どうやらテンプレだったようです。
「さあ、今度はお前の言い分を聞こうか、ルナ?」
うぐっ!いえいえ、落ち着きなさい、私!何も悪いことはしていないのですから、胸を張って事実を言うんです!そう、ギルマスの目もジトっとしているだけで睨んできてはいないじゃないですか。だから大丈夫です、きっと。
「しょ、しょうがないですね。では、ぽわぽわぽわーんと。」
「なんだお前、ふざけてるのか?」
「いやっ、そうではなく。これから回想シーンに入りますよという合図なんです。決してふざけているわけでは無いです。」
「……はぁ。そうか、なんでもいいから手短に頼むな。」
手短にですか。しょうがないですね。では改めてぽわぽわぽわーんと。
お兄さんに連れられてギルドに来たわけですが、まずギルドに入ったときに皆の視線が私達に集中したんですよ。まあ、それは分からなくもありません。美少女なので、私!ここ重要です。雪のような白い肌に髪、昼間なので薄い桜色の瞳(夜になると深紅の瞳に変わります。)をした儚げな美少女が来たら誰でもこっちを見ちゃいますよね。
「まあそうだな。……儚げ……?」
うるさいですね。儚げなんですよ、私。で、そんな私に視線が集まってですね。それに気づいていたはずのお兄さんがなぜか私を置いてどっかに行ってしまったんですよ。
そしたらその直後です。突然後ろから声をかけられたんです。
「おい、お前ソルの妹なのか?」と。
まあそこで嘘をつく理由はなかったので、しょうがなく「そうです。」と答えてあげたんです。そうしたら今度は「冒険者になるのか?」と聞かれました。
「……そうですね。」
「ソルとパーティーを組むのか?」
「……さあ。」
「おい、話してるんだぞ。こっち向いたらどうだ?」
「……」
実はこの段階で少しイライラし始めています。なにせ初対面ですよ?いえ、まだ振り向いてすらいなかったので対面自体していませんでしたが。それなのにこんな風に一方的な会話をされるなんてありえなくないですか?
「うーん、まあそれは個人的な問題だからなぁ。私は大丈夫だが、別にお前が嫌なのも理解はできるな。」
ですね?そうですね?ほらならもう絶対悪くないじゃないですか、私!ふふ、これでギルマスという強い味方を得られたのでよかったです。ふう、安心できましたよ、本当に。さっきまで何らかの処分を受けるかもしれないとビクビクしていたのがバカみたいじゃないですか。
「で?」
え?これ以上何か聞くことありますか?
「一番重要なところを離してないよな?どうしてガルムがコテンパンにやられてたのかを教えてもらおうか。」
え?ああ、それはですね?なんかそれからもいろんなことを言ってきたわけですが、あれが今度は私の肩に手をかけながら「ギルドに入ったら俺たちのパーティーに来い。」とかふざけたことをぬかしてきやがったんですね。
いや、それまではまあ我慢してたんですよ。やれ「得意な魔法はなんだ?」とか「武器は使わないのか?」とかは無視してればよかったですが、最後のはないですね。なんで誰かにそんなことを決められなきゃいけないのやら。それに触んな。
ただでさえイライラしていたのにその一言が決め手になって、気が付いたときには既に遅かったですね。
「……ファイヤーウォール。」
自分の真後ろに火属性の初級魔法を放ってました。背後に立ち昇る炎の壁。それに見事に巻き込まれる男。ざまあないですね。
そして最後に少し踏みつけてあげていたらお兄さんとあなたが来たというわけです。
「……なるほどなぁ。まあ、結論から言うとやりすぎだな。ガルムのやつもマナー違反だが、ルナもルナだな。いきなり触られたとはいえそれに魔法で反撃しちまうとな……。」
「いえ、問題はそこではありません。問題はアレが私の魔法を見る前に勧誘してきたことです。」
そう、そっちの方がどちらかというと大きな問題でして。私のことをマスコットだとでも思ってるんですかね、アレは。本当にふざけた野郎です。
「それはソルの妹だから期待されてたんじゃないか?今ソルのランクBランクだしな。」
「……はあ、そうなんですか。」
「あれ?知ってたのか?」
「いえ……。」
Bランク……?何ですかそれ?ランクがあるのは知っていますがそんなにすごいことなんですか?
「ギルマス。まだルナにはそこまで説明してないですよ。なにせまだギルドに登録してないんですから。」
「うん?え?……ああ!そうだった!まだ登録してなかったじゃねえか。ってことはまだ説明も受けてないってことだよな?」
「ええ、そうですね。」
「……まじかー。そうだよな。さっきの話じゃそういうことだったもんな。あー、じゃあまだ入ってないのにガルムの野郎はパーティー勧誘なんてしやがったのか。ってことはマナー違反どころじゃねえじゃねえか。……ったく、何やってんだあの大馬鹿野郎が!」
おお、ギルマスがなんかすごい怒ってますよ。その矛先が私ではないようなのでほっと一安心です。




