後輩受付嬢の独り言
ここで他人称視点を挟みます。
私です。アメリアです。随分久しぶりですから覚えていませんかね?ソフィア先輩の冒険者時代からの後輩です。影が薄いというか、ルナさんとそこまで接点がないですから覚えてなくてもしょうがないんですけどね……。
唯一あるとすればスタンピードが起こった当日くらいでしょうか。あの日、スタンピードが起こって魔都内から冒険者達がいなくなりまたそしてその後方支援として受付嬢のほぼ全員が現場に駆り出されました。でもギルド内を無人にするわけにはいかないということで、ギルドの管理のために私は残されましたからね。
その時、何とも珍しい客が来たんです。4人組の子供でその手にはなぜかゴブリンの小指が大量に入っている袋を持っていました。何が起こっているのかわからなかった私ですが、彼らの必死ですが拙い説明を聞いていくうちに何となく状況が見えてきました。
このゴブリンの討伐部位の束は彼らのものではなく、彼らは代わりに持ってきたということなんでしょう。しかも受付嬢をソフィア先輩にこれを伝えたいというと、おそらくルナさんの依頼でしょう。確かCランクへの昇格依頼としてゴブリンの集団の討伐を受けていたので、討伐部位とも合致します。でも、どういうことでしょう?そのままルナさんが持ってくればいいはずですが、直接来れない事情でもあったのでしょうか?本人でないと依頼を達成にすることはできないんですけど……。
でも、彼らの話には続きがあってですね。どうやらルナさん本人はスタンピードの鎮圧の方に向かったようです。いや、確かにこの依頼を達成したその時からCランクですからもうスタンピードの方に行ってもいいんですけど、そんなに急がなくてもいいなじゃないですか。それに厳密にいえばまだCランクではありませんし。それか、そこまでスタンピードが激しいということなんでしょうか。5年前と同じですと、どうにかなりそうな気もしなくもないんですが……。
実際は5年前よりも大変な状況にあったようで、スタンピードのボスモンスターを誰かが倒してくれていなかったら魔都が壊滅状態になるかもしれなかったらしく。でもそのボスモンスターを倒してくれた人が誰なのかは分かっていないようですが……。
スタンピードが鎮圧された後いろいろありましたが、一週間くらいで事後処理とかが全部終わりました。一番大変な東門の修復は気まぐれにいらっしゃった魔王様が直してくださいました。私は直接見たわけでは無いですが、どうやら一瞬で直ったようです。
ソフィア先輩も生きて帰ってきてくれましたが、昏睡状態でした。これは無事と言えるんでしょうか?5日ほど眠った後回復しましたが、その後もどこか様子が変です。普通5日も眠った後はすぐにそこまで動き出せるわけがないですが、毎日のように夜遅くまで働いていました。
今ではルナさんと買い物に行くくらいの余裕もあるようですし。現在進行形でルナさんと一緒にギルドの外に向かっていますよ。しかも結構楽しそうな足取りじゃないですか。……仕事は全部終わっているので誰もそれを止められる人はいませんが。
おや、ギルマスがおりてきましたね。最近はスタンピードの事後処理(書類仕事)でギルド長室に缶詰めだったはずですが。ちなみに私達の仕事は冒険者たちを回復させることと、その後に報酬を支払うことでした。まあ誰がどれくらい倒したかは分からないので、ランクごとに分けてありましたが。
「アメリア、さっきまでルナがいなかったか?」
「ついさっきまでいましたけど、ソフィア先輩と外出していきましたよ。」
「マジか……。次来たらすぐに私に知らせてくれ。ランク昇格について説教をしなきゃいけないからな。」
「あぁ、まだDランクなのにスタンピードに突っ込んだからですか?」
「そうだ。今のうちにしっかり規則について話しておかないとな。上位ランクになって規則を破ると罰則が大きくなるから、今回は厳しく言わないと。」
おお、ギルマスの目が結構鋭いですね。でも、あとを追おうとしないところは優しさでしょうか。ソフィア先輩が誰かと外出するのは結構珍しいですからね、きっとそっとしておいてあげようと思ってくれたんでしょう。それか仕事が終わらないからかもしれませんが……。
ギルマスはしょんぼりと肩を落としながら転移魔法陣の場所まで歩いていきました。……ご愁傷様です。
「おおーし!今日も頑張ったぜ!」
「スタンピード直後だからはぐれの魔物が多くて大変だったぜ!」
「まあ全員叩き飲みしてやったがな!ガハハッ!」
「そうだそうだ!依頼はしっかりやってきた!今日は飲むぞー!!」
「「「おおおーーー!!!」」」
あー、また騒がしい冒険者達が帰ってきましたね。いえ、依頼はしっかり達成してくれるからいいんですけどね。しかもギルド直営の食堂を使ってくれるのもギルド的にはうれしいです。
ですが、完全個人的な事情を言うとすれば、うるさすぎるのは苦手ですね。冒険者には必要だと思いますが、それでもです。
でも、止めることはできないし、したくもないのでそろそろ私は裏の方に回るとしましょうか。それかギルマスの仕事を手伝うのもいいかもしれません。
さーて、私達の夜も長いですよ。他の受付嬢たちは途中からあちらの宴会に参加するでしょうしね。




