011 パーティ内での種族の比率を考えてみる
ウィザードリィがファミコンに移植された際、ユーザーに受け入れられた要因のひとつが末弥純氏の絵である。これに異を唱える者はいないだろう。
♯1のイメージイラストは、ダンジョンの入口で探索の準備をする六人が描かれており、メンバーを種族別に分類すると人間が二人、エルフ、ドワーフ、ノーム、ホビットがそれぞれ一人。プレイヤーが選択できる五つの種族が揃っている。
が、これはあくまで一枚の絵でゲームの内容を伝えねばならないメインビジュアルだから。実際にはこんなパーティは少数派だと思う。
そもそも各種族の人口比率は均等ではない。明確な設定はないが、繁殖力の強い人間が最も多いとされている資料が大半だ。仮にリルガミンの総人口の半分が人間で、残りを四種族が均等に占めているとすれば、パーティに全種族がいるのがレアケースになるのは容易に想像がつく。
さらに、体質的にも気質的にも、冒険者になりやすい種族というものがあるはずだ。
大雑把に言うと、世俗的な欲が強い人間、貴金属に執着するドワーフとノームは、一攫千金を夢見て冒険者になる比率が高いと思われる。生命力の初期パラメータが高い(人間とノームが8、ドワーフは10)から尚更だ。
対して、エルフとホビットは総じて平穏な暮らしを好むという。そして彼らは虚弱体質(生命力6)ときている。ただでさえスローライフ派なのに、肉体的にも荒事に向かないとあれば、エルフとホビットの冒険者は人間らに比べて少ないと考えるのが自然だろう。
加えて、エルフは芸術家肌の者が多く、体育会系のドワーフとは(種族全体の傾向として)反りが合わないとされるし。
それでもエルフはまだいい。知恵と信仰心の初期値が10なので、魔法使いにも僧侶にも簡単になれる。そしてそれらの職業はパーティに複数いてもよいのだから。
厳しいのは素早さと運に特化し、盗賊専用種族ともいうべきホビットだ。よほどの才覚がなければ他の職業にはなれず、そして盗賊はパーティに一人しかいらない。当然、その枠を奪い合うことになる。
この辺の事情を人口比率と合わせると、パーティの内訳は人間が半数前後、ドワーフとノームがちらほら、エルフは比較的珍しく、ホビットはさらに珍しい……と考えるのが無難かと思う。
考えることは皆同じとみえて、ベニー松山氏の「隣り合わせの灰と青春」だと、主人公スカルダのパーティは全員が人間、ライバルのハ・キムが率いるパーティはホビット、ドワーフ、人間二人、ノーム二人。どちらにもエルフがいない。
無論これは全体的な傾向の話だ。同郷や同族のコミュニティは当然存在し、全員エルフやホビットのパーティだって、珍しくはあるがいるだろう。そんなパーティの視点でゲームをしたいなら、そういう編成や脳内設定でプレイすればいい。
どんなパーティで冒険するにせよ、キャラクターを作る際には有利不利のみにとらわれず、彼らの暮らす世界の状況などを想像してみよう。きっと思い入れが増し、よりゲームを楽しむことができるはずだ。
移植の評価が高い別の要因は、羽田健太郎氏の素晴らしい音楽だ。これもまた万人が認めるところだろう。
末弥氏が仕事で携わる前からウィザードリィをプレイしていた古参プレイヤーなのに対して、羽田氏はウィザードリィを全く知らなかったため、ウイザー鳥という鳥類かと思った、というのは有名な話。
どちらも素晴らしい絵や楽曲を提供してくれたことは同じだが、事前の知識がまるっきり逆なのが面白い。




