少し違ったようです……(恥)
「え?今なんて言いました?え、Aランクですか!?」
この目の前に立っている男がAランクですか?この魔都には数える程度しかいないって聞いたんですが。
「そうだが?それにしてもDランクか?おかしいな。もしや駆け出しだったりするか?」
「ええ、最近入ったばかりですね。」
一か月しか経っていないのであればまだ駆け出しなのでしょう。
「やはりそうか。どうだろう?相互に不利益はないと思うのだが。」
なるほど。確かに不利益はないですね。ずっとソロっていうわけにもいかないでしょうし、それに貴族に狙われることを考えると冒険者の仲間も作っておいた方がいいかもしれません。
「……そうですね。ではあと少しだけ待っていただいてもいいですか?今受付嬢さんと話していたので。」
「おう、そうか。じゃあちょっとそこらへんで飯食ってるから、終わったら声かけてくれ。」
そう言うと、草履を引きずりながらギルドの中心部の食堂にイゾウさんが向かって行きました。……へぇ。明らかに強い人っていうのは私みたいな素人でも何となくわかってしまうものなんですね。ゆっくり歩いているように見えるんですが、流れるような仕草というか、その動きに不自然さが全くありませんね。
「お待たせしました。……どうしたんですか?」
「いえ、先ほどAランク冒険者のイゾウさんという方に声をかけられまして。今度一緒に依頼を受けないかと誘われましたんですよ。返事は保留にしたんですが。」
「え、すごいじゃないですか!!行ってみるといいと思いますよ!彼らは刀という特殊な武器を使うんですが、とても強いです。結構参考になることが多いと思いますよ。」
「あ、そうなんですか?手紙で教えてくれた感じの冒険者ではなさそうですか。」
イゾウさんがそういう悪い感じの貴族とつながっているようには見えませんでしたが、一応確認しておきたいです。
「ああ、大丈夫ですよ。イゾウさんたちは貴族とのつながりがあまりないですから。それにAランク冒険者ともなれば下手な貴族よりも影響力が強いですし、そもそも貴族とよからぬ関係を持つ輩はAランクに上がることができませんからね。しっかりそこらへんの対策はしてあるので大丈夫ですよ。」
「あ、そうなんですね。Aランクに上がる時に冒険者個人の背景も調査されるんですね。」
「そうなんですよ。それがなかなかに面倒……、いえ時間がかかるのでAランク相当の実力者はいるんですけど、Aランクの冒険者の数を増やせないんですよね……。その分Aランクに昇格の条件も厳しくしていますし。」
ソフィアさんが遠い目をしていますよ。その仕事をするのはギルマスとかサブマスになりそうですもんね。
「話を戻しましょうか。これがあなたの新しい冒険者カードです。Cランクのなので色は赤ですね。」
そう言ってソフィアさんが紅いカードを差し出してきました。確かにCランクの文字が浮かんでいますね。スキルや称号が書かれているはずの裏面はまだまっさらですね。
「これに魔力を通せばいいんですか?」
「そうです。そうすればカードの情報が自動的に移されますよ。」
情報の移動が自動なんですか。すごいですね。タッチするだけで情報の管理ができるなんてめちゃめちゃ進んでますね。それ以外の文明レベルは現代日本の方が進んでいるんですが。
まあ、とりあえず魔力を込めましょうか。……おっ、名前が浮き上がってきましたね。っていうことは情報が移ったんでしょうかね。元のDランクの冒険者カードを見るとそこから私の名前やら種族やらの情報がすべて消えています。
「はい、情報の移行が完了しましたね。では、こちらの古いカードは回収させていただきますね。」
「別に構いませんよ。それで話は変わるんですが、手紙で言っていた私と一緒に行動してくれるっていう話なんですが……。」
黄色いカードを何かの書類にクリップで止めていたソフィアさんは、そこで手を止めて手を軽く叩きました。
「そうです。その話もしようと思ってたんです。ルナさんもCランクということでもう冒険者としては一人前という扱いを受けます。なので、時にはその場で居合わせた冒険者と共同で依頼を受けるというようなこともあるんです。その時にソロの経験しかないと困るのではないかと。
手紙に書いた理由が大部分を占めますが、この理由もあって声をかけさせていただきました。」
「では、是非!ですが、仕事は大丈夫なんでしょうか?サブマスとしての仕事も多いのではないかと思うのですが。」
「かまいませんよ。ですが明日はちょっと厳しいので明後日からでもいいでしょうか?」
「もちろんです!では、……」
「帰るときになったら声をかけてください。これからイゾウさん達の所に行くんでしょう?」
あっ、すっかり忘れてました。
「……忘れてましたね?」
「いえいえ、そんなまさか!これから行こうと思ってたんですよ。」
「そうですか。では行ってきてください。私は仕事を適当に片づけておくので、時間は気にしなくても大丈夫ですよ。」
ありがたい言葉をいただきました。ですが、うーん、そんなに聞くことありますかね?正直初対面っていう時点でそこまで話ができる気がしないんですが……。




