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通常モードは暴走列車~悪役って誰が決めるんでしょう?  作者: 楽々ふぉん
第一章 第一部 日常
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指導と始動

 案の定よ。

 嗤っちゃうわ。

 軒並み食中毒を出してくれました。


「イリス、アンタが言った通りになったよ!」


「えぇ、女将さん」


「今日からうちも卵料理」

「だめよ! 絶対に卵料理は出したらダメ!

 お店で持ち帰るって言う人には、保証できないって事を伝えておくの」


「そうなのかい?」


「えぇ、この食中毒は卵が原因だから」


 この世界で食材を冷蔵や冷凍で保存するって考え方はまだないし、卵に対しても他の物に対しても衛生的な部分はかなり低い。

 これ以上は作り手が考え方を変えて行かないと延びて行かない話だわ。


 

 夜になると他のお店が閉まってるから、ヒバリが丘亭は満員御礼状態だった。


「聞いたか、悪女が病気を撒いてるって話だぞ」


「悪女のせいだったのか!」


「それに責任を感じた侯爵家の聖女様が、病気を治してるってよ」


 はぁ? なにそれ?

 普通の食中毒なら、お腹が下って吐いてを繰り返したら回復するわよ!

 その聖女さまって妹って事よね。


「聖女様なら、何でも治せるのかしら」


「当たり前だろ、聖女様なんだから」


 へぇ、そうなんだ。

 悪女が病気を撒いてるって言うなら、本当にしてやろうかしら。

 私が残飯を食べさせられて、お腹を下してたんだし。

 コレラとかも良いわね。

 

 でもそんな事に巻き込まれる第三者がいるのは心情的に嫌だわ。


「いくら侯爵家の長女だからって、さっさと処刑しちまえば良いのによ」


「そうだよなぁ、心が広いって言うか」


 殺せないからでしょ。

 私が死んだら、国に全部持って行かれるんだから。


「聖女様って見た事ないから、一度見て見たいわ」


「それなら救貧院に行けば会えるさ。

 施しをしてるって話だ」


 行ってみようじゃないの。


「ありがとう、私も聖女様を手伝えたらいいのに」


「イリスはいい子だなぁ、女将さんも良い子を雇ったよな」


「そうだろ? この店がちゃんとやってられるのも、イリスが回してくれてるお陰だよ」


 あらあら、貴方たちが悪しざまに罵ってる悪女が私なのに、変ねぇ。

 まぁ確かに卵が食中毒を起こしやすいって、誰にも話してないから、撒いたって言われたら撒いたのかもしれないわねぇ。


 

 




 夜はヒバリが丘亭で働くようになって数カ月が経ってるのに、侯爵家では誰も私がいない事に気づきもしていないってある意味凄いって思えたわ。

 たま~に、ほんとたま~に、来客がある時とかに嫡子として呼ばれることはあるけど、私の悪女って評判が際立ってからは私を知る来客は無かったもの。

 お客様の前で悪女と思われても仕方ないような振舞なんか、したことも無いのに噂だけが独り歩きしているのはおかしくないかしら。

 定期的に噂を作って流されている感じしかしないし。


 そろそろこの家を出て行っても生活が出来る基盤が見えて来たし、気楽な一人暮らしをしようかしらね。


 あ、でもその前に本当の悪女らしくここのメイドや執事長を指導しておかないとね、この先ここの偽家族が困るわよね。

 荷物も特に無いし、このままでいいかしらね。

 どうせ向こうも私が指導しにくるなんて思ってないでしょうし。

 何と言っても、今日はこの国の皇太子殿下が聖女様にお会いするために来るそうですから、私の事など構ってる暇はないでしょうしね。


「お嬢様、こちらにいらしていたんですね。

 最近はお食事も取りに来られないので心配していましたよ」


 あら、執事長がニヤニヤ笑いながら、部屋に、いいえ、狩猟小屋に残飯を持って入って来ましたわ。


「えぇ、特に必要なかったので、貴方たちの楽しい時間を煩わせたくなくて」


「お嬢様にお気を使わせてしまい申し訳ありません。

 本日は、このお部屋から出歩きなさらないように、先にお食事をお持ちいたしました」


 そう言うや否や私の髪を掴んで持参した残飯に顔を突っ込ませようとしましたけど、私、その持ってる残飯を執事長の方に押しやりましたのよ。

 だって、多分、間違いなく、眠剤か下剤のどちらかが入った物でしょうしね。


「あ、眩暈が」


 ベッシャ!!


「ぎゃぁ!

 この!」


「あらごめんなさい、汚してしまいましたわ」

 

 前世の記憶を駆使してみました。

 私って、強かったのねー。

 自分でも関心するくらい、記憶だけなのに体が動きましたわ。


 まるで覚醒したマトリ〇クスのキアヌみたいな動きで、執事長を抑え込んでしまった。

 なんでも有りってわけでもないけど、前世の私からしたらこの動きが出来るって凄い事だわ。

 それに妹が聖女だって話だし、なんかそういう汁じゃなかった、涙とかそんなので奇跡が起きちゃうアレかしら?


「あら、お下品です事。

 紳士淑女はどんな時でも声を荒げてはいけないのですわ」

 

 関節を決めてあげたらぎゃぁぎゃぁと喚くし、口は臭いし、歯周病でも持ってるんじゃないかしら。


「貴方が執事長ではこの家も長くは無いですわね」


「ぐぅっ!!」


 背中から腕を逆手にひねって私の羽根の様に軽い体重で押さえつけてるのに、声も出せないくらい苦しむとか……、本当に軟弱なくそジジイですわ。



 

 

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