にっこり激怒VSイライラ激怒 上
「ソフィアさんっ!!大丈夫ですかっ!?」
氷山からソフィアさんを救出することができました。今私の腕の中でソフィアさんはぐったりしています。ですが、小さく胸が上下している……ように見えます……!
急いで戻ればもしかしたら助かるかもしれません!回復魔法を使える人が控えているはずです。
急いで東の城門の所に戻ろうとしましたが、背後で何かが崩れる激しい音がしました。
振り返るとドラゴンが氷山から無理やり出ようともがいているところでした。
「グルルアッ!……お前には手を出さないでおいてやるから、その小娘を置いていけ!」
耳が痛くなるほどの大きな咆哮でしたが、それよりも今聞き捨てならないことを言いませんでしたか?いえ、早とちりはよくありません。一応聞き返しておきましょう。
「……はい?」
「……自爆技を戦いの最中に使ったのだ、そんな輩はこの手で確実に始末しなければならぬ!……許さぬぞ、危うく我もあの氷山に閉じ込められるところだったわ!」
「……それで何ですか?」
「……いいからその小娘を渡せと言っている。……次はない、小娘諸共貴様を消し炭に変えるぞ。」
「あはは!ありえませんね!なんで私が友達を売らなければならないんですか?」
「……ほう、なら覚悟をすることだ。……ドラゴン魔法――」
そこまで言うと、ドラゴンは大きく息を吸い込みました。そしてその喉の奥からチラチラと炎が揺れている姿が見えます。
「あなたの方こそ覚悟するんですね。私は笑っていますが、本当に怒っていますよ?血属性魔法――」
血属性魔法はついさっきその存在を知った魔法です。あの時、空の飛び方や感覚の強化だけでなく、この魔法の存在もなぜか知らされたんです。ふふ、始めて使いますが、その威力の知識も頭にあります。仇を討つとしましょう。
「ドラゴニックブレス!」
「凝血・アイスニードル!」
ドラゴンの口から放たれたブレスと私が放ったうっすら赤みがかった氷の巨大な槍が空中でぶつかりました。
ちょうど私とドラゴンの中間地点でぶつかった二つの強大な威力がこもった魔法は一秒に見たない間拮抗を保ちましたが、
――次の瞬間には大きく爆ぜました。
とてつもない爆風が吹き荒れる中、翼を大きく開き体勢を整えます。……うおっ!なんか氷の破片も飛んでくるじゃないですか!頬が少し切れましたよ!
まあすぐ治るんですが。
「グググ……。……さすが吸血鬼だな。……手を使わずしてここまでの魔法を使うか。……唯一この月を見方にする種族だな。」
「あはは!何を言っているのか分かりませんね!私はエルフです!」
「……貴様こそ何を言っている?……どう見ても吸血鬼だろう。……そもそも、血属性魔法なぞ数少ない吸血鬼の中でもその半分しか使えぬ。」
「……少々興味深いですが、今はいいです。血属性魔法 閃血・ライトニングフォール!」
ドラゴンの上空からいくつも枝分かれした赤雷が降り注ぎました。そして赤雷が落ちた場所から煙が上がっています。おやおや、鱗が焼けただれているじゃないですか。痛そうですね。
「グググ……。……強いな。……たった一度の魔法でここまでの手傷を負わせてくるとは。……だが!」
そこまで言うと、ドラゴンは背の両翼を勢いよく羽ばたかせ、突進をしてきました。
「近接戦になると我の方に分がある!……特にその小娘を守りながらではなおさらな!」
そう叫びながら鉤爪を振りかざしてきます。その動きは大振りで回避するのは容易いですね。なにせ鉤爪がついている手自体が短いんですから。
でも、ほかに何か目的がありそうですね。それか私を魔法使いだと侮っているとかですか?
……どちらにせよ、避けるしかありませんね。
翼を軽く羽ばたかせ、ドラゴンから大きく離れます。反撃に魔法でも……。
「……無駄だ!」
ドラゴンが空中で一回転をしてから今度は尻尾を頭上から振り下ろしてきました。
「うわっ!」
完全に不意を突かれました!何とかよけきれましたが、でもまずいです!尻尾を振り下ろされたときの風で完全に体勢を崩しました!しかもドラゴンに背中を向けた状態で!
「……終わりだ。ドラゴン魔法 ドラゴニックエッジ!」
「血属性魔法 凝血・アイスウォール!」
大慌てで私の背後に氷の壁を盾として作り出しましたが、いくら血属性とはいえこれだと脆いです。とにかく早く体勢を立て直さないと……!
私はドラゴンとの間に同じように氷の壁を作りながら周囲を飛び回ります。……よーし、そろそろ大丈夫ですね。反撃と行きましょうか。
大きく上空に飛び上がってから、
「血属性魔法 閃血・エレクトリックハンマー!!」
今使える最高火力の魔法を発動させました。
当たれば確実に倒しきれるという確信を持って放ったこの魔法ですが、
「グルッ!」
一声吼えるとドラゴンは器用に旋回して赤雷を束ねて作られた大槌を避けました。
「グググ……。……今のを食らってたらさすがの我もまずかったな。」
いや、当たってくださいよ。さっきの魔法はまったく避けるそぶりを見せてなかったじゃないですか。




