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通常モードは暴走列車~悪役って誰が決めるんでしょう?  作者: 楽々ふぉん
第一章 第二部 可及的速やかに
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婚約発表

 婚約者に仕立て上げられて、今日は婚約発表の舞踏会当日になってしまいましたわ。


「さぁ、もう一息息を吐いて、吸ってー!!」


「ぐえぇぇ!!」


 恰幅の良い侍女が、コルセットで私を締め上げますが、これ以上は無理ですわ。

 もう、骨ですわよ、そこは!!


「なんて声を出すんですか、お嬢様は!」


「だって、そこはもう骨ですわよ」


「確かに、他のお嬢様に比べたら、細くて細くて枯れ枝の様ですけど、コルセットは凸凹を作る物ですからね」


 要は、棒っ切れにへっこみを付けてるんだって事ですわね。

 なんですって!? 自分で確認しといてなんですど、そりゃぁ虐待を受けていたのでカスカスに痩せてますわ。

 でも、一応、ちょっとは凸凹してますわよ!


「さぁ、一等綺麗なお姫様になりましたよ」


 侍女は満足げに私を鏡の前に立たせると、確かに自分ではないくらい、繊細そうな娘がこちらを見つめていました。


「私って、こんな姿でしたのね」


「おやまぁ、苦労されたんですね」


 ざっくりと事情を聞かされているらしい侍女は、私のこれまでの環境が想像出来たらしく、少し涙ぐみながら微笑んでいましたわ。


 それこそ枯れ枝の様な体を隠す、レースの高い襟に繊細な刺繍が金糸銀糸で縫い取られた長い袖、おしてふんわりと広がったスカートの中に幾重にも重ねられたパニエがごぼうの様な足を隠してくれた。


「しっかり婚約者役を務めさせて頂きますわ」


 そうですとも!

 私が本当の婚約者ではなく、偽家族共が手を組んでる貴族を炙り出すための婚約発表ですもの。

 聖女より強い、女神を演じて見せますわ!






 女優の舞台は盛大な舞踏会で、入場の名前が告げられる。


「ロアール皇太子殿下とイエニス・ドルアー侯爵令嬢の御入場です!」


 皇太子入場の案内に次いで、私の名前が挙がったことに空気だけでざわついたわ。

 皇太子殿下に手を取られて中心部へ歩き出すと、無作法な囁き声があちこちから聞こえて来ましたけど。混釈者の役をしてる私にとっては痛くも痒くもありませんわ。

 不細工だの、気持ち悪いだの、身の程を弁えろだの、悪女の断罪をだのと聞こえるように話されてますけど、隣に皇太子殿下がいらっしゃる以上、そのパートナーを貶めるなんて許されませんわよ?


「イエニス、本当にお前は子供とは思えんな」


「社交界デビューはさせてもらえませんでしたが、あと三年で成人ですわ。

 そうなると、あの偽家族が私を始末したくて仕方無くなるでしょうね」


 どこかの老人貴族のお妾さんならまだしも、娼館とか、奴隷とか、後は人知れず病気で身罷られた、とかよね。

 どっちかって言うと、殺されて終わりな気がしますわ。


「殿下は今日で成人でございますわね。

 このタイミングで婚約発表をするなんて、誰も偽物とは疑いませんわね」


 ほほほ、と笑いながら話す姿は、内容が聞こえなければ想い合ってる2人の様に見えた事でしょうね。


「イエニス、お前は……、まぁいい。

 今日は素晴らしく綺麗だ、あともう少し肉がついても良いな」

 

 仲睦まじい二人の世界と言わんばかりに、耳元で囁いてくださいましたわ。


「嬉しゅうございますわ。

 殿下からのお言葉、とても待ち遠しく感じておりましたの」


 敢えて聞こえるように、勘違いさせる単語を並べてみますと、プロポーズでもされたかと、周りは勝手に踊ってくれましたわ。


 殿下との会話的には全く噛み合ってませんけど、一言一句聞いてる方はいらっしゃらないでしょう?

 ねぇ、義父様、義兄様、そして聖女様。

 あら、義母が見当たりませんわね。

 なにやら画策されていらっしゃるのかしら。

 楽しみだわ。



「皆の者、今宵はロアールの成人の儀に集まってもらい、有難いことだ。

 そして嬉しい発表をする。

 ロアールとイエニス嬢の婚約を正式に発表する!」


 その瞬間、会場は拍手と悲鳴と、罵声が上がりましたわ。


 


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