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かけがえのない存在 ※リュウマ視点

少しだけ長いです。

 アカリとイゾウの二人があのドラゴンと戦い始めた。魔法陣のせいで少し部屋の中を赤い光が照らしている。


 アカリが青く輝く角と刀を持ってドラゴンの周囲を飛び回る姿はあまりに早すぎて、彼女の移動した跡を青い光が空中に帯のように残って見える。空中を泳ぐように飛び回る彼女は無数の小さい斬撃をドラゴンに絶えず放ち続けている。


 イゾウは二刀を眩いばかりに赤く染めてドラゴンの周囲をアカリに比べるとゆっくりと移動しながら隙を見つけては必殺の斬撃を叩き込んでいる。でもその速さは十分あるんだけどね。……あと普段はイゾウのことをお頭って呼んでるけどさすがに心の中だったら別にいいよね?


 対してドラゴンは最初に起き上がりかけたものの、すぐさまイゾウに足を斬られて地面に頭をぶつけてからは空中に少し浮かびながら攻撃をしてきている。でも全然本気出してないだろうな……。攻撃の感覚もすごいゆっくりだしブレスも吐こうとしない。ただひたすら攻撃を受けてそれを回復している。結構な攻撃が入っているはずなのに全然こたえる様子はないし、それにあのドラゴンの目はあの二人を観察しているみたいだ。


 そして僕の後ろにいるルナちゃん。何が起こったのか具体的にはわからないけど、頭を抱えたまま動けなくなっちゃってる。予想が正しければまだしばらくは動けないだろうな……。幸運なことにまだドラゴンは二人に夢中なようで僕達に視線すら向けてこないことかな。もし僕達も攻撃の標的になったら、ルナちゃんを守りながら戦うのは正直不可能。奥の手を使えば大丈夫だけど、さっきイゾウとアカリに怒られちゃったし。


 その時、突然ドラゴンが大きく羽ばたかせ、周囲に立っていられないほどの強風をまき散らした。後ろにいるルナちゃんを片手で抱きとめ、もう片方の手で地面に鞘ごと刀を突きたてる。

 二人は……、大丈夫そう。アカリは壁際に飛ばされているけど無事着地できてそうだし、イゾウはその場所から動いてさえいない。


「ぎゃっはっは!!お前らやるなぁ!青いの、まだ俺様でも動きが目で追えねえぞ!それに赤いの、俺様の体に一撃であんだけでかい傷を作るとはなぁ!」


 ……やっぱり喋るか。さっきまでだんまりだったけど、これはどう考えても喋るくらいの強さはあってもおかしくないよね。


「いいぞ、俺様もこれからは本気を出してやろうじゃねえか!」


 そう言うと、ドラゴンは大きく息を吸い込み


「ドラゴン魔法 ドラゴニックブレス!!」


大きく口を開けてブレスを吐き出してきた。そのブレスが向かう先にはアカリの姿があったけど、アカリは既に飛び出していてドラゴンの口元に移動していて、


「一刀流奥義 居合滝斬り!!」


その口の中に斬撃を何発か飛ばしてる。離れたところから見てるからその様子も見えるけど、ドラゴンからしたら突然口の中を斬られたっていう感覚なんじゃないかな。


「ぎゃはは!馬鹿め、そんなの読み通りだ!くたばれ!」


 ドラゴンがそんなことを短い右手で自分の口当たりをはたこうと伸ばす。その先には空中で身動きができないアカリ姿が……。


「危なっ……。」

「それはこっちに台詞だ!デカ物ッ!二刀流奥義 金童子!!」


 イゾウがその間に切り込んできて、ドラゴンの手の平を十字に斬り裂き、一拍遅れて飛んできた斬撃が手首を斬り落とした。


「ぎゃはは!やるじゃねえか!楽しくなってきちまうなぁ、おい!なら今度はあれにしよう。死ぬんじゃねえぞ。

 ドラゴン魔法 ドラゴニックデザスター!!」


 直後、ドラゴンの巨体を中心に大きな竜巻が起き上がり、そしてその竜巻の至る所からバリバリと雷が起こっている。


 ……やばい、アレはやばい。魔法なんてほとんど使えないけど肌感覚で分かる。多分、加護付きの魔法だ。結構離れてるけど、ここでもやばい。ルナちゃんは……、まだ起き上がれなさそう。


