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最強の証

「グググ……。当たったぞ。しかも直撃だ!……吸血鬼と言えど、最強の竜である我には勝てないということだ……!」


 ドラゴンが放った黒炎のブレスの余韻が空中に煙として残っている。その煙の中を見渡すことはできていないが、ドラゴンは既に勝利を確信していた。なにせ、さっきの魔法は普通の魔法とは違う。最上級にあたる超級魔法でも、種族による固有属性でもない。


 “加護”付きの魔法。それは属性として区分されることはなく、一つの魔法としてこの世界に存在する。そしてある時突然、一つの個体にそれは気まぐれのように与えられるという。その魔法は全ての魔法を超越した魔法であり、その魔法を迎え撃つには数倍の魔力がこもった魔法を放つ必要がある。


 そのため、その対処法はいくつかに分けられる。

 一つに、確実によけること。他の魔法同様、加護付きの魔法であってもよければ当たることはほぼない。一番賢い方法と言えるだろう。

 二つに、同じく加護付きの魔法で迎え撃つこと。いくら加護付きの魔法が特別と言えど、同じように加護がついている魔法が相手だと、確実に勝利というわけでは無くなる。その時はその魔法に込められている魔力が強いほうが勝つ。


「バカな……!あれは加護付きの魔法であるぞ。神でもないただの人間があれを受けて立っているだと……!?」


 そして三つ。圧倒的なまでのレベルの差があること、です。私とドラゴンとの間にはもう埋められないほどの差がありますからね。たとえ神に与えられた魔法と言えど、私に傷つけるなんてできませんよ。


「ふふふ。お前程度で最強を自称しますか。随分痛いことを言いますね。」


「グググ……。だが、貴様も我を殺すことができまい。」


「まるでもう攻撃をしてこないかのようですね。もしかしてさっきの魔法がお前の中で最強の魔法でしたか?」


「貴様ッ!そこまで我を愚弄するかッ!!」


 おお、それなりの威圧感を感じますよ。まあそれでもそれなり程度なのが残念なところですね。


「ふふふ。事実を言われただけで怒ってしまうんですか。小物ですねー。」


「グルゥアッ!!」


 おっと、少し煽りすぎましたかね。突っ込んできてしまいましたよ。無謀にもほどがあるのでは?

 まあさすがに近寄られたらちょっと暑苦しそうなので帰ってもらいますか。


「凝血・アイスニードル。」


 私が放った氷属性の魔法は迫りくるドラゴンの顔に突き刺さりました。いえ、別に目は狙っていませんよ?眉間を狙いました。


「グウォアッ!!?」


 慌てたように竜が戻っていきます。まあ突き刺さりましたもんね。突然刺さったら私だってもしかしたらびっくりして逃げてしまうかもしれません。まあ、そんなことはないでしょうが。


「ふふふ。ではそろそろ終わりにしましょうかね。血属性魔法 壊血・血染桜。」


 真祖の血を呼び起こしながら魔法を発動させます。ふふふ、この魔法は加護付きの魔法とは少し違いますが、特殊ですからね。真祖の血を使わないと発動させるのが大変なんですよ。


 指先に軽く傷を作ってあげると、ちょっとづつ赤い血が空中に浮かんでいきます。そして、その赤い血が上空で魔法陣を作り上げていきます。最初は小さく作られていた魔法陣ですが、途中から勢いよく大きくしていきます。


 ふふふ、これで魔法陣は完成しましたし、体内には真祖の血が満ちました。

 腰まで伸びていた髪が少し短くなり、体も少しだけ大きくなりました。


「ッ!まさか貴様ッ!その蒼い瞳は……!真祖だったのか……!」


「今更ですね。ではでは、死に至るその時まで体の末端から壊れていく激痛と恐怖に怯えてなさい。」


 上空の魔法陣から血の柱がおりてきました。そしてその柱はドラゴンを飲み込みながら地面までまっすぐ伸びきりました。


「グオオォォォ……。」


 あの柱の中では今頃血でできた結晶のようなものが花吹雪のように吹き荒れています。その結晶一つ一つがドラゴンの体を貫く程度の強度を持っています。それにおまけみたいな感じですが、腐食という特殊な呪いが付与されています。

 ……まあ遠い昔では、この血柱を使用しないでそのまま範囲関係なしに一帯を死と呪いを振りまいたこともありましたね。あの時は壮観でしたね。吸血鬼を悪と決めつける気色の悪いやつらを皆殺しにしましたもんね。


「真祖の吸血鬼よ……。一ついいか?」


「はい?何ですか?」


「貴様にとって、最強とはなんだ?」


「はあ?突然なんですか?」


「そこまで強くなるには何かしらの目標がないとなれないはずだ。その考えを知りたい。」


 そういうもんなんでしょうか?使命はありますが、目標は考えたことがありませんね。でもまあ、言うとするなら、


「私の目標は、――――――――――。」


 私の答えを告げると、ドラゴンは一瞬目を見開いたように見えましたが、すぐにゆっくりと目を閉じて


「……そうか。それが貴様の目標か。感謝する。……我の名はダハーカ。もし次会うことがあればその名を呼ぶといい。そうすればたとえ記憶がなくとも……。」


 最後まで言い切ることはなく、ドラゴンは血柱の中から姿を消しました。

次話で一章完結です。

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