012 「そんな物には興味がないですね」……ホントに?
またまたウィザードリィの話題だ。
しばしば「ボッタクル商店」と揶揄されるボルタック商店だが、実は良心的という声も多い。買った鎧を問題なく装備できるのは無料でサイズ合わせなどをしてくれるから、武器が劣化しないのはアフターサービスとして研ぎをしてくれるから、などの説があるからだ。
また、在庫がいくらあっても必ず売値の半額で買い取ってくれるのも嬉しい。ゲームシステム上では在庫が減ることはないが、実際には冒険者だけでなくリルガミンの軍や貴族など大口の取引先でもあるのだろう。
その一方で不可解なことも目立つ。明らかに価値があるのに、買値がつかないアイテムが少なくないのだ。
特にシナリオ2はその傾向が強く、催眠や沈黙の魔法を使える石、知恵や信仰心を上げる石、レベルをそのままに職業を変えるコインや指輪、大量の経験値を得られる護符、極めつけは一歳若返ることができる若返りの石。これらがいずれも、大金を積んででも欲しがる者は多いだろうに買い取ってもらえないから困ってしまう。
店を有料預かり所として使えないから、酒場はレベル1の荷物持ち要員でいっぱいだ。ちなみに筆者は、「酒場の用心棒」とか、「吟遊詩人」「ウェイトレス」「バーテン」など、テキトーな名前をつけている。
さて話を戻して、店に売れない理由を考えてみたい。まさかボルタックに見る目がないわけでもなかろうし。私は一連のアイテムはご禁制の品扱いで、売買が許可されていないのではないかと思う。
眠りや沈黙の魔法石が一般に流通したら、防犯上の問題が起きるのは目に見えている。知恵や信仰心を上げるのは……庶民が余計な知恵をつけたら困るとか、教会の布教が効き目ないみたいで体裁が悪いとか? 使ったら灰になる石は安全上の理由と察しがつくけど。
職業を変えるアイテムが売買されるのは、司教などの宗教的な職業の地位を金でやりとりすることを意味する――もしかしたら教会は既に聖職売買に手を染めており、商人にその既得権益を奪われたくないのかも――し、中立の者が聖職者になることで神学上の難しい問題も出て(僧侶系の職業になれるのは善か悪の性格のみ)くるはずだ。
若返りの石も宗教的な戒律の関係だろうか? 不自然な方法で寿命を伸ばすのは、運命を与えたもうた神を否定することだとかなんとか……。
各アイテムがご禁制の理由は推測の域を出ないが、マルグダ女王がルールに厳しい風紀委員長のようなタイプであるか、魔人ダバルプスに都を追われ逃亡生活を送ったせいで(さらに言うなら弟のアラビク王子も死んで後ろ楯がない)権力基盤が弱く教会の言いなり、あるいは逆に女王は信仰心が非常に強く、むしろ教会に肩入れしている、などが考えられるだろうか。
いずれにせよ、彼女ないし教会がいくら売買を禁じようと、裏でやりとりされるのは止めようがない。なんせ酒場の床には、「アイテムを捨てる」コマンドで投棄された石やコインが、そこら中に落ちているだろうから。




