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3/27

実は白い結婚でした 3


「…………お慕いしていた、と言ったら、信じていただけるのでしょうか?」


 どこか愁いを帯びたその表情は、私が知っているレザール様のものではないみたいだ。


「え? 慕う……? え?」

「あの時の俺は、力を持たず、あなたをえん罪から救うことが出来なかった。あれほど、己の無力を悔いたことはありません」

「…………え?」


 王立魔術師団長に上り詰めているレザール様は、今はもう王国軍の中心人物だと見なされているらしい。

 そして、ものすごくもてるのに、女性に興味がないのかというくらい浮いた噂一つなく、恋人も婚約者もいないという……。


 魔術師団長として戦えば、誰よりも強く、いつも戦いに明け暮れているらしい。


 なんとか私が集めた噂話は、それだけ。

 なぜか社交界にもほとんど姿を現わさないという末の王子。レザール様の情報はほとんどなかった。


「会いたかった」


 レザール様は、切なさを滲ませて笑ったように見えた。


「……レザール様」


 変わってしまったレザール様に、戸惑いを隠せない私。

 戦いに明け暮れている、という時点で、かつての可愛らしく庇護欲をそそるレザール様とは違うって、気がつくべきだったのだろうか。


「リーフ辺境伯が、もしもあなたに無体を働くような人間なら、追い落としてしまおうと思っていたのですが……。仁義に厚く、あなたに指一つ触れなかったそうですね?」

「え!? 何でそのことを……」

「……魔術師団長に上り詰めたのは、全てあなたを取り戻すためですから」


 無邪気だった微笑みは、今は少しだけ暗く淀んでいる気がする。

 ジリジリと下がろうとするのに、同じだけ距離を詰めてくるせいで、私は壁際に追い詰められていた。


(あ……。あれ? 周囲に通行人がいないわね?)


 気がつけば、普段人があふれているメインストリートのはずなのに、不自然なほど人がいない。

 まるで、王都に私たち二人だけが取り残されたみたいだ……。


「さて、毎日誰を捜していたのですか? あなたが興味を持っている男性を、俺は……」

「ひっ! あの! レザール様を捜していました!!」

「え……? どうして」


 驚きに見開かれた、薄い色彩の瞳。

 どうして、そんなに驚いているのか、と状況も忘れて私は首を傾げる。


「だって……。ずっと好きでしたもの」

「は…………? えっ!?」


 壁に私を追い詰めて、壁ドン未遂だったレザール様の頬が真っ赤に染まり、それを腕で隠している。

 その姿は、私の知っているレザール様そのものだった。


「そう、ずっと好きでした(推しとして)」

「え……? 本当に」


 次の瞬間、私は強く抱きしめられていた。

 抱きしめた手を離した後も、赤い顔と潤んだ瞳で私を見つめるレザール様は、可愛らしい。

 そのことで私は大満足だった。


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― 新着の感想 ―
展開早い。 でもジレジレ短縮でこれも良き!
[一言] 短編からお邪魔します! 長編で読みたいと思ったら!うれしいです(* ´ ▽ ` *) 素敵なお話が読めて感激です( =^ω^)
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