一体どういうことですか、ギルマス?
ギルマスがゆっくり振り返ってきて、私の顔を見つめました。驚いてくれますかね?私がきましたよー。
……あれ?何となく驚かせようと思って背中から声をかけましたが、行けませんでしたかね?なんか思っていた反応と違うんですが……。めちゃくちゃ私の顔を凝視しているんですが。なんか私の顔に付いてますかね?
「もしかしてルナ、か……?」
「え?そうですけど?どうしたんですか?私の顔になんかついてますかね?」
「いや、そういうわけじゃない。そういうわけじゃないが、そんなに髪長かったか?それに瞳の色も真っ赤だぞ。そして極めつけに背中に翼が生えているんだが……?」
うん?そうなんですか?私的にはまったく違和感がないので翼以外は気づきませんでした。でも視力が異常によくなったのももしかしたらそのおかげかもしれませんね。よくわかりませんが。
「まあ、今はいいじゃないですか。それで私がすることって何かありますか?なければ帰りますが。」
「まあそうだな。……では、ソフィアを助けてきてくれ。あそこに氷山が見えるだろう?あそこの中にソフィアはいるはずだ。」
……え?今なんと言いました?ソフィアさんがそんな危険なところにいる?というか、そもそもどういうことですか?
「言っていなかったがソフィアは本部ギルドのサブマスターだ。魔都のギルドでは私の次に強い。だから危険だが重要な場所に行かせた。」
……ちょっと待ってください、頭が理解を拒否しています。もし、そんな状態ではソフィアさんはもう死んでしまっているのではないですか?助けるというのは遺体を回収して来いということでしょうか?
それはあんまりではないでしょうか……?ギルドで私が唯一話している相手がソフィアさんだったんですよ?一月にも満たない付き合いですが、それでも好きだったんですよ?
「……ソフィアも覚悟はできていたはずだ。だから、頼むぞ。私は少しだけ休んだらまたすぐに魔物と戦わなければならない。」
ギルマスの感情を押し殺したような声が私の耳を通過しました。ここでギルマスにつかみかかっても意味がありません。
まずは、ソフィアさんを助けに行かなくては。……前世も通じて、初めてできた一緒に話していても楽しかった人を助けに行かないと。
そして、ソフィアさんをこんな目に会わせて、私からそんなかけがえのない人を奪ったボスモンスターとやらに目にもの見せてあげましょう……!
背後から魔法のものではない強い風を感じて振り返ると、そこにはもう吸血鬼の少女の姿がなくなっていた。
正直私はあそこにルナを向かわせるつもりはなかった。でもそれが約束だった。一番危険なところに向かわせろと。
彼女は紅い月に魅せられて覚醒する。そしてあの人が言っているのが正しいのであれば、彼女はきっと……。
……彼女の心配をする必要はないだろう。彼女はこの紅い月の下では死ぬことはない。だから決して彼女は負けない。勝てなくても負けることはない。
そして直にスタンピードも終わる。ファイナルフェーズには新しい魔物が出てこないからな。あと長くても30分くらいで魔物を狩りつくせる。
視界には半壊状態の石造りの城門が見える。そしてその先にはもう動かなくなった冒険者たちの姿も。その数は5年前よりも倍近く多い。怪我人の数も同じく。CランクだけでなくBランクもそれなりに倒れている。……そして、大きな戦力も失ってしまった。
……魔王様、これでよかったでしょうか?
翼を震わせ私は空を駆けています。もしかしたらソフィアさんが生きているのではないかという一縷の望みをかけて全速力で。顔を打つ風が次第に強くなっていき目を開いていられないくらいです。
1分しない内に私は氷山の上空に着きました。その氷山の中には一目見ただけでその存在が分かる巨大なドラゴンが確認できます。そしてその近くに小さな人影が……。
「……見つけました。」
――風属性魔法 サイクロン――
手のひらサイズの竜巻を右手に作り出し、氷山めがけて急降下します。そしてぶつかる直前に、思いっきり右手を突き出しました。
私の右手がぶつかった瞬間、そこを起点に周囲にヒビが広がりました。そして私の手を渦巻くサイクロンがガリガリと氷山を削っていきます。
「はあぁぁぁぁっ!!」
途切れそうになる魔法を無理やり引き伸ばします。これまでは魔法を長時間発動させ続けるということがなかったので、初めてやることになりますが今ならいけます。なぜか今は絶好調なんですから。
「砕、けなさいっ!!」
魔法の威力を上げながら私は氷山を崩していきます。そしてソフィアさんの姿が近くなってきました。
……あと……少し……。
……見えたっ!!
「ソフィアさんっ!!大丈夫ですかっ!?」




