ちなみに学園が舞台の「ウィザードリィエクス」にも馬小屋はあるが……流れ者の冒険者はともかく、国が育成してる学徒が、宿代がなくて馬と一緒に寝てるのだろうか?
もしそうなら、聖戦学府の指導方針にはかなり問題がありそうだ。各校の校長に、一度じっくり話を聞いてみたいものである。
なおエクスシリーズにおける聖戦学府の寄宿舎の部屋は、馬小屋と宿舎の二種類だけ。イカロスでは馬小屋の代わりに水槽だった。おそらくSF映画によくあるメディカルマシンの類と思われる。