 ……ルナちゃんと僕だけなら多分大丈夫。というか、僕の周囲なら、大丈夫。でもアカリはともかくイゾウは間に合わない。どうすれば……。


「リュウマ!ルナのこと頼んだぞ!」

「私らのことは心配するな!絶対生き残る!なあ、イゾウ!」

「当然だ!こういう死ぬか生きるかの瀬戸際を待ってたんだよ!」


「……分かった!絶対死ぬなよ!!」


 僕はユニークスキルを発動させて完全防御態勢を整える。


 そしてその準備が終わってすぐに、魔法が発動した。竜巻が膨張し、その間から漏れ出ている雷もドンドン太く、長く、多くなっていく。


 アカリとリュウマはもちろん、僕達もそれに巻き込まれて……。四方八方から絶え間なく襲い掛かってくる雷に、方向感覚を失うほどの強烈な風が方向を問わず常に吹き荒れている。雷一つをとっても当たったら即死ではなくてもかなりの大ダメージを食らってしまうはず。それにあの風の中じゃまともに移動することだってままならない。


 こんなの、巻き込まれたらひとたまりも……。


 ……いや、あの二人なら大丈夫。絶対に。だから、僕は今ルナちゃんを守ることだけを考えればいい。精神を落ち着かせてユニークスキルが切れないように……。



 永遠にも思えるほど長かったけど、多分1分間くらい魔法は続いた。ようやく魔法が収まり、部屋の様子が見えてきた。


 大慌てで二人の姿を探して、……部屋の中央付近で二人が立っているのを見つけた。ドラゴンもそれに気づいたようで半分驚き、半分喜びのような感じで言葉を発した。


「お前ら、あの中を生き残ったのか!?」


「……はっ!どうだ、デカ物……!生き残ってやったぞ、こら……!」


「……そうだ、でたらめな魔法使いやがって……。死ぬかと思ったぞ……!」


 息も絶え絶えといった様子だけど、生きてる……!すぐに助けに行かないと……!


「……やるじゃないか!同族でもこれを耐えるのは少ないぞ!それを鬼の身で……!面白い!さあ、続けよう!戦おう!もっと、もっと!俺様を楽しませてみろ!」


 もう戦えないに決まってるだろ!くそっ!このユニークスキルを早く解かないと!じゃないと、二人が……!


 ……いや、でも今なら二人との約束の時なんじゃないか?ルナちゃんもきっと同じ穴のムジナ、秘密にしてもらおうと思えばそうできるはず。なら……。


「……何を、しようとしているんですか?」


 背後から声が聞こえてきた。


「……ルナちゃん!?目が覚めたんだね、でもちょっと待ってて。二人を助けないと……!」


 でも時間がない。振り返ることもしないで自分の意識の中に潜り込もうとして……。


「だから、何をしようとしてるのかって聞いているんです。それをしようとしてさっきアカリさんとイゾウさんが起こってたんじゃないですか?」


 肩を掴まれて後ろに引き倒されました。


「何するんだッ!急がないと、二人がッ!……え?君は、誰だ……?」


 急いで起き上がろうとして自然にその先に立っている人の姿が目に入った。でもそれは僕達が知っているルナちゃんの姿ではなかった。

 真っ白な髪の毛は腰当たりまで伸び、その背に暗赤色の翼を背負っている。どこかアンバランスだけど、そこに神聖さすらも感じられる不思議な少女が、そこに立っていた。


「私ですか?ルナですよ。いずれ生けとし生けるものの頂点に立つ者、吸血鬼が真祖のルナちゃんです。」

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