リベンジ戦、ということになりますか。
「これで、どうでしょう……。あなたのお眼鏡にかないましたか?」
灰色の世界を鮮やかに照らしました。とはいえ、何回目の挑戦かはもう覚えてないんですけどね。
『まあ、今日の所はいいでしょう。とはいえ、これは乱用してはいけませんよ。人の身でありながら神の奇跡を行使する以上反動もかなり大きいですし、何より無駄に使いすぎると神罰が下りますからね。奇跡を行使できる人間がかなり限られているということはそれなりの理由があるということをしっかり覚えておいてください。』
「分かりましたよ。それよりも早く戻してください。あの二人が倒れていますし、リュウマさんからも不穏な感じがします。」
『……まったくしょうがないですね。せっかくですからあのトカゲで練習してきなさい。なに、今回だけは特別です。私が神々に説明しておきますし、そもそも必要に応じてであれば彼らも怒りませんから。
というわけで、行ってらっしゃい。今度会う時を楽しみにしておきます。』
そうヘカテーが言うと、私の体が少しずつ沈み始めました。沈むというよりは、下にある私の体に戻っていこうとしている、という方が正しいでしょうか。
「……一応お礼を言っておきます。ありがとうございます。」
『礼は不要です。』
それだけ言うと、ヘカテーは私の前からその姿を消してしまいました。……結局ヘカテーの正体がわからなかったですね。真祖と言っていましたが、その真祖というものも私にはよくわかりませんからね。
まあ、それよりも今は早くあのドラゴンをどうにかしないといけませんよね。その前にリュウマさんも止めないと。
「ちょっと待っててくださいね。今戻ります。」
一瞬の視界の暗転の後、体に感覚が戻りました。耳に音が、鼻に匂いが、目には光が入ってきます。
戻ってきました!目の前にはどこか悲壮な覚悟を決めたリュウマさんの後ろ姿があります。何をするつもりかは知りませんが、その必要はありません。
「何を、しようとしているんですか?」
「……ルナちゃん!?目が覚めたんだね。でもちょっと待ってて。あの二人を助けないと……!」
質問にはしっかり答えましょう。って言っても今は難しいですか。イゾウさんもアカリさんももう満身創痍。それなのにドラゴンの一番近いところで倒れていると。……まあ私からしたらあの魔法を生き残った時点で十分化け物なんですけどね。
上から見ていただけですが、本当に威力がおかしかったですよ。これが文字通り天変地異だと言われたら信じられるくらいの規模でした。ヘカテーは「相変わらずトカゲは頭が悪いですね……。」とか呟いていましたが。
後ろから止まろうとしないイゾウさんの肩を掴んで後ろに引き倒しました。
「だから、何をしようとしているのかって聞いているんです。それをしようとしてさっきアカリさんとイゾウさんに怒ってたんじゃないですか?」
「何をするんだッ!急がないと、二人がッ!……え?君は、誰だ……?」
おや、リュウマさんでもこんな風に声を荒げるんですね。それにやはり一目見ただけじゃ私がだれ分かりませんか。
髪の毛はさっきよりも伸びていますし、背中には今翼を出していますからね。
さて、ここで決め台詞。さっきヘカテーが言ってたのを少しだけ真似してみるとしましょう。
「私ですか?ルナですよ。いずれ生けとし生けるものの頂点に立つ者、吸血鬼が真祖のルナちゃんです。」
……。
…………。……恥ずかしい……。これで言うのは最後にしましょう。それに何も反応がないのも引かれているような感じがして嫌です。
とにかくその場にとどまっているのも怖かったし、ドラゴンと二人の距離もあと少しでなくなりそうだったので、とりあえず翼を震わせて思いっきり飛び出しました。
ついでに魔法をおひとつプレゼントしておきましょう。お礼参りというやつです。知りませんが。
「血属性魔法 裂血・エクスプロード!」
「ぐぎゃああ!!いってぇな、この野郎!突然魔法なんて撃ってきやがって、今はこいつらと遊んでいる最中だろうが!てめぇはその後だ!」
鼻先で起こった大爆発にたまらず、ドラゴンが少し後ずさりしています。
「おや、残念です。その鼻っ柱を叩き追ってあげようと思ったんですがね。それよりもよくも、やってくれましたね?この人たちは私の友達なんですよ。」
「はあ!?だったらなんだってんだ!?さっさと失せろや!この……。」
そこで初めてドラゴンが私のことを見ました。
「てめぇ、吸血鬼か!?……ぎゃっはっはっは!そうか、そういうことか!なんで雑魚共じゃなく、俺様がこんなところに呼び出されたかと思えば、てめぇがいるからか!こいつらも十分楽しかったが、そうか!まだまだ、メインディッシュはこれからってことか!!」
ドラゴンは勝手に一人で大騒ぎすると、すっと動きを止めて、長い首をまっすぐに持ち上げました。そして先ほどまでのふざけた口調を引っ込めて低い口調で名乗りを上げました。
「我は偉大なる王の子、竜の統率者たる五帝龍の一つ、雷龍 ロチエクレト。五千年前、神がこの世界から消えたその時から天を支配する最古の龍だ。」
そうなんですか。……。
……なんかもしかして待ってたりします?ええ……?これは私も名乗らなきゃいけない感じですか?しょうがないですね……。
少しだけ翼を広げて少しだけ習ったカテーシーをしてから口を開きました。
「私は夜の王にして吸血鬼の真祖。ルナです。」




