それはいつもの帰り道だった
数年前、帰宅中の女子高生二人が通り魔に刺し殺された。
犯人は未だ見つかって居らず、私は連日報道される事件のニュースを見て眉を寄せる。
照り付ける真夏の暑さ、クーラーを付けても暑さを感じる今日。
実を言うと、私には以前の記憶がない。
実は未解決事件のあの日、側溝で頭を打ち倒れてるところを発見されたんだ。
今は記憶が無くても、家庭を持ち幸せに暮らしている。
あの事件から10年が経とうとしていた。
薄暗い夕方。
私は愛犬と散歩をしていて事件現場を通り掛かった。
耳鳴りと頭痛を感じて、私は思わず電柱に手を付いてしまう。
愛犬は何かに怯えるように尻餅を付いた。
すると、私の目の前に血塗れの女子高生二人が現れる。
【貴方が私達を殺したのに】
【忘れるなんて赦さない……!!】
彼女達は、濁った目で私に叫ぶと私の身体に触れた。
次の瞬間、私は全てを思い出す。
そうだ、私は……幸せそうな人間を殺す事に快楽を感じていたんだ。
事件の犯人も私の犯行だった。
女子高生二人に礼を言うと、犬を放して私は家に帰った。
テーブルにあった果物ナイフを掴むと、私はキッチンへと向かう。
そして何も知らない夕食の準備をしていた妻を、何度も何度も後ろから刺して殺した。
あぁ、快感でたまらない。
これだよ、これが私の大切な快楽の感情だ。
騒ぎを聞き付けた高校生の息子や、中学生の娘を次々と惨殺する。
どうぜ、妻の連れ子だ。
愛情なんて一切感じない。
やがて、警察官達が駆け付けた。
何故か警察官は、返り血を浴びた私をまるで化け物を見るような目で見つめる。
「止まれ!!」
警察官が叫ぶが、私は快楽を求めて警察官に包丁を持って近付く。
警察官は私に拳銃を向けると発泡した。
腹、胸、頭を打たれた私はリビングに倒れる。
【あはははは!!】
【ざまあ!!】
死ぬ間際、私の耳に女子高生二人の声が聞こえた気がした。