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私になかにいるナニカ

 ……私は今一体どこにいるんでしょう?確かさっき紅い月を見て、それから……!


 そうです、今私達はあの大きいドラゴンと戦っていたんでした!あのスタンピードの時と同じくらいの大きさの!


『目が覚めましたか?』


「誰ですか!?」


 突然声が聞こえてきました。視界には何も映っていなくて、ただひたすら色の褪せたモノクロの世界が広がっています。私以外周囲に何もない。そんな場所に聞いたことがあるような声が聞こえてきました。


『我が半身とはいえ、言葉には気を付けるように。』


「はぁ……。」


 すっごい偉そうな声音ですね。


『偉そうではなく、偉いんです。とはいえ、会話をするというのに互いの姿が見えないのも少し面倒ですね。少し待ってなさい。』


 なんですか、心の声も読んでくるんですか。……と、私の前にゆっくりとその姿が現れてきましたね。その姿は、


「私、ですか……?」


『違います。あなたが私なんです。少し違いますがイメージ的には私がオリジナルで、あなたがスペアということです。』


 ……?つまり、私があなたに似ているということですか?目の色が違うのはどうしてでしょう?


『その通りです。ですが……それが今本当に聞きたいことですか?』


「いえ、違いますね。ここはどこなんでしょうか?今この時も私の知り合いがドラゴンと戦っているんです。すぐに戻らないと……。」


『でしょうね。今のあなたはあそこでは文字通り足手まとい。ですがあの鬼たち、……いえ、一人厄介なのが混じっていますが、まああれらは魔族の中でも結構な使い手でしょうからまだ大丈夫です。あの程度のトカゲならあと少なく見積もっても5分は大丈夫でしょう。』


 どうしてこの人はそれを知っているんでしょう?私の頭を覗いてきたんでしょうか?


『違います。そんな無粋なことはしませんよ。下を見てみなさい。』


 言われた通りに下を見ると、そこにはさっきまでいた部屋がありました。色は無くなってはいるもののしっかりと皆さんがドラゴンと戦っている様子が視界に入ってきます。

 倒れて頭を抱えたまま動かなくなっている私の姿も。


『随分無様ですね。あんな恰好で気絶してしまうとは。』


「うるさいですよ。それで、どうやったら戻れるんですか?」


『あなたが身に着けることができたら、でしょうか。』


「何をですか?」


『神々のみが起こせる奇跡、その一端をです。』


 神々だけが起こせる奇跡?それってたしか創造神のおじいちゃんが教えてくれるって言っていたような。それをこの人が教える?一体何者ですか?


『……私はヘカテー。生きとし生けるものすべての頂点に立つ者、またの名を終わりなき夜。いわゆる真祖というものでした。』


 ……でした?ということは今は違うんですか?


『はい。今の真祖はあなたですよ、ルナ。とはいえ器だけですし、未成熟ですが。』


 はぁ……。そうなんですか。


『あれっ!?驚きませんか?真祖ですよ、真祖。なりたくてなれるものではないんですが。』


「いえ、その前に真祖というものを私はよく知りませんから。それじゃ喜べないでしょう。」


『……そういうことですか。なら教えて差し上げましょう。


 真祖とは上位種たる吸血鬼の王となる存在です。つまりはこの世界で誰よりも強いんです。そして同時に魔法の源泉である奇跡を扱うことを神に許された数少ない存在です。』


 ……これまたとんでもない設定ですね。


『設定ではありません。事実です。なのであなたには今ここで奇跡というものをその最初の部分だけでもしっかり習得してもらいます。』


 ちょっと話を勝手に進めないでください。まだやるとは……


『下を見てみなさい。今あなたの大事なお仲間はあのトカゲと戦っているんですよ。そして残念ですが、彼らでは勝つことができないようです。』


 はぁ?そんなわけないじゃないですか!もしあの人たちに勝てなかったら誰が勝てるって言うんですか!?

 それにこれ以上強くなると、今度は……。


『そんなのあなたに決まってるでしょう。未熟とはいえ真祖、そのポテンシャルは右に出る者はいませんよ。それにこれから教える奇跡は魔法とは文字通り格が違います。


 ……そうですね、もしこれを使えればあなたはもっと強くなれますし、そうできれば次こそはあのソフィアとかいう魔族の少女を無傷で助けることができるかもしれませんね。今回は命こそ無事ですが、随分傷ついたみたいですが。』


「……なんでそれを?」


『そんなことはどうでもいいです。私はあなたのことを理解しているつもりです。あなたの境遇も、どうしてそう思考が歪んでしまったのかも、私なら理解できます。……一人ぼっちは寂しいですからね。


 だったら、あなたが大切だと思える人を確実に守れるように強くなればいいじゃないですか。この世界ではそれができるんですよ!』


「…………。」


『とはいえ、確かに強要するのもよくありませんね。もし本当にいやだったら言ってください。まあ、習得するまで帰ることはできませんが。』


「やりますよ!まったく、ちょっと考えさせる話をしたかと思えば結局は選択肢なんてないじゃないですか。」


『ふふふ、ですがいいと思いますよ。なにせ目標がないと成長できませんからね。友達が欲しいから、なんて素晴らしい動機じゃないですか。』


「煽ってるんですか?それよりも早く教えてください。もしも、ということもあります。」

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