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にっこり激怒VSイライラ激怒 下

ちょっと長めです。

 地面にぶつかった私の魔法が文字通り落雷の音を周囲にまき散らしました。あまりの大きさに思わず顔をしかめてしまいます。


「ドラゴン魔法 ドラゴニック・ヒール。」


 そんなどさくさに紛れてドラゴンが回復魔法を使いました。姑息ですね。しかも全回復してるじゃないですか。

 なら私も魔法を使うとしましょう。


「血属性魔法 祝血・ホーリーエンチャント、タイプマジック。」


 ふふ、これで魔法の威力を上げることができましたよ。吸血鬼なのでそこまでこの支援魔法は強くありませんが、それでも少しは上がりましたよ。

 それに魔力回路も補強されていますからね、多少の無茶は出来ますよ。


「グググ……。……吸血鬼のくせに支援魔法まで使えるのか。……貴様むちゃくちゃだな。」


「一瞬で全回復する魔法を使ってくるあなたに言われたくありませんね。血属性魔法 閃血・サンダーニードル、ダブル!」


「ッ!ドラゴン魔法 ドラゴニックヘルブレス!」


 私の放った2本の雷の大槍とドラゴンが放った黒い炎のブレスがまたもやぶつかりました。


「嘘っ!?」


 しかし、今度はブレスが私の魔法を飲み込んで、勢いそのまま私に迫ってきました!大慌てで腕の中にいるソフィアさんをかばいながら後ろに飛びましたが、背中が少し焼けるのを感じます。


「あっつ……!!」


 それでも何とかブレスが届かないところまで逃げ切って振り返ります。

 すると口の中から煙を吐き出しながらドラゴンがこちらを見ています。……さっきも口から煙を出していましたっけ?


「グググ……。……いい加減その小娘を諦めたらどうだ?……今のも貴様一人であればよけられただろうに。」


「愚問ですね。私があきらめるはずなんてないに決まっているでしょう。血属性魔法 裂血・エクスプロード!」


 私からまっすぐ真っ赤な炎の塊がゆっくりとドラゴンめがけて飛んでいきます。


「グググ……。……そんな魔法が当たると思っているのか。」


 それはドラゴン二ぶつかる直前で空中で一瞬縮小し、急激に膨張を始めました。柿爪ではじき返そうとしていたドラゴンはその爆発に巻き込まれました。その膨張はドラゴンを丸々飲み込んだ所で止めましたが、まああんまり効果はないでしょう。そもそも爆属性自体をほとんど使った事がないので、当然血属性とはいえその系統の魔法は弱くなってしまいますよね。

 すぐ回復されるでしょうし、何より大きな魔法の連発はやはり厳しいものがありますからね。これまでの感じですと、少なくとも5秒ほどインターバルがないと。


「グググ……。ドラゴン魔法 ドラゴニックヒール。……久しぶりに吸血鬼と戦うから忘れていたぞ。……まともに受けてはダメであったのにな。」


「また回復なんてしてくれましたね。」


「……貴様は常に回復魔法を使っているようなものであろう。……そろそろ貴様とのお遊びも終わりにしないといけないな。……我の配下が全滅する前に早くあちら側に行くとしよう。」


「おや、私も同意見ですよ。そろそろ終わりにしないとソフィアさんが本当に助からなくなるかもしれません。」


 私の見立てではおそらく魔力切れによる意識の喪失が今のソフィアさんに起こっていると思うので、そこまで命の危機というわけではなさそうですが、安静にしておいた方がいいに決まっていますからね。


「グググ…。……生意気な。ドラゴン魔法――」


「こちらのセリフです。血属性魔法――」


 ドラゴンが大きく息を吸い込み、私もまた少し高く飛び上がって翼を広げます。ここからが踏ん張りどころですよ。


「ドラゴニックシャドウブレス!」


「閃血・サンダーニードル、クアドラ!!」



 それから私とドラゴンは一言も無駄なことを話すことをせずにひたすら互いに魔法を放ち続けました。

 私は飛び回りながら血属性魔法の氷系統と雷系統の魔法を中心に、ドラゴンはその翼から放つ強烈な風の刃とブレスで。


 同時に複数の魔法を放つ、いわゆる並列詠唱というものは消費魔力がとんでもなく大きい反面攻撃力も高いんですが、連続発動が厳しく、一度隙を作れてもすぐに回復されてしまいます。それ以外の魔法はたとえ血属性魔法であっても当たっても意味がないものか、避けられてしまうのであまり今回の戦闘では使えません。


 一方、ドラゴンの方も攻めあぐねているようです。

 私は常に出せる最高速で飛び回り続けていたので捕捉があまりできていないのと同時に、そもそも私が魔法が当たりそうになったら必ず防御をするので一撃も当たっていません。なにせドラゴンの動きは全部大振りですからね。よけようと思えば、いくらでも避けられるものです。かなり集中しないといけませんが。


 つまり、この戦いは私にとってはドラゴンに攻め切れるか、それとも回避に失敗してドラゴンの攻撃を食らってしまうかのどちらかが起こるまで終わることはありません。


 しかしこういう緊迫した戦い程、結果は残酷なほどに差が出てしまうのです。



「ゲホッ、……カハッ……!」


 何度目かわからないほどの魔法を撃った直後、私の体が突然異変を訴えてきました。大きく口から血を吐いてしまいました。それを抑える手は既にソフィアさんで埋まっていたのでそのまま抑えることもできずに吐き出してしまいました。ソフィアさんにもかかってしまっていますが、今はそこまで思考が回りません。

 何とか落ちないように翼を開いて体勢を整えたものの、もうここから動き出す何てことは出来そうにありません。こうして浮遊しているのでも限界です。一体何が……?


「グググ……。……ようやく効果が出てきたか。……誇っていいぞ、あの毒を食らってなおここまで動けたのはそうそうおらん。……特にここら辺の平和な所だとな。」


「一体、何を……?」


「……結構前に放ったヘルブレスだ。……あのブレスには強力な毒が込められている。……少しでも触れればもっても3分と言われるほどの強力な毒だ。」


 毒、ですか……?炎に毒がこもってるなんて聞いたこともないですね。ですが、現状から正しいのでしょう。


「……では、約束通り小娘諸共始末するとしよう。」


 そう言うとドラゴンは近づいてきて、大きく口を開きました。一本一本が私の背丈と同じくらいの鋭い歯が並ぶ口が私の前に広がっています。普通の人であれば恐怖で震えあがっていてもおかしくありません。そもそも体中に回った毒で節々から悲鳴が聞こえてるんです。

 でもですね、私って一度死んでるんですよ。なので、せめて最期まであがきますよ?


「……ガハッ。……アイスニードル!」


「グルッ!……貴様ッ!」


 口腔内に直接魔法を撃ちこまれたドラゴンが驚いたように短い手を私に振り下ろしてきました。

本日は14時にもう一話投稿します。

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