目覚める血
遅刻しました!すいません!!
振り下ろされるドラゴンの手を前に、私は毒で言うことを聞かない体に鞭を打って何とか背中を向けることができました。
その直後、天と地がひっくり返ったと錯覚するほどの衝撃を背中で受けました。それと同時に体中から何かが砕けるような音も。
「ぐ、あっ……!」
一瞬、意識を失いかけましたが、腕の中にいるソフィアさんの温もりですぐに意識を取り戻しました。そして視界にぼんやりと迫ってくる地面が映りました。
……まずいです。……このままじゃ、ソフィアさんから落ちてしまいます。
「う、ああ……!」
……何とか、私から落ちるようにしないと。今めちゃくちゃ痛いですが、私ならすぐ治ります。
「うぐ、ぐ……。」
折れかけている翼で軌道を修正して飛行時間を増やしながら、ちょっとずつ旋回して何とか地面にぶつかる直前に私180度回転することができました。
「が、はっ……!」
地面に背中からそのままの勢いで着弾しました。そのまま50メートル程地面を転がってようやく止まりました。
体が壊れたところからゆっくり治っていっていますが、それでもまだ体中が激痛を訴えてきています。何とか起き上がって近くに倒れているソフィアさんの様子を見に行きます。ソフィアさんは、……無事なようですね。よかったです。
「……はぁ、……はぁ。」
あと少しで何とか動き出せそうですね。毒もなぜかもう解毒できているようですし。でも、ちょっと疲れましたね。魔力回路もズタズタです。強い魔法は使えて数回でしょう。
ふう、ちょっと横になっておきましょうか。
……ああ、月が不気味なほどきれいですね。死なないとはいえ結構つらい状況なんですけど。我関せずとそんな明るく輝いていますね。
――ドクンッ。
そもそもなんで私は突然こんな強くなったんでしょうか?……もしかして月ですか?確か前世でも吸血鬼の話ってだいたい満月の夜が舞台だったような。
――ドクンッ。ドクンッ。
空を飛べるようになったのも、血属性魔法について知ったのも確か紅い月が出て、それを直視してすぐだったような気がします。だとしたら月と吸血鬼には密接な関係があるんでしょうか。
――ドクンッ。ドクンッ。ドクンッ。
ふふふ、そうでしたね。吸血鬼は月に魅了された種族ですからね。月光が吸血鬼を本来の姿に戻し、全ての力を解放させてくれます。まあ私は特別なのでそれだけではありませんが。
「ルナ!大丈夫か!?」
おや、誰ですか?覚えがありませんが、でもこの声音はどうやら私を心配しているようです。ふむ、ならこの大事そうに抱えているのも私の味方なのでしょうか?
「ギルマス。ソフィアさんをお願いします。私は戻らなければなりません。」
口が勝手に動きましたね。ふむ、体がこの女性のことを覚えていたということでしょうか?……思えば今が初めて起きた時ですね。なら記憶の齟齬があってもおかしくありません。
「ルナ、お前もボロボロだぞ。私が行くからお前もソフィアと一緒に下がれ。」
おやおや、この人は何を言ってるんでしょうか?心配しているようですが、でもそれは私から獲物を奪っていい理由にはなりませんよ。
「ふふ、私に命令するんですか?」
「……お前は誰だ?」
「不敬ですね。ですが今はいいでしょう。何せ初めての覚醒で気分がいいんです。私は夜の王、またの名を真祖の吸血鬼ルーナ・ダークロード。代々継がれてきた由緒ある名前です。しっかり覚えておいてください。」
そう言い残すと私は勢いよく飛び立ちました。あー、楽しいですね。夜は私だけの味方ですからね。本当に全部が私の思うがままに動いてくれます。
おっと、そんなことを考えていたらあっという間にたどり着きましたね。さっきまで遊んでいたドラゴンが。
「グググ……。……貴様生きていたのか。」
「ふふふ。面白いことを言いますね。お前程度では私を殺すことなんてできませんよ。せめてもっと強くないとダメダメですね。」
なんて言ったって私は不老不死なんですから。生半可な攻撃ではそもそも私にダメージを与えることもできませんよ。
「貴様ッ!ドラゴン魔法 ドラゴニックブレス!」
私の適当な挑発にのったドラゴンがブレスを私めがけて吐き出してきます。ですが、それは私に当たることはなく、そのまま脇を通り過ぎていきました。
「しっかり狙ってくださいよ。攻撃を当てることすらできないんですか?」
「バカなッ!今の攻撃はおかしいだろう!なぜあそこまで不自然に曲がるッ!」
そりゃそうですよ。月の下では私は最強なんですから。同族である吸血鬼の攻撃以外は、ほぼすべての攻撃を私はコントロールすることができますよ?
「ならばっ、これならどうだっ!ドラゴン魔法 ドラゴニックヘルブレス!!」
おお、そんな魔法を使えるんですか!?
明日8時に投稿します。
次々話で1章完結です。よろしくお願いいたします。




