地獄かなんかですか……?
「「「「グルアァァァ!!!!!」」」」」
モンスターは出現からワンテンポおいてから一斉に大声を上げました。あまりの大声に私は大慌てで耳をふさぎました。ですが、私以外の3人はそれをものともせずに即座に攻撃を開始したようです。
したようですと言うのは、実際には私にその動きが見えていないからです。時折聞こえるモンスターの断末魔と消えていく姿を見てどうやら倒しているのだろうと分かるぐらいです。
この調子でいけばすぐにハイワイバーンは狩りつくされてドラゴンも時間の問題でしょう。ドラゴンもどこからともなく飛んでくる斬撃で足止めを食らっています。
……一体私は何をしていればいいんでしょうか?正直目であの3人の動きを追うことはできませんし、それに何か魔法で援護もできないですよ。
何とかして目がよくなったりしませんかね?……部分的に吸血鬼の力を使えば見えるかもしれませんね。いやできるかどうかは分かりませんが、やるだけやってみましょうか。
吸血鬼は月光を直接見ずとも、浴びるだけでも効果が出てしまいます。他の魔族は死にかけた時や、自分で戻ろうと思った時に戻れますが、吸血鬼は月光がないと戻れません。そして戻ることができればパラメータに変化が現れます。攻撃力が上がったり、速度が上がったりと戦闘能力を向上させることができますが、その分体力や魔力の消耗が激しくなります。ですのでこの“回帰”と呼ばれる技術は奥の手という扱いを受けていますし、そもそも一定の実力がないとその存在すら知ることができません。やり方を間違えると自滅してしまいますからね。ただ、生まれた時にあったものがなくなったな、とそんな感じになるということです。
ですが、吸血鬼はまあ特別なんですよね。月さえ出ていれば常に回帰の状態でいることができますし、体力も魔力も無制限になり、全パラメータが急激に上昇します。なのでリスクなくリターンを得られるというチートなんですよね。……上位種という扱いを受けているのもうなずけます。
さあ、やってみましょうか。
現在進行形で強くなりつつある心臓の鼓動を月属性魔法のレベルを上げたことで得た耐性で無理やり抑えつけていますが、その耐性を少しずつ緩めていきます。
ドク、ドク、ドク、ドク……。
――ドクンッ!
1度の大きな鼓動と共に、私の体に変化が起こり始めました。感覚が鋭くなりました。風の揺らぎですらか感じられるほどに。思考速度と処理速度が向上しました。少しづつ皆さんの姿が見え始め、ようやく追いつきました。
ここですっ!耐性を一気に引き上げて、もっと戻ろうとする体を抑えつけました。……よし、成功しました。体の変化が止まり、ですが皆さんの姿はしっかりとこの目で見えています。
外見の変化はあまり分かりませんが、短めにそろえていた髪の毛が肩よりも少し下あたりまで伸びているのは分かります。おそらく目も赤く染まっていることでしょう。
……いや、改めて見てみるとおかしいですよね。なんであんな動き回りながら的確な攻撃ができるんですか?しかも当然のように刀で斬撃を飛ばしてますし。目が一体何個ついているんでしょうか?目が大量についてたとしてもあんな芸当はできないと思いますけどね。
だって今アカリさん部屋の真逆にいるモンスターを倒してましたよ?あ、モンスターが消えた直後にそこにリュウマさんが現れました。そしてすぐに斬撃を飛ばして離れたモンスターを倒して、って今度はそこにイゾウさんが。
うーん、予想とは違って一人が一方向を担当しているっていうわけでは無いんですね。私だったら作戦とかを考えるのがめんどくさいので担当の場所を分けて個人戦が楽だなぁ、とか思ったんですが。
……あっ、まさかこれは全部連携攻撃っていうことですか?確かに誰かが攻撃したところに高速で移動すればその瞬間はそこは確実に安全ですもんね。しかも一つの場所にとどまっている時間が長くても一秒なので新しくモンスターに襲われるなんて言うことも考える必要がなさそうです。
いやー、人間離れしすぎじゃないですか?あれって目に追えないほどの高速移動と速攻の長距離攻撃ができないと成立しませんよね。
……あれ?そういえば全然モンスターが減っていないですね。おかしいですよ、このペースだったら少なくともハイワイバーンは狩りつくされていたとしてもおかしくないですよ。
「あれっ!?」
思わず声が出ちゃいましたよ。なんか壁からハイワイバーンが出てきてるんですけど。っていうかなんか魔法陣があるじゃないですか。あれは……小さいですがボスが出てきた時のと同じだから、召喚の魔法陣ですか。
……あれ?っていうことは無限に出てくるんじゃないでしょうか?……地獄かなんかですか、ここは?




