013 主人公の初期装備を考えてみる
ファンタジー小説やRPGにおいて、定番の武器が剣だ。なにせ「剣と魔法の世界」と言うくらいだし。見た目がヒロイックだから、伝説の剣もたくさんある。
ゲームだと入手が容易なこともあって、深く考えずに最初から最後まで剣を装備しているかもしれない。だが考えてみたら、冒険を始めた時点の主人公には、むしろ剣は不似合いなのではなかろうか?
なぜなら剣は富と権威の象徴だからだ。ただの鉄の棒と違って、作るにも手入れするにも、技術と手間とコストがかかる。当然、それ相応の地位にある者しか持てなかった。
システム上では省略されていることが多いが、普通の材質なら一回戦ったら刃なんてボロボロ、ヘタすりゃそのまま廃棄処分だ。そうでなくとも長~い刀身を、全部研ぎ直さねばならない。
もちろん、専門の研ぎ師に依頼すれば結構な出費になる。自分で研げればいいのだが、ヒロインそっちのけで宿で砥石と格闘するわけにもいかないだろう。そう考えると剣というやつ、その日の食費や宿代にも苦労する序盤の主人公には、ちょいとハードルが高い武器のような気がする。
それに剣は技術的にも容易に使いこなせるものではない。スタート時点で主人公が素人なら、最初は安価かつ特殊な技術のいらないメイスなんかを持たせてみるのもよい(むろん、主人公のキャラクター性がブレないよう、最初から最後まで同じ系統の武器を使わせるのもいい。その辺はこれといった正解はないので、最後は好みの問題になる)だろう。
ドラクエのどうのつるぎは実質的には鈍器だと思うが、王様がこれをくれたのは、研ぎの手間とコストを考慮してのことだったのだろうか? 銅は軟らかいから、鋼に比べると曲がりやすい反面折れにくいし……。なんだ、王様ちゃんと考えてるじゃん! ただのケチじゃなかったんだ!
駆け出し時代は安価な鈍器を使っていた主人公が、維持費の高い剣に持ち替える。これは物語を書く上でも、実力的な成長や収入の増加つまり成り上がりを読者に伝えるのに使えるかもしれない。
アレだ、はがねのつるぎを買えたら序盤終了というやつである。
王様によっては武器じゃなくお金をくれる人もいる。たった120ゴールドだけど。あと松明とカギ。現物支給なら迷わなくて済むのだが、こうなると困ってしまう。さて、この乏しい軍資金で何を買おう?
ヒーローたるもの見映えにはこだわりたい。いくら安価な武器がいい序盤であっても、さすがに勇者が最初に使う武器がたけざおというのは、一揆を起こした農民みたいでちょっぴりアレだ。ここはやはり樫の棍棒を用いたヘラクレスにあやかって、こんぼうにしよう。
これは英雄の伝説を再現する儀式なのだ。決して王様が小銭しかくれなかったからじゃないのである。
強い武器なら効率よく敵を倒せるので、ついつい武器を優先させてしまうけど、防具もしっかり買いましょう。さすがに幼女の前でシルクハットとステテコパンツはどうかと思います。




