おおー、これがのりツッコみというやつですか?
私が席に着くとイゾウさんではないもう一人の男の人が声をかけてきました。
「お頭がナンパとか珍しいね。俺はお頭と同じパーティーのリュウマ。お名前はなんていうんですか?」
「いや、ナンパじゃねえよ。な、お嬢ちゃん。」
お、なんか面白そうな流れですね。ちょっとだけ乗ってみるとしましょうか。
「どうでしたっけ?あ、私はルナです。」
「やっぱりかー。まあいいや。よろしくね、ルナちゃん。……どこかで会った事あったりする?」
「ルナっていう名前だったのか。そういえば聞いてなかったな……。いや、やっぱりかー、じゃねぇよ。ナンパなんてしてねぇから。っていうかその言い方じゃお前の方がナンパみたいじゃねえか。」
おー、イゾウさんは結構気にしてるんですね。いえ、こういうやり取りってやっぱり楽しいですよね。……まあ実体験はほとんどありませんが。何とか流れに乗れたようでよかったです。
ちなみに私は顔をしっかり見て思い出しました。……できれば思い出してほしくないですね。まあきっと思い出せませんよ。その時お互いを認識していなかったんですから。
「ははは、確かに。で、お頭は一体どうしてルナちゃんに声をかけたの?見た目で声をかけたってことはあり得ないだろうけど。」
「いやなに。俺にはかなりの実力者に見えたからな。今のうちに実力を知っておきたいと思っただけだ。非常事態の時にはもしかしたら組むことがあるかもしれないからな。」
「なるほどね。なら僕に反論はないよ。でも、ルナちゃんはランク今どれくらいなの?」
「さっきCランクに上がりましたね。」
「あ、もうCランクなんだ。ならどっかのダンジョン行ってみるのもいいかもしれないね。」
おや、ダンジョンでしょうか。行ったことがないので是非行ってみたいですね。しかもダンジョンだとわざわざ魔物の討伐部位を集める必要がないのがいいですよね。
「ん?さっきDランクとか言ってなかったか?」
「はい、ついさっきCランクに上がる手続きをしてきたんです。なのでまだCランクに上がって10分も経っていませんね。」
「ああ、そういうことか。なるほどな。……ってその前に、一応確認だが明日一緒になんかの依頼を受けてくれるのか?」
おおう、なんかめちゃくちゃ真剣な目で見てきますね。でも、残念さっきまで飲んでいたのであろうお酒の泡が髭のように口の周りについているのでそこまでシリアスになりきれません。さっきまでもついてたんですけどね、あえて触れなかったんですよ、あえて。
「はい。是非お願いしたいです。」
「よし!なら大丈夫だろうが、アカリがいいって言ったら全員でいけるな。」
「私がいいって言ったらなんだって?」
私の背後から突然声がしました。……また気配を全く感じませんでしたよ。足音はおろか、空気の振動もなかったように思います。
すっと、音もなく私の隣に座ったその女性はそのまま流れるような動きで私を自身の膝の上に持ち上げてギュッと抱き着いてきました。
「~~!?ぇ!?」
「私はアカリっていうんだ。名前はなんていうの?」
「る、ルナです!!」
「そう、ルナちゃんって言うんだ。かわいいね。今日はギルドに何か用事があったの?」
「きょ、今日は昇格のためにギルドに来ました!」
「そうなんだ。何ランクに上がったの?」
「Cランクです。」
「えー、強いんだねぇ。でも何か困ったことがあったらいつでもお姉ちゃんに言うんだよ?」
「は、はい!」
そこまで言うと私を隣の席にこれまたスムーズに移動させました。でも片手は私の頭の上に固定されていますね。……これは振り払ったら逆に怖いタイプです。でも頭をなでてくる手からは優しさしか感じませんね。なぜでしょう?
「で、私がいいって言ったらなんだって?」
「明日ルナと一緒にダンジョンに行こうと思ったんだが行くか?」
「当然。行かないはずがないだろう。」
「だよな。なら決まりだ。早速明日行くぞ。まあ、俺たち全員揃ってるんだからせっかくだし竜の爪痕にでも行くか。」
竜の爪痕……?ここら辺で最難関のダンジョンじゃないですか。最初がそんなところで大丈夫なんですかね?
「竜の爪痕か。僕は途中までだったら賛成。だから少なくとも3層までかな。」
「私も特に反対はしない。ルナちゃんは私が守るからな。」
マジですか。でも大丈夫なんでしょうかね。完全に足手まといですよ、私。私も行ってみたいですけど、多分いた方がお荷物になるっていう典型だと思うのですが……。
「ルナもあそこでいいか?」
「はい、もちろんです。」
「なら決まりだ。明日は東側のギルドに朝9時頃集合っていうことにしよう。」
朝9時ですか。……早いですね。普段ならようやく起きて朝ごはんを食べようとしている時間ですよ。まあ頑張って起きるとしましょう。
「で、アカリはさっきまで何やってたの?なんか男をひねり上げてたけど。」
「それはな、ルナちゃんに絡んできていたバカな貴族がいたから、私が潰してやろうと思ってな。しかも貴族だからと平民を下に見るように言ってたからな。しっかりと本人と家の名前も聞きだしてきた。」
「へぇー、この冒険者ギルド内で本当にそんなこと言ってたんだ。随分と命知らずな輩がいたもんだね。下手したらその貴族家とギルドの関係が絶たれるかもしれないっていうのに。」
「冒険者ギルドと魔王城が密接につながってるっていうことを知らなかったんじゃないか?それに、噂じゃ魔王様とここのギルマスは姉妹らしいしな。で?どこの家だったんだ?」
「聞いて驚くなよ。やつの名はヒューム=アマデウスだ。」
「「はっ!?」」
……ダレデスカ?そんな人、私知りませんよ?




