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028 バトル描写の名脇役、盾

 もういい。おまえの役目は終わった。


 鈴木直人氏(十六話参照)の「ドルアーガの塔」で、ラスボス戦でガタがきていた盾が壊れ、塔の下に落ちて見えなくなったとき、主人公が一瞬、友に別れを告げるように感傷的になるシーンのモノローグが、なぜかとても印象に残っている。さて、今回は盾について語ってみたい。


 盾の用途はいろいろだ。


 むろん防具であることが第一だが、紋章が描かれ所有者を識別する役目もある。婚姻関係によっては複数の家紋をひとつの盾に描くことも。たしか最高記録は三百を超えていたろうか……無数の家紋がパッチワーク状態、もう何がなんだか分からない。


 識別に使われたのは古代も同じだ。昔読んだギリシャ喜劇に「盾」というお話があった。

 野営のさなか奇襲を受け、てんでんばらばらに手近な盾を持って迎撃する戦士たち。ある従者は主君の盾を持った遺体を遠目に見て、主が死んだと思い込む。だがそれは別人で、葬儀に本人がひょっこり現れ、一同が喜びに包まれるオチだ。


 攻撃面を見てみよう。盾は鈍器でもある。


 ウィザードリィに登場するマジックシールドは、先端の尖った部分で突くのか攻撃力が高い。冨士宏氏の漫画「ワルキューレの栄光」では、主人公が丸盾ラウンドシールドの円盤投げで二体の敵を同時撃破という離れ業を見せた。実際の西洋剣術でも、盾で相手の動きを封じる戦法が確立され、攻防一体のテクニックとなっているそうだ。


 大盾ラージシールドに限られるものの、珍しい使い途として布団がわりというものも。アーサー王物語では騎士が昼寝や野宿をする際、盾を下に敷いていた。今日でいう断熱マットか。


 私はこの使い方に驚いた。ドラクエだと強力な盾は軒並み金属製だし、ウィザードリィでも上位アイテムはレアだから鉄の盾(シールド+1)がメインとなるので「盾は金属」という先入観があったが、寝るのは木製でないと無理だからだ。金属製だと体温を奪われるため、熱帯夜でもない限り眠れたものではない。


 材質の違いは重要だ。


 重量やコスト、衝撃吸収などの都合から、部分的に鉄で補強してはいるが木製が主流だった盾だが、魔物が相手のファンタジー世界では、強度の関係か金属製が多い。リアルだと現在の盾は防弾素材だが、中世の文明レベルではまだ鉄のようだ。

 キャラが難聴にならないか心配になる。攻撃受けたらガンガンガンガン! 若い命が真っ赤に燃えるかは知らないが、うるさすぎ!


 なので私は自作品では原則として盾は木製、消耗品扱いにしようかと考えている。戦闘以外の場面で金属製と違う使い方もあるし。魔法で小さくなっていかだがわりにするとか、たきぎにしてヒロインと人肌で暖めあうとか。


 人面樹トレントで作ったものならウッドゴーレムに変型できるかもだし、世界樹ユグドラシルの盾なら勇者どころか神の持ち物でもおかしくない。材質が変われば描写も変わるのだ。


 その一方で、盾は不遇のアイテムでもある……。


 騎士物語では、馬上槍試合で二人が激突すると、たいてい盾は壊れる。この描写は「やるな! だが勝負はこれからだ」という雰囲気を出すためっぽい。史実だと槍をわざと折れやすい素材で作り、相手の盾に当てて槍が折れた回数を競う試合形式も存在したらしい。

 金属の盾も敵の強さを見せるために破壊されがちだ。また材質を問わず、一撃必殺狙いや覚悟を決める演出で盾を捨てるシーンもよくある。


 武器に比べて地味な盾だが、このように書き方しだいで起死回生の一手にも、バトルを盛り上げる前座にもなる便利アイテムだ。これを読んでいる中には作者の方もおられることと思うが、ぜひともあなたなりに工夫して、名脇役たる盾に見せ場を作ってあげてほしい。

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